幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第109話(88~89の途中まで)

そして、地下アイドルが端末を使ってすることと言えば、ネット配信と相場が決まっている。

 

ラリスキャニアと女教師の対決は、新しい“ラクルラールの炎上”コンテンツの一つと見なされ、瞬(またた)く間に視聴者に群がられていった。

 

そして、新しい『始祖吸血鬼』によるラクルラール打倒の試みは、そうした無責任な大衆たちの“その方が面白い”という刹那(せつな)的で享楽的な観点からあっさりと肯定され、圧倒的な承認を勝ち得ていったのだ。

 

これには、流石の女教師もたまらず抗議の声を上げる。

 

「自ら恥部を全世界に流すとは、大した自信だな!

『夜の民』の性質に詳しい者ばかりでもあるまいに。

自分の触手分身と戦う生配信など、公開自慰も同然だぞ!」

 

「練習風景の配信は、アイドルにとって基本ですよ、先生」

 

「フン、我が学院の最新設備を用いた最高教育の広報(PV)と駄素人の手抜きコンテンツを一緒にするとはな!

どうやら私は価値の序列というものをお前に叩き込み損ねたらしい。

いやはや確かにそれは汚点だすぐに修正しなくてはな!」

 

そこで、ラリスキャニアは触手回転を続けながらも、大きな溜息をついた。

 

「なるほど、貴女がなぜ瓦楽天(がらくてん)コズエ、いや機械女王に負けたのか、その敗因が分かった気がします

先生は、大事なものを見失ってしまったのですね」

 

「なんだと!

貴様に何が分かる!」

 

そこで、地下アイドルは、激昂(げっこう)する女教師に、静かに切り返した。

 

「それはつまり、こういうことですよ…」

 

そして彼女は、限界まで伸ばした触手を次々と、影人形たちに繋げ始めた。

 

すると、どうだろうか。

 

なんと、影人形たちは、あたかもラリスキャニアの新しい手足のように、彼女を模倣しその延長となって動き出したのだ!

 

更に、それは一度では終わらない。

影人形が伸ばした触手が、また新たなる影人形を捕まえ、触手のつながりは、次々と連鎖を続けていく!

 

地下アイドルは、己が呪力のつながりによって、敵をも味方に取り込み、一つの陣形に組み込んでいった。

 

これぞ、異世界渡りと伝えられる、かの有名な『使い魔』系の伝統呪術【将棋化】である!

 

だが、ラクルラールはそれを鼻で笑う。

 

「なんだその『お遊戯』は?

列の端が崩れているではないか!」

 

その通り。

もちろん、この連鎖は完全ではない。

 

中央のラリスキャニア本体と、その周囲で踊るドルオタ軍団には、圧倒的な練度の差があるからだ。

 

しかもこれは、急造の連携である。

そんな集団行動が、完璧になるはずもない。

 

だが……

 

「申し上げたはずですよ!

そんな教科書(テクスト)的なことは、どうでもいいと!」

 

そして、実際にそうだった。

 

「うぉっなんだ!この不快な生物は!

『支配者』(ルーラー)は何をやっている!?

コイツら、完全に暴走していないか!?」

 

そう、それでも確かに効果はあったのだ。

行動妨害、嫌がらせという意味では、彼女たちは十分に役立っていたのだから。

 

特に、効果的だったのが、虎のように吠える豚という奇妙な連中(イェッタイガー)である。

 

その奇怪かつ攻撃的なまでに激しい動きは、全体の調和などお構いなしに暴(あば)れまくる。

 

 

もちろん…その動きが制御されているわけがない。

 

それはなぜか。

その理由を、彼らの信仰対象であるはずの地下アイドルは、軽い口調で語った。

 

「それはそうですよ、だって制御なんてあんまりしてませんからね!

最低限の禁則と出禁だけです!」

 

流石に、そのあんまりな台詞(セリフ)には、また即座に反論が飛ぶ。

 

「あり得ん!制御出来ない暴走集団を自軍に組み込むなど!

そんな奴ら、所詮は、自己顕示欲だけの動物ではないか!」

 

だが、元生徒は物怖ものお)じせず、それに切り返す。

 

「かつての『動物想』(ファウナ)のように、ファンが動物化するのは『アイドル迷宮』では珍しくありませんよ、先生!

完全に野生化させなければいいだけの話です!」

 

「そんな支配があってたまるか!ただの暴徒集団にこの私が負けるわけが…!」

 

だが、女教師の軍団は、現に押し負けている。

 

そこへすかさず、地下アイドルはダメ押しのMC(トーク)を重ねた!

 

「闇は光によってかき消されるもの!

かの英雄の迷宮小説に記載がありました。

ボクら『夜の民』にも、唯一、光を操れる呪術があることを!」

 

「この手さばき、いや触手さばき!

まさか…!」

 

心当たりがあったラクルラールの顔がひきつる。

 

旋回する暗黒の渦、それを形成する今のラリスキャニアの手は、もはやただの触手ではない。

 

それは、ミヒトネッセの回転に加え、それと同等以上の実力を誇る『アイドル迷宮』の現在の第二位、女装王子ことクレイをも模倣した手刀なのだ。

 

もちろん、その真の威力たる神秘は、ただの地下アイドルに再演しきれるものではない。

ないのだが……

 

「有り得ん!

私の糸が!支配がただの猿真似に断ち切られるとは!」

 

それでも、模倣は類似である。

 

類感呪術的な効果の延長か、どこぞの超越者の気まぐれなのか。

 

そして果たして渦の中に、回転するコマに浮かぶ絵柄のように、ウインクする中性的な美人が浮かび上がって見えたのは、ただの錯覚だったのか。

 

なんにせよ、ラリスキャニアの手刀は女教師の配下への支配を断ち切り、多くの敵を味方に変えることに成功したのだ!

 

そして、それによって次なる業(ワザ)は完成する…!

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