幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第125話(100~101の途中まで)

死は、唐突に襲い来て、完膚(かんぷ)なきまでに獲物を捕らえるもの。

 

それを体現するかのように、完璧な“捕縛の形”が、そこに顕現(けんげん)していた。

 

当然、それまで展開していた無数の映像窓とのつながりは、残らず遮断(カット)されてしまっている。

 

ご丁寧なことに、牢の内部には魚や小動物の骨を使った“有刺骨線”まで張り巡らされ、“二人”の地下アイドルをその眼球に至るまで縛り上げている。

 

流石に、骨の棘(トゲ)までは刺さってはいないが…少しでも動けば、確実に串刺しになる配置である。

 

これでは、いかなる邪視者も無力化されてしまうことであろう。

 

そんな哀れな囚人たちに、元女王は重ねて宣告する。

 

「これで、理解出来ましたか?

お互いの力に、そして“器量”に、一体どれだけの開きがあるか、ということが」

 

 

「「こんなもの、ダブル触手コンボで砕いて…うっ!」」

 

「無駄ですよ。

その檻の中枢は、亜竜人の恋人(カップル)の骨を組み合わせて、形成しました。

二人は、お互いの愛人を殺し合った愛憎の果て、決闘で相打ちになってそのまま葬(ほうむ)られてた。

その結びつきは、もはや誰にも引き剥(は)がすことは出来ないのです」

 

そのまま、これが貴方の大好きな『絆』ですよ、と嘯(うそぶ)く看守を前に、ラリスキャニアたちには、返す言葉が無い。

 

再逆転。

いや、これはただ、彼女が本気になった、それだけのことなのだ。

 

それだけで、形勢はこうもあっさりと、ひっくり返ってしまった。

 

この戦いは、地下アイドルによる拘束から始まったが、今では逆に、元女神(ディスペータ)の方が彼女(たち)を封じてしまっている。

これこそが、古(いにしえ)の昔から神話で語られる女神、その実力ということなのだろう。

 

その上で、監禁者は静かに語りかける。

 

「さて、この舞台があの時の再演なら、これから私が“あの呪文”を用いれば…どうなるか、もうお分かりですね?」

 

「…!」

 

妖精呪文の力は、人狼の王をも解体し無に帰せしめたほどのもの。

 

当然、種族的にその近縁である『青い鳥』(ペリュトン)のラリスキャニアにとっても、特効であることは、疑いようがない。

 

凄(すさ)まじい威圧感。

それは実際に大気を押しつぶす圧力となって、囚人たちを圧迫した。

 

「今度こそ、本当の最後通牒(さいごつうちょう)です。

諦めなさい。

アイドルをやめろとは言いません。

ただ、私との戦いを降りるだけで良い。

破滅しか待っていない前進を中断し、ただ一つの大切なものだけを死守するのです。

諦めなさい。

それだけが、貴方に残された最後の選択肢なのです」

 

ラリスキャニアたちは、どう見ても限界だ。

もはやファンの呪力(しきん)も底をついたのか、その息はたえだえ。

分身も、ただ二人にまで減ってしまっている。

 

それでも、薄暗がりの中から二対の眼が、恐るべき魔女を見返していた。

苦しみながらも、なおその目には光がある。

 

二人は、それでもなんとか言葉を絞り出そうとしているのだ。

 

「ボクは絶対にあき…そうか!

ハハハハハハ!」

 

今度は突然、地下アイドルが笑い出した。

 

「…なんですか?

ついに発狂しましたか?」

 

冷静な元女王。

だが、その手厳しい批評(コメント)も、

歓喜の叫びによって、あっさりとかき消されてしまう。

 

「なんだ、簡単なことじゃないか!

ありがとう、先代の女王様!

おかげで、最高のアイディアを思いつくことが出来ましたよ!」

 

「また今度は、何をするおつもりですか?

悪あがきは、傷口を悪化させるだけですよ。

…まあ、あえて止めはしませんが」

 

その質問に対する答えは、ただ一言で十分だった。

 

ラリスキャニアは、その両の眼をしっかりと悪魔の左手(ディスペータ)に合わせ、

 

「助(すけ)っ人を呼びます!」

 

と、そう叫んだのだ。

 

それを耳にした元女王は、しかめた顔で(手)首を左右に振って否定の意を示した。

 

その動作によって彼女の身体、つまり悪魔(シナモリアキラ)の左腕が更に強くひねられ、またも哀れなうめき声をあげた。

現在進行形で床に押し付けられている悪魔(シナモリアキラ)触手。

 

そんな彼に言及するものは、やはり誰もいない。

 

けれど、そんなことにはお構いなし。

左腕は、冷たい声で次の指摘を放った。

 

「そんなことをすれば、容易(たやす)く自我を塗りつぶされてしまいますよ。

自分との戦いは常に孤独なもの。

助っ人…助けを呼ぶとは、自分より強く優れていると誰かを認めるということ、依存し己が敗北を認めること。

突き詰めれば、他者に自分を明け渡すということに他なりません。

貴方も、とっくにご存知のはずですよ。

この世界(ゼオーティア)の根本言理は、承認の奪い合い。

より目立ち愛される方が勝者となり、敗者から全てを奪う。

いいえ、敗者は全てを失い、消えゆくのみなのです。

それは死に等しい、無関心の地獄。

敗北した者は、公衆放送や配信に出なくなった芸能人のように、語り継ぐ者がいなくなった神々のように、あるいは連載を続けられなくなった漫画家のように……すぐに忘れ去られ、見捨てられるだけです」

 

 

 

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