幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第122話(98~99の途中まで)

「「「いいえ、違います。

たとえ全てを失っても、残るのは0 (ゼロ)じゃありませんよ」」」

 

と、とぼけた態度で、よく分からない答えを返すだけだった。

 

「0 (ゼロ)じゃない…?

だとしたら、なんだと言うのですか?」

 

魔女は、思わず聞き返していた。

 

それは、圧倒的な力の差がもたらした油断なのか、あるいは心の奥底に眠らせていた冒険心の名残だったのか。

 

ともかく、質問された地下アイドルは堂々と返答する。

 

「「「0(ラブ)ですよ。

『猫の国』じゃ、歌いながらやるスポーツでそういうんですよね?

確か、『てにぬ』でしたっけ?」」」

 

とぼけたような、そんな返事を返したのであった。

 

それに対する返答は、無言の反撃であった。

幾(いく)つもの攻撃が互いに死角を補い、シナモリアキラ(どや)顔のラリスキャニアへと迫り来る。

 

だが、それでも彼女の平静は変わらなかった。

 

相変わらずその姿をぼやけさせながらも、闘いの決意を宣誓する。

 

「「これから、ボクなりの異世界歌唱劇(ミュージカル)をお目にかけるよ!」」

 

「「ここからは、『分身殺法』(ダブルス)でいくよー!」」

 

しかも、増えていた。

なんか、二人になっている。

 

それは、ただの分身ではない。

“多数で一人”のカーティスと似て非なる在り方、常に妄想され具現化されるそれは…!

 

だが、そんなことはお構いなく、元女神は追撃の構えをとった。

 

「今更そんな虚仮威(こけおど)しなど通用しません!どれだけ分身したところで、本体は一人!

自己の定義を揺るがしたところで、名声値や自己承認の呪力量までは変わらない!

ちょっと根気よく削っていけば、やがて必ず倒れるはずです!」

 

そう叫ぶと、人面樹(ディスペータ)は、己の髪もとい枝を振り回した。

それに合わせ、枝に灯った鬼火が、青い流星群となって降り注ぐ!

 

本来なら微弱な威力しかないはずの攻撃だが、それも強大な使い手が連発すれば、当然その威力は絶大…!

 

炸裂、破砕。

貫通、誘爆。

 

小規模とはいえ、あらゆる破壊を撒(ま)き散らす散弾は、確実にその場の人影を撃ち抜いていく。

 

だが、それも無意味だった。

なぜなら、

 

「「「消すと増えるよ!」」」

 

標的は、攻撃のペースに倍して増えていたからだ。

 

攻撃は、確かに当たっている。

だが、同時に消え去り、前より多い姿として再出現

しているのだ。

 

瞬間移動。

 

それは、自己認識の不確定とまなざしによる再確定がもたらす、存在のゆらぎという『邪視』的な転移方法のひとつ。

 

それは、見た目だけ派手で、呪力コストの費用対効果はとうてい見合わないが、それなりに愛されてきた業(ワザ)

 

『呪文』の分野で言えば、『信頼出来ない語り手』や『密室』くらいにありふれていて、同じような扱いを受けている。

『使い魔』の観点からすれば、フィクションにおける『音信不通』や『すれ違い』のようなもの。

 

一説によれば、メクセトの神滅具の一つも、その原理を利用しているという、伝統的な効果の発動。

 

『猫の国』(いせかい)の言葉で、その業(ワザ)を『量子的テレポーテーション』と呼ぶ。

 

そんなこんなで、いくら攻撃しても、てんで手応えがないことに苛立(いらだ)ちを増したのか…魔女は矢継(やつ)ぎ早(ばや)に攻撃を繰り出し、更にそれと平行して、継ぎ矢のように語りかける。

 

「何の機会でキロンの術を目撃したかは知りませんが、貴方ではとうていそれは使いこなせませんよ。

【トリアージ】を使い過ぎれば、最後に残るのは、アイドルという価値だけ。

そのために切り下げた貴方自身、『ラリスキャニア』本人の尊厳と価値は、綺麗さっばり消えてなくなります。」

 

観測がそのまま攻撃となる、強烈な『邪視』(まなざし)の投射。

 

「そのぼやけた身体、カーティスに類似した霊媒体質を利用した、レーレンタークの模倣…いやそれだけではありませんね。

自己の定義を完全に外部に頼るなんて、そんな危険な真似には、超一流の呪術師のバックアップが不可欠です。

アキラ様の紀人化やグレンデルヒの正体発覚でうかれているのかもしれませんが、」

 

かすかに残る影竜のつながりを利用した呪詛、亡霊ウィルスによる呪的発勁(クラッキング)

 

「傍(はた)から見るのと実際にやるのとでは大違い。

貴方のそれは、『鵜(う)の真似をするカラス』とすら呼べない無様(ぶざま)な物真似(モノマネ)に過ぎません」

 

最後は、全身を鞭に見立てた、単純な打撃。

 

それらの全てが命中し、しかしその全てが有効な戦果を上げなかった。

 

二人消せば、四人に増え。

 

四人を解体すれば、八人に増加。

 

そこで、その全てを死界に収め、一撃抹殺!

 

…したかと思えば、八体の影の収束点に隠れていた小さなラリスキャニアが、瞬(またた)く間に分裂を繰り返して、また振り出しに戻る。

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