幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第117話(94~95の途中まで)

それは、干渉された全てを地の底へ引き摺(ず)り込む無数の手の幻像(イメージ)を呼び起こした。

 

約束されたのは、逃れようの無い死という現実。

 

だが、ラリスキャニアは、それでもひるまない。

彼女には、絶対に退けない理由があるのだ。

それはもちろん、

 

「貴女たちは、確かに強い。

ですが、ボクはこれでもアイドルです!

舞台にかける熱量では絶対に負けません!

ファンがボクの活躍に賭けてくれるなら、どんな相手にでも勝ってみせますし、輝く星をもつかんでみせます!」

 

アイドルとしての、心意気であった。

 

だが、死の女神の化身は、それをあっさりと否定する。

 

「その心意気だけで、この力量さを、その衰弱と資源の不足をどう補うつもりですか?

貴女がどんな『賭け』をしようが、そんなことは関係ありません。

この世界(ゼオーティア)では、チョウの羽ばたきが嵐を引き起こすことは無い。

より強力な呪術師や超越者を相手にすれば、どんな賭博師もイカサマ師も勝てないのです。

精神論すら、より強いまなざしの前には負けるのですよ」

 

投げかけられたのは、地の底から這い出るような声、諦観の極みのようなメッセージ。

けれど、地下アイドルは熱く言い返す。

 

「ボクは貴女がつぶやいていたような、世界の真相なんか何も知りません!

興味もありませんし、関わりたくもありません!

けれど、アイドルのことについては世界な中の誰より詳(くわ)しい…いや、詳しくありたいです!

アイドルを観ていて、アイドルが好きで!そして、アイドルに真剣なことでは、だれにも負けません!

だから、この一瞬一瞬に全ての呪力を、生命をかけるのです!

そんな勝負の場においては、本物だとか、偽物だとか、そんなことは些細(ささい)なことでしかありません!

超越者だとかなんとかも、ボクの知ったことではないのです!」

 

「ならば、本物の手にかかって死になさい」

 

その言葉と共に、元女神の影が不気味に膨(ふく)れ上がる。

無数に引き裂かれ、細長く伸びてその顎(アギト)から鋭い牙を覗(のぞ)かせるその姿。

蛇にも大鴉にも鼠(ネズミ)の群れにすら見えるそれは、その形は…!

 

「これは、紀竜レーレンタークの再演!」

 

「おや、ちゃんと真名を呼べるようになったのですね。

ですが、その程度ではどうにもなりません。

これは『罪』の竜、『加害性』の化身。

貴女の『アイドル』や『推す』という振る舞いにだって、どうしたって『加害性』は含まれます。

その罪の鎖は、貴女を地の底へ引きずり込み、その欺瞞(ぎまん)をあ暴(あば)き立てることでしょう。

なるほど、確かにこれも『模倣』ではありますが、そのもたらす死、そして貴女とつながるその『罪』は本物です。

賭けるのなら、敗北すればその賭け金を失うのが道理というもの。

生命を賭けた貴女は、生命を失うのです」

 

その言葉の間にも、影の竜は恐ろしい速度でラリスキャニアを縛り、その血肉を喰らい始めていた。

 

「ぐっ、ううう!」

 

ラリスキャニアの影に、ぼろぼろとチーズのように穴が空いていく。

 

それを冷酷に鑑賞しながら、元女神は語る。

 

「関係性からは、決して逃(のが)れられません。

自ら作り出した世界観、いったん他者と結んでしまった因縁は、神でさえ振り解くことは出来ないのです。

あるいは、万象を語り直し、より上位の関係性とセカイを構築するような、メタ呪文の記述でもあれば話は別ですが…貴方には、もうその機会は与えません」

 

だが、しかし。

それでも、そんな状態になってさえ、地下アイドルの闘志は全く衰えを見せなかった。

彼女は、穴空きのまま、反論する。

 

「傷つける覚悟無しに、ヒトに触れることなんて出来ません!」

 

血を流しながら、抵抗する。

 

「出産も、それ以前の準備段階も、どうしても母体を傷つけてしまいます。

創造は破壊を伴うのです!」

 

それは、食われ続け、穴が空き続けながらも、

 

「ボクら『青い鳥』(ペリュトン)だって、月の巡りごとに血ぐらいは流してますよ!」

 

そのしゃべる舌を食いちぎられてさえ、続いていた。

ラリスキャニアは触手使い。

触手の一種でもある舌の再生や、複数枚の舌の構築などは、お手のものだったのだ。

 

「罪は、どうするつもりですか?

その二枚舌…九枚舌でいくら言い繕(つくろ)ったところで、罪の存在からは逃れられませんよ!」

 

その追及に対しても、なおも力強く言い返す。

 

「ボクは、赦しを求めます!

…確かに、アイドルは罪深い存在だとも、言えるのかもしれません。

アイドルの応援は、多くの時間とお金、そして熱意を必要とします。

それは本来、将来のための勉強や投資に使われるはずだった、そして恋人や家族を作るために用いられるはずだった資源(リソース)

そうしたものを全て吸い取り、“養分”にして育つのが、アイドル産業という花なのです。

一部の心無いヒトたちが、ボクらをチスイコウモリや吸血花と一緒にするのも…あるいは、無理のないことなのかもしれません。

しかし、しかし違うのです!」

 

「一体、何が違うと言うのですか?」

 

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