幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
静謐に、決して語気を荒げることなく、天使触手は問う。
「ラリスキャニアさんは、アイドルとして転生して産まれてきて、以前の記憶は持たないとそうおっしゃいました。それでは、あなたには”死の記憶”はあるのですか?」
「それは…」
そんなものは、無かった。
ラリスキャニアにあるのは、あくまで今の”人生”の記憶。
アイドル迷宮で、地下アイドルとして生を受けて以後の記憶でしかない。
あの狩人の悪夢も、もしかしたらラリスキャニアの過去の一部なのかもしれないが、それでもそれには確たる過去の保証などない。
そして何より。
「いま、貴方は確かに生きています」
「…!」
「何度死ぬ夢を見ても、同じ場面を繰り返しても、貴方はそこを”生き抜いて”その先の場面を見ることが出来ている。僕と言葉を交わして、怖がって、運命を相手にあがいているじゃないですか」
「だが、そんなものは…」
天使(レオ)触手は、猫耳をピンと立てると、しっかりとラリスキャニアを見つめて言葉を続ける。
「いいえ、何度でも言います。貴方は悪夢に打ち勝ち、しっかりと今ここでアイドルをやっているのです。どれだけ人気が落ちても、その事実は変わりません。
貴方は、これまでしっかりとやってきたし、これからだって幾らでもアイドルをやっていけるはずです!」
「厳しいな、貴方は…」
ラリスキャニアの力の無い言葉に、猫耳触手は、にこりと可愛らしく微笑みながら答えた。
「貴方自身である僕は、貴方を赦します。その代わり、一つだけお願いして良いですか?」
「お願いって?」
ラリスキャニアは首をかしげる。
この触手は、自分自身だと言うのに行動が読めない。
人間(ロマンカインド)の観察と分析には自信があるラリスキャニアであったが、この触手を前にすると、まるで、自作のキャラクターに振り回される作家のような気分になる。
「はい。僕を赦して下さい。”貴方を赦そうとする傲慢な僕”を」
「だって僕は貴方なのですから。『自分で自分を愛することが出来ない』というのが問題なら『自分で自分を愛せる』ように努めれば良いのです。自分を認めて、罰して、そしてきちんと赦しましょう」
「自分を赦す、か」
「そうです。そうすれば、罪を精算すれば貴方はまた歩きだすことが出来る。
自分を受け入れて、愛することが出来るはず。それに、罰にだって、愛は必要です」
「罰に…愛が?」
「はい。罪に足りない罰も逆に過剰過ぎる罰も、どちらもきちんと相手を見ていない行為でしょう?しっかりと丁度いい罰を与えるには、しっかりと相手を見据えて認めてあげることが何より必要なんです」
「それが自分であっても?」
「それが”自分だからこそ”です」
ラリスキャニアの問いかけに、天使(レオ)触手は腰に手を当ててきっぱりと答えた。
小柄な身体で胸を張るその姿勢は、確かな生命力と信念を感じさせる。
天使は語り続ける。
ラリスキャニアの採るべき道について。