幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
そして、分裂した地下アイドルは、いずれもその声を不気味に響かせながら、語りを以(も)って反撃としてきた。
「「「シナモリアキラじゃないと言えば、シナモリアキラじゃない」」」
「「「同化されたり、雑にまとめられたくなければ、拒絶と再定義を続ければいいんだ。
ライバル関係があるといっしょくたにされるなら、他のライバルをたくさん作って、関係性や掛け算(ペルソナ)をたくさん増やせば良い」」」
だが、いかなる賢者にも負けないほどの長寿を誇る元女神は、そんな無数の反響(エコー)をあっさり切って捨てる。
「そもそも、他者のまなざしを用いて、自らを再規定させ続ける?
それは危険な方法ですよ。
万物は無常なる『空』ではあれど、その逆は成り立ちません。
完全に流動し変化してしまえば、それは貴方という存在ではなくなってしまう。
確固とした己の視座無き自己など、存在し得ないのです。
第一、それでは決して真に魅力的なアイドルには勝てません。
…しょせん、名も無き大衆のまなざしでは、ひとりの超越者の愛には勝てないのですよ」
それは、ただの批判ではなく、多くの戦場を駆け抜け、数多の悲劇を目撃してきた、古強者の諦観であった。
それに対し、
「「「貴女は確かに、博識なのかもしれません。
呪術の腕も、芸能の技量や見識も、ボクとは比べものにならないほど上なのかもしれません
けれど!」」」
「「「それだけは、絶対に認めません!
ボクは自分のファンを…子豚ちゃんたちを心から信じています。
子豚ちゃんたちが、ボクを信じているように!」」」
「「「貴女は、アイドルのプロフィールを本気で信じますか?
実は、ボクの体重はりんご2個ぶんなんですよ。
ちゃんとプロフィールに書いてあります」」」
「「「ボクに…アイドルに過去なんて必要ない!
ちょっとトークで場が持つだけの話題さえあれば、十分です!」」」
無数の分身たちは、口々に勝手なことをしゃべり散らした。
「ならば、その限界を知りなさい!
貴女のその小さな器、その器量の限界を、きちんと記録しておいてあげましょう!
【劇射念写】(スナッフ・スナップ)」
更に激昂(げっこう)したのか、元女神はここへ来て新たな呪術を行使。
彼女が、宣名と共に呼び出したのは、半透明な棒であった。
それに加えて元女神は、
「記憶し殺せ、『地盗(じど)り氷槍』」
追加の宣名によって、新武装の機能を解放。
同時に、凄(すさ)まじい速さで連写を始めた。
それは、恐るべき呪術であった。
間違いなくただの念写のはずなのに、限りなく【実写】に近い効果。
その時、恐るべきことが起こった。
槍の頂点に固定された端末からフラッシュが閃(ひらめ)くたびに、ぼやけた人影が、ひとつひとつ消えていくのだ。
まるで、閃光が薄皮を剥(は)ぐ刃であるかのように、ラリスキャニアに重なっていた影は次々とかき消され、その姿は、どんどんと明確になっていく。
その原理は、きわめて単純だ。
強い『邪視』(まなざし)が、弱い『邪視』(まなざし)を打ち消している。
ただ、それだけ。
だが、それだけでも時に絶大な効果を及ぼすこともある。
特に今回のように、術者と対象の力量差が、“世界に対する干渉力”に大きな開きがある場合は言うまでもない。
『念写』というきわめて普遍的で、安全無害とされている術であっても、そこに絶大な呪力と技術、そして何より確立された権威が加われば…それはすなわち、情報加工という名の暴力である。
発生している現象自体は、ごく当たり前の“念写画像の作成”であるが、この術の撮影対象への干渉力は、まさに桁(ケタ)違い。
そのため、撮影のたびに“逆流現象”が発生する。
つまり、撮影された画像通りに、対象の『実体』が変更されてしまうのだ。
これは、この呪術世界においても、通常は多数の撮影やそれなりの時間が必要とされる過程である。
だが、この【劇射念写】(スナッフ・スナップ)は、その過程を一気に短縮する。
その撮影は、撮られた瞬間に対象を固定し、その可能性を限定してしまうのだ。
それはあたかも、あの忌まわしき伝説の重罪呪術『実写』が、ヒトの魂を喰らい封じるかのように……
だが、それでも。
「負けない!」
「頑張って、ボク!」
猛攻に耐え、ラリスキャニアは、二人だけ残っていた。
いや違う。
“槍”のファインダーを覗く撮影者は、その変事に気づく。
「そんな、消滅と同時に再生しているなんて…!
互いの影に隠れているから、写撃で消し切れない…!」
すなわち、片方を消しても残った方が必ず相方を再生してしまうのである。
それは、際限の無い相互参照の復活であった。
更に……
「みんな、撮影(チェキ)許可だよ!」
「何を…くっ、まぶしい!」
地下アイドルの放った合図と共に、その周囲に無数の映像窓が展開。
その全てが、瞬(またた)くように閃光を放つ!
これには、さしもの元女神も、たまらずのけぞるしかなかった。
そして、その閃光と同時に…