幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第103話(83~84の途中まで)

そして再び、彼女の周囲に無数の広告が展開される。

 

二番煎じ、と侮(あなど)るなかれ。

 

確立された手法、定型(テンプレ)として広く承認された形式の利用こそが、『杖』の真骨頂なのだから。

 

それに、恋愛物語で頻出(ひんしゅつ)する幼なじみや三角関係を例に挙げるまでもなくーー定型の使いこなしこそが、『呪文』攻撃の基本でもある。

 

基本こそが王道。

 

それは、多くの試行、無数の経験ワザをもって蓄積されたデータによって、その成功を保証された手法。

 

言い換えれば、最も勝利が確信されているやり方なのだ。

 

所詮、奇策やいたずらな新規性の追求などは、王道で勝てない者の敗(やぶ)れ被(かぶ)れな悪あがきに過ぎない。

 

一見、目新しく見えた奇策の正体にしても、大抵は王道に駆逐されてきた過去の遺物でしかない。

 

それらは、あまりにつまらないうえに凡庸な手法でしかなかったため、誰もがその存在を忘れ去っていた、それの話に過ぎないのだ。

 

だから今、女教師が放つのは王道の業(ワザ)以外には有り得ない。

 

ほんの少し前、地下アイドルを完全に操った実績ある広告呪術が、再び彼女に迫る!

 

「さあ、大人しく私に従うが良い。

『ラクルラールゼミに入れば何もかも大丈夫!』

人生に勝つのは、戦法(メソッド)、組織構築(システム・メーキング)が優れている方に決まっている。

『妄想(ユメ)を捨て、現実に目覚めろ!』

正しい選択をして、己が手で勝利を掴むのだ。」

 

ーーだがしかし、ラリスキャニアはそれを一蹴(いっしゅう)した。

 

文字通り蹴(け)られた動画画面が、砕ける特殊演出(エフェクト)を伴って消えていく。

 

そして、曰く。

 

「それはとっくに対処済みです」

 

「何故だ!

何故、この短時間で私の教育呪術に対応出来るはずがない!」

 

憤(いきどお)る女教師に対し、彼女の元生徒は、冷静にその疑問に答えた。

 

「タネは簡単。

元々、貴女の呪術は弱まっていたのです。

ほら、こんなふうに」

 

そう言って地下アイドルは、左手を軽く上げた。

 

そこに現れた端末は、新たな動画窓を映し出し、その場に新しい事実を示す。

 

ラリスキャニアの成長によって、可能となった情報の採り入れ。

それは、『現実』側とリンクしていた。

 

【夢遊歩行】(ドリームウォーク)の呪術は、『朱』の色号の高等技法。

極めれば、自己の周囲を『夢』と『現実』の好きな方に自在に切り替える【浄界】を習得出来るというが…もちろん、今の地下アイドルにそんなことは不可能だ。

 

それにそもそも、この戦いでは、そこまでの練度は必要無い。

 

必要なのは、ただの端末の外部接続(オンライン)化。

ネットにさえ繋げることが出来れば、それで良かったのだ。

 

それが物理(フィジカル)でも精神(アストラル)でもどちらでも良い。

 

外部と繋がった端末は、容赦なく冷酷な真実を映し出してくれるだろう。

 

それが、ラリスキャニアの期待であったし、それはまさに、その通りになったのだ。

 

そしてそこに映し出されたのは…一言で言って、物笑いの種になるような映像だった。

 

ただ、最初に出てきた(サジェストされた)ときには、単に見慣れたCMに過ぎない…そう見えていた。

 

それは、美しい校舎や最新の『杖』呪具に囲まれて、朗々と宣伝文句を語る女教師の姿。

 

ごく当たり前で、洗練された広告の見本のような内容だった。

 

けれどそれには、すぐに大きな変化が起きる。

まずは、ヒゲだ。

 

突然、念写動画のラクルラールに、ヒゲが生えたのだ。

 

まるで、劣等生が教科書にする落書きのように。

それは、実に見事なヒゲであった。

 

もちろん、それだけで終わるわけがない。

 

そのまま落書きは続き、それはすぐに、眼を覆わんばかりの惨状へと移行していく。

 

更にそこへ追撃を加える者たちもいる。

 

まず、専門家気取りが、客観的に見て取れる事実のみならず、多分な思い込みに基(もと)づいて女教師の教育論を否定。

 

そこへ、父母、元生徒、教育関係者を自称する者たちが多数参戦する。

それは何も、竜帝によってその職名を保証された者ばかりではない。

 

むしろ、素性がよく分からない、何故こんな話題に参加しているのかすら、よく分からない者たちばかりが突然、集まってきたのだ。

 

なんとかクリエイターだの、なんとか評論家だの…そんな有象無象が、寄ってたかってラクルラールを非難する。

 

しかも、それだけではない。

 

きちんとした権威を持つ者、地位や公認された称号を持つ者たちも、また別のやり方で女教師を攻撃していた。

 

その中には、口々にラクルラールを褒(ほ)め称(たた)えていた者たちもいたはずなのだが…そんな彼らでさえ、実はとっくの昔に彼女を見捨てていたのだ。

 

ある者は、決して具体的な名称を挙げないほのめかしを【犬笛】にして、信奉者(ファン)や大衆を【煽動】していた。

 

つまり、自らに決して累が及ばないような形で攻撃に走ることで、ラクルラールとの『縁』…関係性を断っていたのだ。

またある者は、せっせと妖精による過去改変を行って、これまでの発言記録や動画内容を再編集し、そこから女教師の痕跡を消し去っていた。

 

酷い者になると、ラクルラールが関与していた事業の功績を、ちゃっかり自分のものにしていたりもする。

 

女教師の“味方”を名乗る者もいないでは無かったが…彼らは彼らで、また別の意味で彼女の敵だった。

 

それは敵対勢力の『工作員』だったためなのか、それとも単に、自覚がないほど無能なだけだったのか……

 

彼らは、逆にラクルラールの足を引っ張っていた。

 

 

 

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