幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第102話(83の途中まで)

彼女の左手には先程の呪符があった。

では、右手には何があるのか?

 

そこには、その手には古びたマイクスタンド が握られている。

縛られていたときも床を転がっていたときも、地下アイドルがけっして手放さなかったその『杖』が。

 

もちろん、それはただのがらくたではない。

握り手を少し捻(ひね)れば、途端に仕掛けが顔を出す。

 

まるで、チョコレートバーの包み紙のように迷彩と呪力遮断の中級呪符が外れると、中から現れるのは、マイクと呼ぶにはあまりに大き過ぎるヘッドパーツ。

 

どう見ても凶器にしか見えないその武骨さの通り、それは間違いなく凶器ーー武器であった。

 

しかもその形態は、現在ゼオーティアで一、ニを争う著名な代物だ。

 

その正体は、次の変形で判明した。

 

大きなヘッドーーいやもう断言してしまおう。

『槌矛(英雄アズーリアモデル・再現カスタマイズ済み』 の先端が花のように開き、幾本もの光条が伸びる!

 

そしてそれは、迷い無く吸血樹へと襲い掛かったのだ!

 

その奇襲があまりに予想外だったからだろうか、古き女神の対応は、やや遅れてしまった。

 

とっさに打ち払ったまでは良かったが、それはあくまで反射的な防御、経験と修練がもたらした無意識的な反射行動に過ぎなかった。

 

だから、気づいたときには、もう遅く。

 

「こ、これはあの時の…!?」

 

そう、それは紛(まぎ)れもなく、かの英雄の著名な武器。

つまりこれは、あの有名な戦いを再現、いや『再演』している状況ということでーー

 

すなわち、次の瞬間に再度伸びた新たなる光の帯によって、元女神は、見事に縛り上げられてしまったのだった!

 

立場逆転!

それはまるで、先程までの状況を逆さまにしたような立ち位置(ポジション)交換であった……

 

 

 

 

 

 

そのタイミングで、『現実』と『夢』、二つの世界に存在する二人のラリスキャニアは、同時に手に持ったモノを差し出した。

 

それは、単なる紙の束。

しかし、彼女にとっては世界の何にも代えがたい品物であった。

 

出した紙の内容だけは、それぞれ異なる。

 

『現実』で差し出した紙は、本の形に綴(と)じられていた。

 

ラリスキャニアが第五階層の『創造』能力で作り出したその“台本”からは光が放たれ、それはすぐに像を結び、どこか見覚えのある情景を描き出す。

 

一方、『夢』ではまた違う。

手に現れたのは、ただ一枚の紙。

それは何故(なぜ)か、学園生活を懐(なつ)かしむ言葉や、感謝のメッセージと共に目の前の魔女に差し出される。

 

更に、無数の分身たちがその背後で泣きじゃくり、けれどそれでも一心にこちらを見つめてその動向を窺(うかが)ってくる。

 

ラクルラールは戸惑ったが、生徒を前に迷いを見せるわけにはいかない。

彼女は、厳格なスパルタ教師。

 

よって、謎の既視感や誤作動であるに違いない『虫の知らせ』などは捻(ね)じ伏せて、迷いなくその紙切れを受け取るしかないのだ。

 

が、それでも次の瞬間、女教師は激怒した。

 

その紙には、悪口雑言、卑猥(ヒワイ)な冗談などが書かれていたのか?

 

いや、違う。

 

それともそれは新手の攻撃呪術、呪符の類(たぐ)いであったのか?

 

それは正解であり同時に間違いでもある。

 

つまるところそれは、その紙切れはーー

 

「『卒業証書』だと!

馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

 

そう、それはそんな特殊な書類だった。

別れを告げる手紙、技能の修了と勉学の達成を告げる証明書。

 

更に今回は、そこに更なる文脈(じゅりょく)が加わる。

 

その、呪術的な書類は、通常とは逆に生徒から教師へ、しかもアイドル技能の達人へと手渡されたのだ。

 

それがどれほど相手を馬鹿にしたメッセージなのか、その侮辱の度合いは、一般的には伝わりにくいかもしれない。

 

それを認識出来るのは、アイドル教育に詳(くわ)しい者だけであろう。

 

そう、そんなレアな人材は、例(たと)えばここにいるアイドル教育の専門家、ラクルラールのような者しか居ないのかもしれない。

 

…だから、それだけで十分だった。

 

今、怒り心頭に発した女教師が、思わず力任せに手渡された紙を叩き返した、その理由も…これで十分、納得がつくことであろう。

 

その激怒、その反射的な行動には、そうせざるを得ないだけの確かな『文脈』があったのだ。

 

それゆえに、

 

「はい、確かに受け取りました。

今日を限りで、ボクは先生の支配から『卒業』させていただきますね」

 

と、地下アイドルの計略は、見事に成立してしまったのだ。

こうなれば、もはや

 

「くっ!

図(はか)ったな!」

 

と、後でいくら怒っても、もはや後の祭りである。

 

教師からの『卒業証書』の授与。

これ以上に確実な『教育』支配からの離脱方法は、存在しない。

 

とは言え、この程度の挫折で諦(あきら)めるようなラクルラールではない。

この女教師は、仮にも世界の半分でその名を轟かせた実力者なのだ。

多少の苦境で諦めるはずがない。

 

「ならば、これはどうだ!」

 

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