幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第104話(84~85の途中まで)

失言やスキャンダル、過去の犯罪の発覚……

 

自称『支援者』たちが悪目立ちすればするほど、かえって彼らが擁護するラクルラールの名声も、急速に下落していったのだ。

 

数多(あまた)のコメントは、動画の上を流れ、あるいはその周囲を蠢(うごめ)き、さんざんに攻撃を加えていった。

 

それはまるで、砂糖菓子に群がる蟻のような有様であったのだ。

 

そう、今やラクルラールは、まごうことなき炎上状態にあった。

 

その理由は明白、先(せん)だっての第五階層における暴挙、そして敗北である。

 

実質的には、後者の要因の方が大きい。

 

勝っていれば、殺し、奪い、勝ち取ってさえいたならば…どれだけの暴挙であっても許容されていたはずだ。

 

『地上』の価値観であれば、それで良かったのだ。

 

だが、そうはならなかった。

栄光の座からの転落は、一瞬だった。

 

女教師は、見事に敗北し、それは世界中に喧伝(けんでん)されたのだ。

 

端的に言えば、学園都市崩壊の一件で彼女の教育から解放された第五階層の住民たちが、こぞってラクルラールの名声を攻撃したのだ。

 

それこそが、二重の意味での彼女の失敗であった。

中でも、セリアック・ニア王女やクロウサー社の要人たちの影響力は大きかった。

 

文字通り莫大(ばくだい)な数の信奉者や利害関係者を持つ彼女たちを敵に回したことで、ラクルラール教育産業は、一夜にしてあっさりと踏み潰されてしまったのである。

 

それは、女教師の広告の効果が地に落ちるのに、十分過ぎるほどの理由であったのだ。

 

ネット上で改変され、失笑を誘うミームとして流通し、普及するラクルラールCMは、その典型例であった。

 

TVの時代の終わり、大手広告代理店や吟遊詩人の影響力の減少。

 

それは、『杖』に限らずあらゆる呪術テクノロジーが大衆に普及し、その発言力や発信力が増した『大衆の時代』…まさにそれを、象徴するかのような情景であったのだ。

 

全てを確認した女教師の唇が、静かに動く。

 

「お前も私の広告を無視するのだな?」

 

「実を言うと、学生時代からあまり気にはしていませんでした。

なにしろ、他のアイドルのパフォーマンスを観察する方が。ずっと大事でしたので。

それにーー」

 

続きを言おうとして、少し口ごもる。

 

いくら敵対している間柄とは言え、恩師でもあるのは確かなのだ。

言いにくいことの一つや二つはある。

 

だが……

 

「それに、なんだ!

何が言いたい!」

 

だが、ラクルラールは、熱烈な勢いで食い下がってきた。

 

仕方ない。

こうなれば、しっかり話すしかないだろう。

 

なので、思い切って語り出す。

 

「それに、『現場』を知っている今のボクからすると、あまりにつまらなかったので」

 

「つまらない…だと」

 

「そうです」

 

地下アイドルは、なるべく誠実に聞こえるよう、説明に力を入れる。

 

「先生の理論(セオリー)は、確かに整っています。

そこには、紙に書き写せる全てがあると言って良い」

 

「ならなんだ!

私の教えに一体何が欠けているというのだ!

『現場』とか言う“アマチュア集会場”に、何がある!」

 

響き渡るは、どこか悲鳴のような叫び。

 

それに対し、『現場』の経験者は静かに答えた。

 

「『行間』が、そしてファンのみんながいます。

生きて動いて、輝いている『人間』(ロマンカインド)が、それに何よりーー」

 

「何だ!」

 

その叫びに応え、地下アイドルは、言い切った。

 

「アイドルが、いるのです。

ボクらは、ファンが居てくれるからアイドルになれる。

どんなに素晴らしい教科書にも、どれだけ高度なアプリにも、今、生きているファンは載っていません。

それは、『現場』に出て獲得しなければ、決して手に入らないものなのです」

 

それを聞いた女教師は……沈黙した。

 

俯(うつむ)いているため、その表情を外部から窺(うかが)い知ることは出来ない。

 

それゆえ気まずくなったラリスキャニアは小声で、

 

「…まあ、『彼女』のアプリだけは違うかもしれませんね。

あのアプリの紀人…シナモリアキラは、どう見ても機械女王のファンですし」

 

と、付け加えたが、それに対しても全く反応が無い。

…いや、付け足した瞬間、少しだけその口元が歪んだような?

 

なんにせよ、大きな変化は見られなかった。

と、思いきや……

 

「良いだろう!

貴様の仮説を認めてやろう!」

 

なぜかラクルラールは、唐突に大声を上げた。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

そして、

 

「私の卒業試験を、見事クリア出来たらの話だがな!

さあ、条件を提示してみろ!

それだけ偉そうな口を叩くんだ、もうアイディアはあるんだろう?」

 

そう、女教師は意地悪そうに微笑(ほほえ)んだのだ。

 

そういうことになった。

 

それゆえに、生徒は問いかけた。

 

「では、先生には三つほどお聞きしたいことがあります」

 

不思議なことに、それらの言葉は、案外さらりと口の外に出た。

 

それほどの気負いも無く、力(りき)りきみも無く。

特別な後押しもなく、パワーアップアイテムもなく。

 

もちろん、新しい組織やコミュニティからの支援のおかげでもない。

 

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