幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「ラリスキャニアが増えている…!
それも、窓ごとに!?」
そう、合図と共に宙空に現れた小さな窓、それを見れば、一目瞭然(いちもくりょうぜん)
そのひとつひとつに、小さなラリスキャニアが映り込んでいるのだ。
しかも、それら全てが、同じテニスラケットを構え、同じようにテニスウェアを着込んでいる。
だが同時に、それらはどれも違うラリスキャニア。
ポーズ、窓の先に映るファンの姿、細かいアクセサリー、髪型、スカートか半ズボンか、そして映像窓に浮かび上がる記念メッセージに至るまで、その全てが、それぞれ微妙に異なるのだ。
全てが同じで、全てが違う。
それは、“永遠の一瞬”
どれだけ時が流れようと、もう二度と訪れないこの一時(ひととき)、その時間の持つ一面を強調した業(ワザ)
すなわち、【一回性】というひとつの呪術であった。
そして、多くの小人に囲まれながら、通常サイズのラリスキャニア二人は、力強く宣言した。
「「ボクはボクを…もう一人の『本物』のラリスキャニアを信じます!」」
それに返るは、悲鳴のような声。
「『本物』が二人いるわけがありません!
どちらかが偽物のはずです!」
今、攻めているのは、あちらだというのに…これではまるで、逆に元女王の方が、追い詰められているかのようだ。
それでも、二重の響きは一切退かない。
「「いいえ、『ラリスキャニア』である限り、『アイドル』である限り
だって『アイドル』は、いつも明日の『本物』
になるため現在(いま)の自分(ニセモノ)を否定していく『本物』なのだから!
ボクと兄弟は二人でひとり!
互いに鏡の『偽物』で『本物』なのです!」」
声を揃えて反論する鏡の双子を、元女神はやっきになって否定する。
「鏡は、やがて必ず壊れます!
自分の理解者、反映してくれる愛してくれる相手なんて、本当はどこにもいない!」
痛々しい叫び声、痛々しい言葉。
それはまるで、今にも死にそうになっているかのようである。
「「いいえ!
アイドルの舞台(ステージ)では、あらゆることが可能なのです!
これまで叶わなかった夢も、これから実現するはずが無かった理想も!
そして、有り得ないはずの幻想も!
ここでは、その全てが実現するのです!
それを成立させるため、ボクは、ボクらは共に舞い踊ります!
夢の中で出会ったもうひとりのボク!
彼女を、相手役(アンタゴニスト)として活かすために!」」
それを聞いた悪魔の左手(ディスペータ)は、
「そんな強引な間に合わせの表現が、そんな在り方が上手くいくはずがありません!
さっさと諦め、敗北しなさい。
ここで私に負けておいた方が、後で挫折して絶望のままに終わるよりよほど良い!」
と、激しく叫ぶと、また、語調をガラリと冷たく変える。
「それとも、その小細工の寄せ集めで、本当にこの私(ディスペータ)に勝てるとでも思っているのですか?」
たった一瞬だった。
その、脅迫のような言葉が、彼女の舌先を離れるかどうか、というその一瞬。
会話の間も間断(かんだん)なく行われていた、閃光と閃光、連射される光の瞬(またた)き、それに紛(まぎ)れ…膨大な“白”が、人面樹(ディスペータ)から迸(ほとばし)ったのだ。
それは、あまりに速く、光を保護色として忍び寄り、何よりあまりに大量で一切の隙間(スキマ)無く襲いかかってきた。
その攻撃は、射つ殴るといった点(いちじげん)でも、薙(な)ぎ払い回し蹴りといった線(にじげん)でも無い。
ラリスキャニアにとって、全く未知の攻撃だった。
それでも、もしそれが、身体全体を使った押さえ込みであれば、まだ彼女(たち)にも対応は可能だったかもしれない。
アイドルファンと言う群衆は、しばしば暴徒化し、ときに、組み技のような挙動に出ることもあるからである。
だが、違った。
その挙動は、地下アイドルの思考の範囲内に存在しなかった、“面”(さんじげん)の攻撃。
それは、彼女が苦手な、歴史年表や世界情勢では当たり前の技術。
王や将軍、騎士の嗜(たしな)み。
地を穿(うが)ち、物体を組み合わせ、呪力を生産し、半永久的な呪的効果をもたらす構造物(アーキテクチャー)を構築する営為(えいい)
人呼んで、それを【築城】という。
気づけば、二人のラリスキャニアは、完璧に囚われていた。
人面樹(ディスペータ)から放出された大量の骨が、鳩のように飛び交ったかと思いきや… あっという間に彼女たちを包囲し、霜柱のように真っ白な牢へと、転じていたのだ。
大腿骨(だいたいこつ)や尺骨(しゃっこつ)※の柱、背骨の天井、それらをつなぐ腱(けん)のワイヤー補強、果ては、脱出阻止に肋骨の“骨状網”まで……
それ正に、死の牢獄であった。