幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第116話(94の途中まで)

けれど、ラリスキャニアはそれでも食い下がる。

その目から、闘争心の暗い炎が消えることはない。

 

彼女は、不退転の体勢を崩さない。

 

「それだけは出来ません。

絶対に諦めず、頂点に挑み続ける。

それがボクの夢、いいえボクと子豚ちゃん(ファン)たちの『理想』(イデアール)であり・・・ボク自身、すなわち【ラリスキャニア】という呪術(アイドル)なのですから!」

 

その言葉にあまりにあきれてしまったのか、元女神は、今度は一転してやさしげに語りかけてきた。

 

「それは、貴女の勘違いではありませんか?

理想というのは、常に何かの引き写し。

だというのに、なぜ夢を目指し続けるのが尊いというのですか?

現実との妥協は、出来ることを絞るのはそんなにダメなことですか?

貴女は、歪んだ教育によって洗脳されているのではありませんか?

知らず知らずのうちに、あれのような、盲目的な上昇のみを是とする経済至上主義(ぽんこつイデオロギー)によって染められているのではありませんか?」

 

悪魔の左手(ディスペータ)は、そう言いながら、やれやれと肩をすくめるように、手の両サイドを揺らした。

その姿からは、圧倒的な余裕が伺(うかが)えた。

だがその余裕も、

 

「それは貴女の方ではありませんか?」

 

ラリスキャニアの批判によって、たちどころに打ち消されることになる。

 

「…なんですって?」

静かな声、しかしそこには大地を根底から揺るがすような、静謐なエネルギーの蓄積が感じられる。

 

誰が見ても分かる。

今の元女神は、底から間欠泉が湧き出した深い沼のように、明らかな怒りを湛(たた)えている。

 

それでも地下アイドルは、冷静に持論を述べ始めた。

 

「貴女は、せっかく『シナモリアキラ』を支配しているのに大事にする様子が全くありません。

その振る舞いは、まるで、古いぬいぐるみや毛布にしがみつくような幼稚さを感じさせます。

カミのことは分かりませんが、ヒトがそんなことをする理由は、そう多くありません。

…それは、実は恐れから来ているのではありませんか?

他にしがみつくものが無いから、頼るものが無く孤独だから…そしてあるいは、それを誰かに奪われたくなかったり、見せつけたいから…」

 

「いったい、何をおっしゃりたいのですか?」

 

地下アイドルを見るまなざしが、更にその鋭さを増す。

 

しかし、ラリスキャニアは、いかなる射撃武器にも勝るその圧力を左手で抑えて、返答する。

 

既に全身から黒い汗はにじみ、目からも黒い涙が出始めてはいたが……さりげなくそれをぬぐうことも忘れない。

 

「『オリジナル』を称揚する貴女も、実は誰かを模倣(コピー)しているのではありませんか?

一見、自由気ままで尊大に見える、その『強者』としての振る舞いも…実はごくありふれた…ヒトとしての当たり前の逃避と代償行動として、学び取った『弱者』の身震(みぶる)いに過ぎないのではないか、とボクは思うのです」

 

「…もっとはっきり言いなさい。

でないと、すぐに『決着』をつけてしまいますよ。

私はもう、待つことには飽きたのです」

 

もはや、元女神の声は極風を通り越し、音となった『死』を感じさせた。

その恐ろしさたるや、聞いているだけでもう既に己が朽(く)ちて骨となり、あるいは灰となったかのような錯覚を覚えるほどだ。

 

「…では、はっきりと言いましょう!」

 

それでも、それに応え、ラリスキャニアは力強く語り出す。

 

その手は、細かく震えていた。

まぎれもなく恐怖を感じているはずなのに、なのに話始めると震えはぴたりと止まる。

 

まるで彼女が、恐怖なんかより、ずっと大事なものがあることを知っているかのように。

 

「貴女は、ボクの先生と、ラクルラールと良く似ていると言っているのです。

他者を人形として操り、その心情を扇動して操ろうとするやり口、ボクの反撃を沈黙で封じる戦法も、お二人は全く同じでした。

…あるいは、求めているもの、欲望も同じなのではありませんか?

貴女方二人は、実に良く似ている。

まるで姉妹の…いや、分身のように。

もしかして貴女は、ボクの先生と競い合っているうちに、すっかりその真似をするようになってしまったのではありませんか?」

 

そして、探偵と化したラリスキャニアは、その持ち前の分析力を以(も)って力強く断言する。

 

「貴女方は、実は仲違いした『シナモリアキラ』の強火オタクで…しかも、かつては親友だったのではありませんか?」

 

その言葉は、一瞬だけ沈黙をもたらした。

その直後だった。

地下アイドルの無謀な断定の報いは、すぐに訪れる。

 

「今度こそ、これが本当の最後です。

諦めなさい。

そして死になさい。

九億年くらいたって、もし覚えていたら掘り起こしてあげましょう。

貴方のお葬式は、この『ディスペータ』が直々にやってあげます!」

 

女神の怒り。

強大なプレッシャーが、地下アイドルを襲う!

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