幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第120話(96~97の途中まで)

「ボクは願う。

そして努力し続ける!」

 

ただの信条であり、

 

「独自性(オリジナリティ)は、決して単独(ひとり)では確保(しょうにん)することは出来ない…出来るものか!」

 

支離滅裂でその場しのぎ(ブリコラージュ)な、

 

「古いものを破壊しなければ、新しいものは存在出来ない。

けれどそれでも!」

 

ただ単に、強い思いを込めただけの、

 

「これからずっと、新しい見方を…新鮮な解釈(ユメ)を提供します!

世界を貫く/破壊する、ボクたちの劇(ヤリ)で!」

 

独りよがりの独白(モノローグ)に近い戯言だった。

だが、ラリスキャニアはそれを言い切った。

無数の攻撃についに耐えきり、己の思いをぶちまけたのだ。

 

そして彼女は、こう曰(のたも)うた。

 

「マジカル・アピール!【偶像再演・無限多重・罔両影化身!】(ラリスキャニア・インフィニティ!)」

 

それはつまり、世界に対する宣戦布告だった。

 

その発声と共に、謎の音が響いた。

 

しゃらん!

 

その途端、地下アイドルの姿がブレた。

 

まるで、人物撮影の禁止装置をつけた写真機のように、焦点が合わない瞳のように、その輪郭はぼやけ、かすみ、新聞紙に落ちた水滴のように、たちまちのうちに滲(にじ)んでいく。

 

「これは…?」

 

元女神の誰何(すいか)※の声にも、どこか戸惑(とまど)いの響きがあった。

 

『邪視』妨害用の幻影や幻惑の呪術?

空間震?

 

いや、どれも違う。

そのどれとも酷似(こくじ)しているが、それらとはどこか決定的な差が感じられるのだ。

 

だが、それは何だ?

疑問が解消されないまま、劇は続く。

 

影が広がる。

ただ一人の影帽子が、複数のシルエットの重なりに変化し、そこから分裂を…今にもしそうな状態で曖昧(あいまい)な靄(もや)の状態で静止。

 

そして影は、そのままゆっくりと二つに分かれた。

 

分裂。

これは一見、単に『夜の民』の得意な分身でしかないように見える。

 

だが、しかし。

 

「カーティス…いいえ、これは違いますね。

あの子は、大勢でもある個であって、このように『個』の実体すらあいまいな状態ではありません。

いったい、これはどういうことなのですか?

どんな無茶をやらかしたら、こんな奇妙な有様に?」

 

六王に最も詳(くわ)しい人物…謎物体である人面樹(ディスペータ)は、いぶかしむ。

だって、これほどまでに不安定な姿は、『邪視』的にも『杖』的にも、全くの無価値、むしろ自殺行為だからだ。

 

更にそこには、

 

「竜の牙はどうしましたか?

たった今まで貴方を噛み砕いていた、逃れられない貴方の罪は。

まさか、その関係性すらぼやかすというのですか?

貴方を定義づける痛みを、罪を、曖昧にごまかして、偽善と欺瞞(ギマン)の泥濘(でいねい)の中に逃げのびようというのですか?」

 

その指摘の通り、なんと、多重にゆらぐラリスキャニアは、あの影の竜からの追撃さえも和らげつつあった。

 

正確には、今もその影の顎(アギト)はしっかりと地下アイドルに食いついている。

その首は幾重にも分かれ、不朽の鎖のように彼女を束縛している…はずだ。

 

だが、ゆらぎは、その有り様自体にも及んでいた。

“束縛されている”その姿さえも、有るか無しかの曖昧なシルエットとして、ぼやけてしまっているのだ。

 

ゆらゆらと揺れ、ゆらぐその姿は、まるで真夏の道路に浮かぶ、逃げ水のようであった。

 

ゆらぐ少女は語る。

その声さえも、何重に響かせ、ぼやかせながら。

 

「「「フッフッフ…『因縁』を使った術を仕掛けたのは、失敗でしたね。

ボクは、第五階層生まれの『夜の民』

当然、母語である日本語の概念を以(も)って、事象を認識しています。

『因果』も『縁』も、こうして主体と実体をゆらがせれば、たちまち曖昧になる。

被害者と犯人と事件が明確でなければ犯罪物語(ミステリィ)も成立しないように、曖昧な存在には、罪や責任を問うことは出来ないのですよ!

これぞ、かつてシナモリアキラを破ったというスモー女の業(ワザ)、『量子的不確定』(シュレーディンガーの竜騙し)です!」」」

 

大声による宣言。

あまりの内容のためか、静寂が広がる。

 

しかし、悪魔の左手(ディスペータ)は、すぐに言葉を返した。

 

「いえ、あのゾーイ・アキラにそんな技は存在しませんが。

何周しても、そんなの一回も見たことありませんよ」

 

「「「あれ?」」」

 

第五階層生まれの幼児は、引き連れた木霊(エコー)と一緒に、認識の差を不思議がった。

どうやら、なんらかの誤解があったようだ。

 

「いやしかし、なんですかそんな滅茶苦茶な呪術は。

あらゆるものとの境界を無くすなんて、【融血呪】じゃあるまいし。

それに、さっきまでの負傷と消耗はどうしたのですか?

あんな重傷を一瞬で無意味にするなんて、そんなことが出来るのは、【鮮血…あ!」

 

「よく分かりませんが、ボクの仕掛け(タネ) はこれです」

 

何かに気づいたのか、唐突に硬直する元女王。

それを前に、“興行主”は、右手を指し出した。

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