幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「それは、アキラさんとの対決は、あなたの求める道へは続いていなかったということでしょうか?」
見る間に落ち込んでいくラリスキャニアに向かい、天使(レオ)触手はあくまで冷静に言葉を投げかける。
そうすることが、彼の役者としての役割なのだろう。
主人に語りかけ、更なる言葉を、想いを引き出すことこそが。
「そうだ。ボクはアイドルとして自分を確立させるために【シナモリアキラ】に挑んだが、アイツはそもそもアイドルじゃなかった。アイツは…どこか遠い、スケールの大きい…神話の世界の住人だったんだ。
ボクは、【英雄】でも【神】でも【紀人】でもない…どれだけ努力しても、単なる【夜の民】でしかないんだ…」
「それはそれで良い。ただの【人】が、【紀人】と戦ったってなんの問題もない」
「何?」
苦悩するラリスキャニアに声をかけたのは、先程まで壁にぶつかってうめいていた【シナモリアキラ】だった。
その左手も本体に『口』を合わせて賛同する。
「アキラ様のおっしゃる通りです。私は貴方の苦悩を肯定しますよ。神話にはただのヒトも多く登場します。
主役と脇役、強者と敗者、その関係は流動的なもの。
ヒトはそうそう【神】や【紀人】にはなれません。
ですが、そうしたモノたちにとってヒトとの関わりは不可欠なものなのです。
【神】に弄ばれ操られるのがヒトですが、同時に、神を魅了し自らの物語に引きずり込むのも、またただのヒトなのですよ」
「それに、ただのヒトに殺された【英雄】や、ヒトが原因の争いや計略で不運に陥った【神】の話も多い…らしいぜ!」
悪魔(アキラ)触手が、何かを検索するそぶりを見せながら付け加えた。
もっとも、このマイルームはいま外部ネットワークとの接続を切られているので、そのそぶりは何の意味もなかったが。
「それに、お前が無力でも、それならそれで俺という【紀人】に力を借りればそれで良いじゃ…ぶげらぁ!」
さらに調子に乗って、ドヤ顔で自己アピールをしようとした悪魔触手だったが、そのアピールは唐突に中断された。
ラリスキャニアが、悪魔触手をはたき落としたのだ。
「誰が宿敵(ライバル)の名声を高めるもんか。それにそれは、【シナモリアキラ】が優越性を示すだけじゃないか!ボクがボクの力で勝たないとダメだってさっき言ったろ!」
「ぐうう・・・」
またしても壁に激突した悪魔触手を見下ろしながら、ラリスキャニアは語気強く語った。
悪魔(アキラ)を叩き落としたその手は、異常に肥大化し団扇のように大きくなっていた。
ロウソクが照らし出した『手の影』と影を同一視して巨大化させ、そこへさらに過重の【邪視】を乗せて強化した結果である。
ラリスキャニアは、この”芸”を『歌姫Spear』の調査をしていた時に、そのファンから学び取った。
技術の細部は異なるが、まあ結果が同じなら特に問題はない。
彼女は、手を元に戻しつつ、床で目を回している悪魔触手に向けて静かにつぶやいた。
「ボクはボクの基盤を定められない…しょせんは他人に引きずられる影でしかない。こんなんじゃ、ボクはどうやってボク自身を愛すれば良いんだ?ボクの居場所は?ボクはどこにボクを求めれば良い?」
「貴方には、このアイドル迷宮があるじゃないですか!」
ここで、殴られた悪魔触手が、”彼”自身の左手に介抱(なでなで)されているのを見届けていた天使(レオ)触手が言い返す。
「なにもこんな八つ当たりをしなくても、貴方はここで立派なアイドルとして愛されています!」
「それでは…それだけではダメなんだ!」
だが、ラリスキャニアは引き下がらない
「勝たなければ…人気を勝ち取ることが出来なければ、アイドルは死んでいるのと変わらない!たとえ再生者となっても、永遠に生きることが出来たとしてもダメなんだ!飽きられれば、それは死を上回る消滅に等しいんだよ!」
あなたは…死の重さを、悲しみを本当に知っているのですか?」
けれど、彼女の苦悩の言葉に返されたのは、あまりにも厳しい疑問であった。