幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第128話(その2の1~2の途中まで)

「仮にも『死の女神』ーー元・死の女神たるこの私に『死』を説きますか。

本当に身の程知らずですね。

あるいは既に、貴方の芸術的センスは『死んで』いるのではありませんか?」

 

静かなる圧迫。

それは実際の『死』に至る脅威だった。

 

圧倒的な力を持つ視線が、地下アイドルを押し潰さんとする。

 

そこへ更に、駄目押し のように追加で問いが投げかけられた。

 

「そして、ずいぶんとおしゃべりが長いようですが…“助っ人”とやらは、どうしたのですか?」

 

地下アイドルのあまりの長広舌に、すっかり毒気を抜かれてしまったのだろうか。

 

先程までの怒りはどこへやら、人面樹(ディスペータ)は、すっかり余裕の構えだ。

 

まあ、それも当然。

この実力差では、何をしたところで形勢(けいせい)を覆(くつがえす)すことは不可能だろう。

しかし、それでも元女王様は、その質問だけは、せずにはいられなかった。

 

なにしろ、目の前のアイドルは、一度は己と宿敵を出し抜いたのだ。

たとえそれが偶然であるにしろ、少なくとも“その偶然を打ち破った”という実績は作っておかねばならない。

 

呪術世界ゼオーティアでは、偶然は容易(たやす)く必然へと変わってしまうのだから。

ここでは、牽強付会(けんきょうふかい)が『事実』となり、思い込まれた妄想こそが『現実』になってしまう。

この世界において公的印象(パブリックイメージ)の操作は、完全な勝利を得るためには不可欠なのである。

 

そうした思いが、最後の最後で未練となり、かつての女神に一手を誤らせ、攻撃より質問を優先させてしまった。

けれど…それは、悪手だった。

幼き日、好奇心だけを胸に冒険を繰り返していた前世/来世に戻ってしまったかのような、反射的な対応(うっかり)であったのだ。

 

そして、その落ち度の結果は既にーー

 

「いやそういえば、貴方、“もう一人”は、一体どこにいきました?

いつから、分身を解除していたのですか?」

 

ーー彼女の重大な見落としという形で、現れていたのである!

 

 

 

 

 

 

その時、地下アイドルは、自らの特技を追加で発動させていた。

 

『心の抽斗』(こころのひきだし)

それは、『夜の民』特有の収納能力。

 

この能力には特徴がある。

 

ーー取り出すだけなら、何の動作も不要なのである。

なにしろ、早着替えに使っている英雄もいるくらいだ。

 

だから、いくら全身を拘束されていても、ラリスキャニアが一つの物体を取り出すことに、何の問題もなかったのだ。

 

それは、全ての拘束を押し退けて出現した。

流石(さすが)の女王も、こんな戦法は予想出来なかっただろう。

 

そもそも、『夜の民』が『心の抽斗』にこれほど大きいものを入れていること自体が極めて例外的なケースである。

 

呪力回復のため、大量のお菓子を迷宮に持ち込む探索者でさえ、階層を一つ越える頃には、『抽斗』の中身もほぼ空になっているのが、当たり前なのである(※探索者協会調べ)

 

だが、彼女が取り出したその物体は、持ち運ぶのも難しいほどの、大きさと体積を誇っていた。

 

それは霊長類型の形状(シルエット)を持ち、手も足もあった。

けれど同時に、明らかに生命ではなかった。

 

タイトなスーツ、眼鏡、セミロングの髪、やけに描き手の力が入っている嫌味な表情。

そして、そこらの木や布、がらくたを集めて適当に組み上げられかのような、粗雑なボディ。

 

それら全てが、それがある一つの存在の模造物であることを示していた。

 

つまりそれは…ラクルラール人形であったのだ。

 

「やはり、そういうことですか!」

それを見て、人面樹(ディスペータ)は、猛(たけ)りたった。

 

自分に対抗出来るような相手なんて、そしていちいち邪魔をしてくるような敵手なんて、この世にただ一人しかいないに違いない。

それこそ、彼女の根幹を成す思い込みであり、『信念』であった。

 

だからこそ、次の瞬間、彼女は全力で攻撃を仕掛けていた。

高速で骨の枝が伸び、人形を大きく薙(な)ぎ払ったのだ!

 

一撃だった。

 

その一撃で、人形はあっけなく壊れて…ボールのように首が飛んでいく。

 

「これで…いや、あっけなさすぎる…?」

 

そう、その首は、あまりにも無抵抗に飛んでいった。

まるで、最初からそのように『設計』されていたかのように。

 

そして…その軽すぎる感触は、熟練の術師が己が失態に気づくには、十分なヒントであった。

 

元女神の驚愕(きょうがく)が、また思わず口から漏(も)れ出す。

 

「まさか、それが狙いで!?」

 

彼女は気づいた。

人形は、他の何かを引き出すカギ、一種の『索引』だったのだ。

 

言ってみれば、罠である。

つまり、首を無くすことで、初めて意味を持つスイッチ式のトラップ。

 

それが今、起動する…!

 

「傷口から、血!?いや、この“色”は!」

 

それはまるで、悪質なパロディだった。

切断された人形の首。

 

そこから、『朱』色が一斉(いっせい)に辺(あた)りに溢(あふ)れ出したのだ。

 

それは、血ではない。

それどころか、液体ですらなかった。

 

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