幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第123話(99~100の途中まで)

そして、分裂した地下アイドルは、いずれもその声を不気味に響かせながら、語りを以(も)って反撃としてきた。

 

「「「シナモリアキラじゃないと言えば、シナモリアキラじゃない」」」

 

「「「同化されたり、雑にまとめられたくなければ、拒絶と再定義を続ければいいんだ。

ライバル関係があるといっしょくたにされるなら、他のライバルをたくさん作って、関係性や掛け算(ペルソナ)をたくさん増やせば良い」」」

 

だが、いかなる賢者にも負けないほどの長寿を誇る元女神は、そんな無数の反響(エコー)をあっさり切って捨てる。

 

「そもそも、他者のまなざしを用いて、自らを再規定させ続ける?

それは危険な方法ですよ。

万物は無常なる『空』ではあれど、その逆は成り立ちません。

完全に流動し変化してしまえば、それは貴方という存在ではなくなってしまう。

確固とした己の視座無き自己など、存在し得ないのです。

第一、それでは決して真に魅力的なアイドルには勝てません。

…しょせん、名も無き大衆のまなざしでは、ひとりの超越者の愛には勝てないのですよ」

 

それは、ただの批判ではなく、多くの戦場を駆け抜け、数多の悲劇を目撃してきた、古強者の諦観であった。

 

それに対し、

 

「「「貴女は確かに、博識なのかもしれません。

呪術の腕も、芸能の技量や見識も、ボクとは比べものにならないほど上なのかもしれません

けれど!」」」

 

「「「それだけは、絶対に認めません!

ボクは自分のファンを…子豚ちゃんたちを心から信じています。

子豚ちゃんたちが、ボクを信じているように!」」」

 

「「「貴女は、アイドルのプロフィールを本気で信じますか?

実は、ボクの体重はりんご2個ぶんなんですよ。

ちゃんとプロフィールに書いてあります」」」

 

「「「ボクに…アイドルに過去なんて必要ない!

ちょっとトークで場が持つだけの話題さえあれば、十分です!」」」

 

無数の分身たちは、口々に勝手なことをしゃべり散らした。

 

「ならば、その限界を知りなさい!

貴女のその小さな器、その器量の限界を、きちんと記録しておいてあげましょう!

【劇射念写】(スナッフ・スナップ)」

 

更に激昂(げっこう)したのか、元女神はここへ来て新たな呪術を行使。

彼女が、宣名と共に呼び出したのは、半透明な棒であった。

 

それに加えて元女神は、

 

「記憶し殺せ、『地盗(じど)り氷槍』」

 

追加の宣名によって、新武装の機能を解放。

 

同時に、凄(すさ)まじい速さで連写を始めた。

 

それは、恐るべき呪術であった。

 

間違いなくただの念写のはずなのに、限りなく【実写】に近い効果。

 

その時、恐るべきことが起こった。

槍の頂点に固定された端末からフラッシュが閃(ひらめ)くたびに、ぼやけた人影が、ひとつひとつ消えていくのだ。

 

まるで、閃光が薄皮を剥(は)ぐ刃であるかのように、ラリスキャニアに重なっていた影は次々とかき消され、その姿は、どんどんと明確になっていく。

 

その原理は、きわめて単純だ。

強い『邪視』(まなざし)が、弱い『邪視』(まなざし)を打ち消している。

ただ、それだけ。

 

だが、それだけでも時に絶大な効果を及ぼすこともある。

特に今回のように、術者と対象の力量差が、“世界に対する干渉力”に大きな開きがある場合は言うまでもない。

 

『念写』というきわめて普遍的で、安全無害とされている術であっても、そこに絶大な呪力と技術、そして何より確立された権威が加われば…それはすなわち、情報加工という名の暴力である。

 

発生している現象自体は、ごく当たり前の“念写画像の作成”であるが、この術の撮影対象への干渉力は、まさに桁(ケタ)違い。

 

そのため、撮影のたびに“逆流現象”が発生する。

つまり、撮影された画像通りに、対象の『実体』が変更されてしまうのだ。

 

これは、この呪術世界においても、通常は多数の撮影やそれなりの時間が必要とされる過程である。

 

だが、この【劇射念写】(スナッフ・スナップ)は、その過程を一気に短縮する。

その撮影は、撮られた瞬間に対象を固定し、その可能性を限定してしまうのだ。

 

それはあたかも、あの忌まわしき伝説の重罪呪術『実写』が、ヒトの魂を喰らい封じるかのように……

 

だが、それでも。

 

「負けない!」

「頑張って、ボク!」

 

猛攻に耐え、ラリスキャニアは、二人だけ残っていた。

 

いや違う。

 

“槍”のファインダーを覗く撮影者は、その変事に気づく。

 

「そんな、消滅と同時に再生しているなんて…!

互いの影に隠れているから、写撃で消し切れない…!」

 

すなわち、片方を消しても残った方が必ず相方を再生してしまうのである。

それは、際限の無い相互参照の復活であった。

 

更に……

 

「みんな、撮影(チェキ)許可だよ!」

「何を…くっ、まぶしい!」

 

地下アイドルの放った合図と共に、その周囲に無数の映像窓が展開。

その全てが、瞬(またた)くように閃光を放つ!

これには、さしもの元女神も、たまらずのけぞるしかなかった。

 

そして、その閃光と同時に…

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