幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「愛です!
関係性に赦しを与えるのは、ただ愛の存在しかありません!
再演だって、きっと同じです!
だからボクらアイドルは、赦してくれと、認めてくれと頼んで、後は相手に委(ゆだ)ねます!
それに値するだけの振る舞いを以(も)って、赦されざる罪の対価に代えるのです!
精一杯の努力をこめて上演(おひろめ)して、そして観客の批評(はんだん)を待つ!
その最終審判(ジャッジメント)を!
そしてその槍(まなざし)を素直に受け入れる!
それだけが、ボクらに唯一出来ることだから!
重たい罪を背負って、自ら処刑場に上がるなんて、古くさい話です!
これからは、罪を抱きしめて進む時代です!」
そして、地下アイドルは、血を吐くように叫んだ。
というかもう既に吐いていた。
これまで、ただの泥のようだった彼女の黒い汗は、いつの間にか、色鮮やかな赤に染まっていたのだ。
彼女の語りは、どう見ても全力…いや死力を尽くしたものであった。
だが、
「愛?
はぁ…言うに言(こと)欠いて『愛』ですか」
元女王は、呆(あき)れたように、こう続けた。
「異なる視座を持つ者同士は、決して分かり合えません。
健(すこ)やかなるときも病(や)めるときも、ヒトとヒトは常に孤独。
喜びも悲しみも、そして痛みも。
何も共有することは、出来ないのです。
出来ることは、ただ寄り添うことだけなのです」
「貴女が、シナモリアキラと一体化している貴女が、それを言うのですか!
それで本当に、良いのですか!?」
ラリスキャニアは、必死に食い下がるが、
「それしか無いのです。
たとえ肉体を共有したり接続しても、ヒトは一つ(おなじ)には、なれません。
そして、なってもいけないのです。
『杖』がいくら視界にチャチな改変をしようが、義足や義手を繋げようと、精神を改変しようと!
そんなものは、稚拙(ちせつ)な誤魔化しに過ぎません。
そんな『不健康』な後付けは、いつか絶対に限界が来ます。
所詮(しょせん)ヒトは、己の視界(まなざし)を変えることは出来ないのですよ。
そんなものは、稚拙(ちせつ)な誤魔化しに過ぎません。
そんな『不健康』な後付けは、いつか絶対に限界が来ます。
所詮(しょせん)ヒトは、己の視界(まなざし)を変えることは出来ないのですよ。
だって、それは自分そのものなのですから…
そんなことは、もっと早く分かっておくべきだったのですよ。
そう、このヒトが『E・E』や人造天使の偽りの赦しに耐えきれず、『内なる法』と苦しみに屈したように…」
悪魔の左手(ディスペータ)はそう語ると、軽く身を捩(よじ)ってみせた。
すると、洞窟マイルームに、うめき声が響き渡る。
それまですっかり場の空気と化していた悪魔(シナモリアキラ)触手が、その左腕をねじり上げられて、苦痛の叫びを上げたのだ。
なるほど、二人は…二つの触手は確かに一体で、そして同時にその感じるところはどこまでも異なっていた。
なにしろ、今もその苦痛の訴えを聞いた左手(ディスペータ)は、うっとりとした歓喜の表情を浮かべいたのだから。
だが、そんなおぞましい光景を目にしても、地下アイドルは、少しもひるまなかった。
「ボクは…罪を赦し合う舞台(セカイ)を創るスタァなアイドルに…黄…金にだって負けないスーパーアイドルに…な、る、ので…す!」
ただ、攻撃を受けて意識が朦朧(もうろう)としてきたのか、その言葉は急に、脈絡の無いものへと飛んでいく。
「メイファーラには才能も輝きもある!
まだ誰も、その可能性に気づいてないだけで!
きっと彼女にも、推してくれるヒトは必ず現れる!」
「はい?」
というか、そのようなヒトビトは、実は既に大勢いるのである。
『地上』の英雄である『黒百合』(チョコレートリリー)には、既にそれぞれファンクラブが形成され、ペリグランディア製薬などが、合同で開設した専用の受付窓口まで存在するのだ。
まあ、某亜竜人さんについて言えば、彼女はメディア露出や活躍の報道が少ないせいか、その中ではファン人数が最下位だったりもするのだが。
それでも、ラリスキャニアは、事前調査でそれをしっかりと確認はしていたのだ。
ただ同時に、専用掲示板の書き込みの大半が、やたらと感情的で方言がキツいことから、『あ、これほとんど地元の人や親戚だ。うだつの上がらない近所の困ったおじさんとかかな?』と、これまではあまり良い評価を下していなかったのも、また事実ではあるのだが。
「急に何を…」
死にかけながら、必死でわけの分からない話題を繰り出す地下アイドルを見つめ、戸惑(とまど)う元女神。
そのまなざしには、どこか…いや確実に哀れみの色があった。
それも当然、彼女は再生者の、死者たちの母たる女神だったのだ。
転生し悪魔(シナモリアキラ)の左腕となった現在においても、そんな彼女が、苦しむ死者への哀れみや優しさを失(な)くしているわけがなかった。
そんなまなざしを受けながらも、ラリスキャニアの謎のうわ言(ごと)は、ぼそぼそと続いた。