幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「三回転!
これがみんなの応援の輝き!
木漏れ日クラップ・プラネタリウム!」
拡大を続け、巨大化した影の大樹。
その枝は、常に揺らめき、光の当たり方を変える。
そして、多くの文化圏で、影という語は光をも同時に意味している。
飛び交う鳥の影が、太陽を遮り落差で一瞬の閃光をもたらすように、影は光を生み出す媒介とも成り得るのだ。
影の樹木は、無数の触手で拍手しながら回転し、手の先に光を宿すことで影人形軍団の突撃を防ぎながら、快調に進撃を続けていった。
それはまさに、『地下』(アンダーグラウンド)の体現。
ずっと不安に駆られていた地下アイドルは、今、実家のような安心感を得ていた。
彼女が求め続けていた地下アイドルの出資者(スポンサー)も、頼るべき仲間も…みんなみんな、そこにいたからだ。
『青い鳥』(ラリスキャニア)の帰るべき居場所は、最初からずっと、彼女の足の下にあったのだ。
それを言い換えれば、確実な優勢である。
その勢力図の変化を背景に、地下アイドルは大いに語る。
「鏡の否定は、拒絶ではなく乗り越えるべき批判!
それを乗り越え、先に進んでこそ真のアイドルです!
己自身がファンとなり、常にプロデュースして高みを目指し続ける!
既存例(かこ)の積み重ねでしかないテキスト頼りの貴女とは違います!」
これで、勝負は完全に決まったかのように見えた。
だが……
「“貴女とは違うんです!”か。
フン!
ものは言いようだなぁ!
随分とお手軽な『個性の確立』だ!
適当な『悪役』を見つけ、それに自己の否定的な欠点を押し付けて『切断処理』するとは!
あきれた安易さだよ。
そして、最も普遍的(ゼオーティア)なやり方であるとも言える。
そんなモノが本当に『個性』と言えるのか?
それがお前の選択なのだな?
アイドル!
だが、そのコンセプトも魅力も、所詮は人の手によって作られた人工的なものだ。
その参照元たる『猫の国』にあってさえそれは変わらない!
異世界を参照元とするには、時系列が合わない?
なんと愚かな判断だ!
この『邪視』に支配された世界に、そんな『杖』的な道理が通用するわけがあるまい!
この世界にアイドルが取り込まれたのは、信仰を力とする神々にとって、都合が良い仕組み(システム)だったからに過ぎないのだ。
お前は知っているか?
地上の大半を占める『鉄願の民』が、それにも関わらず、なぜ序列第九位という地位に甘んじているか!」
唐突な質問。
地下アイドルは、女教師がこの期に及んで『呪文』に頼ってきたことに意表を突かれ、動揺してしまう。
とりあえず、とっさに返答するが……
「それは…物質的な性質が強くて、『杖』以外の呪術が苦手だから…?」
「その通り!正解だ!」
「なっ!?」
決め手となるはずの相手側の最終質問が、あっさりと回答できてしまったことに、かえって動揺してしまう。
このパターンは…想定していた後者に近い。
だが、まさかあえて正答させたうえで、更に追撃を重ねてくるとは!?
無意識のうちに、質問の処理を戦闘の終結と重ねてしまっていたラリスキャニアは、予想外の事態に混乱を隠せない。
そしてもちろん、その隙を百戦錬磨の半神が逃すはずもない。
「槍神教など多くの宗教において、物質とは精神に従属するものだとされている。
卑俗で汚穢(おわい)である土に、神が息吹を吹き込んで人に魂を与えたとする神話があるように、欲望
人は貴(とうと)い教えによって善導され、『善』と『精神』の根源たる神に近づかねばならない!
大地の分身である『紀竜』を信仰する竜神信教とは、相容れないわけだな。
だが、このラクルラールのスタンスはその真逆!
誰もが憧れる至高の価値を、引きずり下ろしこの手に握る!
地に星を落とし、私と同じ泥にまみれさせる!
それが私のアイドル道だ!
私の生徒が、すなわち私自身の延長(てあし)が、それを成し遂げる!」
強固な信念に支えられた『呪文』が、強大な支配力をもたらす。
それは、もともと完全に制御されていない闇の大樹にとって天敵だった。
「それならボクは、嘘も!矛盾も!全てを飲み干すような強さで貫き通します!
己の輝く道を、アイドル道を貫いて見せますよ!」
ラリスキャニアは、とっさに強い言葉を用いて反撃するが……
「愚か者め!それが出来るのは、『アイドル』概念で『紀』にまで到達出来る『神級』のアイドルだけだ!
たとえ『黄金』級のアイドルとても、そこにはたどり着けぬわぁ!」
「それしかないなら、やってみせる!」
その反撃は、どうにも付け焼き刃でしかない。
そうこうしている間にも、ラクルラールは、両手を大きく広げて近づいて来る。
靴音が響く。
気づけば、闇の大樹は無数の青いものによって囲まれていた。
それは、女教師の髪によって構成された巨大な網(ネット)