幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第115話(93~94の途中まで)

そう語っている途中で、極地の冷気が、さらなる冷却をもって話を遮(さえぎ)った。

 

「だから貴方は、『オリジナル』の尊厳を、自らの視座と我執(エゴ)で塗り潰すというのですか?

貴女の教師である、あれのように。

我欲のためなら、機械的に他者を蹂躙し奪い尽くすことを良しとする。

それが貴方の言う理想(イデアール)?

無限に進撃する目的も内なる法も無い、伽藍堂(がらんどう)な断崖片道列車、暴走する市場への妄信ですか。

それはまた、随分と先生に忠実な生徒(ペット)ですね」

 

その毒を含んだ断定にも、地下アイドルは必死に反論する。

 

「いいえ違います!

それに…」

 

「それになんですか?

貴方の詭弁を裏付ける権威があるとでも?」

 

無いでしょうね、と言いたげな元女王のまなざし。

だがそれに対し、地下アイドルは、なおも堂々と言い放った。

 

「裏付ける権威ならありますよ!

それは、貴女自身です!」

 

「わ、私が?」

 

突然の奇妙な発言に、骸骨人面樹(ディスペータ)は目を白黒させる。

 

「ボクらが再演をするのは、何も自分たちの独自性(オリジナリティ)や人気が足りないからだけではありません!

良い祖先(アンセスター)として『尊敬』(リスペクト)し模倣し、受け継いでより良い新たな時代を創るために!

僕らは栄光の過去(メモリー)を再演(カバー)して詠(うた)うのです!

『六王』の劇のように!

そして、ヒュールサスを含めた七つ王国の伝統を受け継ぎ、改革した貴女のように!」

 

その宣言がもたらしたのは、痛いほどの沈黙だった。

 

現在進行形の配信で、コメントでも流れているのだろうか。

ただ端末から放たれる光だけが、時間の経過を不規則なゆらめきという形で示している。

 

ラリスキャニアの自室は、永遠に続くかのような静謐で満たされた。

 

だが、それもすぐに破られる。

 

「…なるほど、ヒュールサスですか。

私の前でその話をするということが、一体どういうことなのか…貴方は本当にご存知ですか?」

 

低く抑えられた声音。

明らかに、ただ事ではなさそうな問いかけ。

 

「もちろん!

貴女のおっしゃる『悪』も『罪』も、それを定義するのは、結局のところ貴女の『審判』次第なのでしょう?

ねえ、先代女王様。

ボクら地下アイドルだって、貴女の劇の話くらいは知っているんですよ。

貴女が、『罰神ティーアードゥ』の権能を受け継いでいることくらいはね!

そして当然、『解釈』いや空想したことくらいはあるのですよ。

暴走した罰神の権能を受け継いだ貴女は、当然、御自分の未来を想定しているんじゃないか、って」

 

そして、完全に本領を取り戻した“興行主”は、大声で続く台詞(セリフ)を言い切った。

 

「暴走して同じ結末にたどり着かないか、そうしたら、同じように食べられて、その『正義』を正される日が来るって、とっくのとうに分かっておいでなんじゃないかってね!」

 

「……ならば貴女は、私の後を継いで新たな女王になろうというのですか?

本当にその覚悟があるというのですか?」

 

それは、最後通牒だった。

高まる緊張感、とてつもない圧力が場に満ちる。

 

重くのしかかる期待に対し、ラリスキャニアは……

 

「やだなぁ、そんなものあるわけないじゃないですか」

 

なんと、あっさりそれを否定するのであった。

 

「なっ…!

それは一体、どういう意味ですか?」

 

困惑する悪魔の左手(ディスペータ)を前に、ラリスキャニアは朗々と説明を始めた。

 

「政治も戦争も、ボクの仕事じゃありません。

向いてませんし、やりたくない。

そういうのは、もっと向いていてやりたがる人に任せることにしますよ」

 

「では、貴女の挑戦と言うのは…」

 

そこで、地下アイドルは、また大仰な動きを繰り出し、威嚇(いかく)のような構えを取った。

 

「そう、ボクの挑戦はーーあくまで『芸』!

それで以(も)って貴女の世界観に風穴を開けてみせましょう!

今度こそ、最終ラウンドの開幕(はじまり)です!」

 

「…なるほど、話は分かりました。

ですが、もう一度言いましょう。

それは、不可能だと。

その消耗で、これ以上何か出来るのですか?」

 

「……」

 

地下アイドルは口をつぐんだ。

その顔を静かに伝う汗は、未(いま)だに黒いままだ。

その疲弊は隠せない。

 

そんなラリスキャニアを、元女王は相変わらず冷たい目で見下ろしながら、語りかけてくる。

場に満ちる圧力、ひりつくような死の予感が地下アイドルを襲う。

 

おそらく、次に発せられる言葉こそが、彼女の最後通牒となのだろう。

 

「貴方には、失った呪力を補填(ほてん)する術(すべ)はもう無い。

もう一度だけ勧告します。

諦(あきら)めなさい。

勝負を捨てて私の軍門に下るのです。

今ならまだ、間に合いますよ」

 

これまでのように、再生者として復活することは出来ないのだ。

 

それでも、今の第五階層であれば、転生は可能だろう。

だがしかし、それは完全な復活(リカバリー)プランとはなるのだろうか?

 

もし無事に転生出来たところで…敗北によって、名声に致命的なダメージを受けていたら?

 

その場合は、果たしてアイドルとして、再び再起出来るものなのだろうか…?

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