幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「ボクは願う。
そして努力し続ける!」
ただの信条であり、
「独自性(オリジナリティ)は、決して単独(ひとり)では確保(しょうにん)することは出来ない…出来るものか!」
支離滅裂でその場しのぎ(ブリコラージュ)な、
「古いものを破壊しなければ、新しいものは存在出来ない。
けれどそれでも!」
ただ単に、強い思いを込めただけの、
「これからずっと、新しい見方を…新鮮な解釈(ユメ)を提供します!
世界を貫く/破壊する、ボクたちの劇(ヤリ)で!」
独りよがりの独白(モノローグ)に近い戯言だった。
だが、ラリスキャニアはそれを言い切った。
無数の攻撃についに耐えきり、己の思いをぶちまけたのだ。
そして彼女は、こう曰(のたも)うた。
「マジカル・アピール!【偶像再演・無限多重・罔両影化身!】(ラリスキャニア・インフィニティ!)」
それはつまり、世界に対する宣戦布告だった。
その発声と共に、謎の音が響いた。
しゃらん!
その途端、地下アイドルの姿がブレた。
まるで、人物撮影の禁止装置をつけた写真機のように、焦点が合わない瞳のように、その輪郭はぼやけ、かすみ、新聞紙に落ちた水滴のように、たちまちのうちに滲(にじ)んでいく。
「これは…?」
元女神の誰何(すいか)※の声にも、どこか戸惑(とまど)いの響きがあった。
『邪視』妨害用の幻影や幻惑の呪術?
空間震?
いや、どれも違う。
そのどれとも酷似(こくじ)しているが、それらとはどこか決定的な差が感じられるのだ。
だが、それは何だ?
疑問が解消されないまま、劇は続く。
影が広がる。
ただ一人の影帽子が、複数のシルエットの重なりに変化し、そこから分裂を…今にもしそうな状態で曖昧(あいまい)な靄(もや)の状態で静止。
そして影は、そのままゆっくりと二つに分かれた。
分裂。
これは一見、単に『夜の民』の得意な分身でしかないように見える。
だが、しかし。
「カーティス…いいえ、これは違いますね。
あの子は、大勢でもある個であって、このように『個』の実体すらあいまいな状態ではありません。
いったい、これはどういうことなのですか?
どんな無茶をやらかしたら、こんな奇妙な有様に?」
六王に最も詳(くわ)しい人物…謎物体である人面樹(ディスペータ)は、いぶかしむ。
だって、これほどまでに不安定な姿は、『邪視』的にも『杖』的にも、全くの無価値、むしろ自殺行為だからだ。
更にそこには、
「竜の牙はどうしましたか?
たった今まで貴方を噛み砕いていた、逃れられない貴方の罪は。
まさか、その関係性すらぼやかすというのですか?
貴方を定義づける痛みを、罪を、曖昧にごまかして、偽善と欺瞞(ギマン)の泥濘(でいねい)の中に逃げのびようというのですか?」
その指摘の通り、なんと、多重にゆらぐラリスキャニアは、あの影の竜からの追撃さえも和らげつつあった。
正確には、今もその影の顎(アギト)はしっかりと地下アイドルに食いついている。
その首は幾重にも分かれ、不朽の鎖のように彼女を束縛している…はずだ。
だが、ゆらぎは、その有り様自体にも及んでいた。
“束縛されている”その姿さえも、有るか無しかの曖昧なシルエットとして、ぼやけてしまっているのだ。
ゆらゆらと揺れ、ゆらぐその姿は、まるで真夏の道路に浮かぶ、逃げ水のようであった。
ゆらぐ少女は語る。
その声さえも、何重に響かせ、ぼやかせながら。
「「「フッフッフ…『因縁』を使った術を仕掛けたのは、失敗でしたね。
ボクは、第五階層生まれの『夜の民』
当然、母語である日本語の概念を以(も)って、事象を認識しています。
『因果』も『縁』も、こうして主体と実体をゆらがせれば、たちまち曖昧になる。
被害者と犯人と事件が明確でなければ犯罪物語(ミステリィ)も成立しないように、曖昧な存在には、罪や責任を問うことは出来ないのですよ!
これぞ、かつてシナモリアキラを破ったというスモー女の業(ワザ)、『量子的不確定』(シュレーディンガーの竜騙し)です!」」」
大声による宣言。
あまりの内容のためか、静寂が広がる。
しかし、悪魔の左手(ディスペータ)は、すぐに言葉を返した。
「いえ、あのゾーイ・アキラにそんな技は存在しませんが。
何周しても、そんなの一回も見たことありませんよ」
「「「あれ?」」」
第五階層生まれの幼児は、引き連れた木霊(エコー)と一緒に、認識の差を不思議がった。
どうやら、なんらかの誤解があったようだ。
「いやしかし、なんですかそんな滅茶苦茶な呪術は。
あらゆるものとの境界を無くすなんて、【融血呪】じゃあるまいし。
それに、さっきまでの負傷と消耗はどうしたのですか?
あんな重傷を一瞬で無意味にするなんて、そんなことが出来るのは、【鮮血…あ!」
「よく分かりませんが、ボクの仕掛け(タネ) はこれです」
何かに気づいたのか、唐突に硬直する元女王。
それを前に、“興行主”は、右手を指し出した。