幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第111話(90の残り全部)

そう、地下アイドルは、とっくの昔に罠にかけられていたのだ!

 

ただ、その靴音はどこか鈍かった。

それでようやく気づく。

 

本来なら爽快に硬く響き渡るはずの音、それを遮(さえぎ)りくぐもらせる何かがあるのだと。

 

障害物が、あたりに設置されている。

 

いつの間に張り巡(めぐ)らされたのだろうか。

青い網は、そこら中(じゅう)にあった。

 

校庭に、机に、電灯に、窓に、ロッカーに、階段に。

それは全てを覆い、支配する強大なる魔女の影響力。

 

けれど、真に恐るべき変異は、それに留まらなかった。

その時ついに、ラクルラールが本気になったのだ。

 

夜が来た。

いや、あるいは月蝕か。

 

それは一瞬のことだった。

 

そう錯覚させてしまうほどの闇が、あっという間に広がったのだ。

 

それは、山のごとく。

天を衝(つ)くその背は、世界槍に並ばんとする威容。

 

地下アイドルの前に立ちはだかったのは、大きな、あまりにも大きすぎる影であった。

 

巨人だ。

 

ありとあらゆる瓦礫(ガレキ)学校設備、そして用途不明になるまで壊れたがらくたが、青の色によってつながれ、巨大なヒトガタを作っているのだ。

 

そして、一閃。

 

巨人の姿が観測者の脳裏に定着したかどうかという頃合いで、津波のような衝撃が辺(あた)りを横切る。

 

高速で動く巨大な影が、視界全てを薙ぎ払ったのだ。

 

たった一瞬。

それこそ、瞬(まばた)きをする間に全ては始まり、終わっていた。

 

闇が切り替わることで落差によって光が生じ、すぐに立ち昇った土煙が、その強大なる衝撃の威力を保証する。

 

ただ一つの動作、それだけで…世界は見違えるように切り替わっていた。

 

今のは攻撃だった、ときちんと認識出来たのは、とっさに分身によって投げ上げられた、ラリスキャニアただ一人。

 

後に残ったのも、彼女ただ一人だけ。

 

それは、あらゆる比喩によっても言い表すのが難しい、超絶の一撃だった。

 

半神は、天災を自在に引き起こす。

どれだけ弱り、また補正(めいせい)を失っていようと、やはりラクルラールは神域に在る者なのだ。

 

彼女の怒りは、まさに災害そのものであった。

 

果たして、それを生き抜いた…いや、生き残ってしまった地下アイドルは、その孤独な生存に何を思うのか?

 

女教師は、巨人の肩に仁王立ちしながらそれを観る。

腕を組みながら眼下をにらみつけるその姿、まさに異界の闘神の如(ごと)し。

 

続けてニ撃目を放ちもしないで、糸を使いワイヤー登攀(とうはん)の要領で飛び乗っているのは…別に私なら特撮アクション映画なんて、容易に再演することが出来る!という、己が技量の自慢ではない。

 

それは、こうして高みから敵状を視察しつつ、彼我の格差を視覚(ヴィジュアル)的にはっきりと知らしめるためであった。

 

この一事だけでも、元学園長の気位の高さが良く分かる。

 

あるいは、かつて散々見下ろされた記憶があるゆえの、深い劣等感の裏返しなのか。

 

いずれにせよ、ラクルラールは、にやりと顔を歪ませる。

 

計測し、データ化出来る圧倒的な破壊、確かな物量、右肩急上昇の折れ線グラフ、そして高い時価総額。

 

女教師の信ずる力は、常に具体的で、誰も否定することが出来ない『杖』の暴力だ。

 

子象しか縛れない鎖でも決して逃れられない象のように、見えない天井を跳躍の限度に定めるノミのように、それは、心を折り従属させる『調教』の呪力。

 

こうして再び示された、元学園長の実力と権威の前に、あらゆる生徒は跪(ひざまず)き、涙ながらに許しを乞いながら服従を誓う…はずだった。

 

だが、だが肝心の地下アイドルは…ただ一人、それでも優雅に回っていたのだ。

それは、あまりにも悠然とした、何よりも強くしなやかな立ち振る舞い。

 

そして、彼女が語るは、ただ一言。

 

「今のは…あの女神の真似ですか?」

 

「なんだと!」

 

あまりの侮辱に、すかさず返る怒声(どせい)

 

それに対しても、地下アイドルはあくまで余裕の構えを崩さない。

 

「どれだけ貴女が舞台(ステージ)を崩しても、ボクの可愛い子豚ちゃんたちはそう簡単には打ち崩せませんよ。

だってーー」

 

そして、彼女は優雅に片手を振った。

 

すると、どうだろうか。

 

あちらから、そしてまたこちらから。

あちこちの物影から、次々と影人形たちがまるで雨後のキノコのように湧(わ)き出してくるではないか!

 

「ーー地下アイドル(ボク)もそのファンも、この程度の苦難(トラブル)なんて、もうとっくに慣れっこなのですから!」

 

「【影沼】だと!?

わざわざ高度な呪術を用いてまで、木偶(デク)人形どもを助けるとは…なんという呪力の浪費だ!

その程度のファン数から回収出来る呪力で、この私と戦い続けられるつもりなのか?

不健全極まりない会計だな!」

 

「先生、貴女の質問(ターン)はとうの昔に終わったはずですよ!

まあ、どうしてもというならお答えしますが、」

 

そこで、地下アイドルは、見栄を切った。

異界ミーム溢(あふ)れる構えが、場面転換を告げる。

 

それはすなわち、

 

 

 

 

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