幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第138話(その2の9の途中まで)

そのうごめく星たちに後押しされて、ラリスキャニアは更に叫ぶ。

 

「それに、それでも良いです!

 

だってアイドルはーー」

 

そして、大きく息を吸い込み、勢いをつけて飛び上がる !

 

その手からは、それまで大切に握っていたはずの“円盤”が、こぼれ落ちていた。

 

「なん、だとーー!」

 

女教師の驚きの声が、向かいくる彼女の力を、その意外性を証明する。

 

ラリスキャニアは、ただ単身で飛び上がった、というわけではなかった。

 

その跳躍、いや“飛躍”には、おまけがついてくる。

 

それはちょうど、彼女が身代わりにした偶像(フィギュア)の台座のようなもの。

 

瓦礫(ガレキ)を組み上げた舞台(ステージ)に乗って、影の鋼線(ワイヤー)で引っ張られて天空へと急上昇。

 

アイドルは、自身を支える床と共に宙へと飛翔していた。

これは、紛(まぎ)れもなく女教師由来の業(ワザ)だ。

 

しかし、その鋼線(ワイヤー)は、一体何に支えられているのか?

 

土台を失ったはずの彼女の舞台、果たして、それを引き上げるのは、いかなる支柱なのか?

その答えを、相対している女教師は、確かに目撃していた。

 

「下から何かが伸び上がってくる…!?

これは…!?」

 

それを目撃したラクルラールは、思わずよろめいた。

地下アイドルが仕掛けた驚愕(きょうがく)のトリック

その正体。

 

そのあまりの馬鹿らしさに、不覚にもめまいを覚えてしまったからだ。

 

それは、二本の塔だった。

基調は銀でありながらも、万色のきらめきを見せるその“素材”

アイドル学園の元学園長が、とてもとてもよく見慣れた物体。

 

それこそは…ただの円盤であった。

 

ラリスキャニアが販売している、ごくありきたりな“消費財”。

その無数の積み重ねこそが、塔を形作っていたのだ。

 

気づけば、ラリスキャニアの足元、それを支える土台すら円盤で出来ており、それはきらきらと構造色の輝きを反射してくる。

鳥害を防ぐ呪術効果があるとされる、眩(まばゆ)い輝き。

 

更に、それには重要な部品(パーツ)が付属していた。

地下アイドルが、その両の手から伸ばした漆黒のワイヤー。

それが、その塔のそれぞれの頂点にくっつき、その身を足場ごと持ち上げているのだ。

 

要するに、それは……

 

「空中ブランコでこの私から逃げるか良い度胸(どきょう)だお前のような羽虫程度余裕で捕まえてやるさあ逃げてみろ出来るものならなぁ!」

 

そう、曲芸団(サァカス)で用いられる、空中ブランコだった。

 

だが、これは実に特殊だった。

何しろ、ほとんど揺れることがない。

 

それはただただ高く、ひたすら上へと上昇していく。

二本の円盤塔が、凄(すさ)まじい速さで積み上がっているからだ。

 

しかも、その反射光は、光情報による魔法陣を形成。

 

それがまるで、機械女王が走らせる磁力貨物列車(リニアモーターカー)のように、呪力線による見えざるレールを、上方へ、天へと向かって敷き続けている。

 

そうして逃げ行く地下アイドルに追い縋(すが)るは、天下に知られたアイドル学園のトップ。

泣く子も黙(だま)るキュトスの姉妹、守護の九姉。

 

だが、その頭上を(文字通り)超えていくは、なんてことの無い、ごく平凡(ゼオータイル)な、どこにでもある消費財の積み重ね。

右へ左へ、微妙な揺れを重ね続けるその動きは、とらえづらく、その行動はかなり阻害しにくい。

 

ならば柱を破壊しよう、と誰もが考えるだろうが、こちらもこちらで難しい。

なにしろ、重力と呪力レールだけで接続されたその仕組み(システム)は、サイバーカラテなどで用いられる『連接鞭』にも似た、不安定でありながらとても堅固な構造。

これでは、たとえ【爆撃】などの範囲攻撃で円盤を何十枚か吹き飛ばしたとしても、すぐにそれらは周囲から補填(ほてん)され、修復されてしまうであろう。

この呪術機構を完全破壊するには、無数に存在する術者、つまりラリスキャニアのファン全員を叩きのめすか、より強大な呪術によって、打ち消しや上書きをするしかない。

 

けれども、このような互いの『芸』を競い合う戦いにおいて、そんな勝負(ちゃぶ)台をひっくり返すような

行いは歓迎されない。

せいぜいが、やった方の自滅による敗北と見做(みな)されるのが、オチであろう。

 

つまりは、これでラリスキャニアの“逃亡”は成功したも同然である。

双方の実力差を見れば、これは『歴史的』と言って良い程の快挙と言えよう。

 

とはいえ、ラクルラールほどの呪術師であれば、あるいはこの程度の仕組み(システム)を破壊するのも、容易なことだったかもしれない。

 

なにしろ彼女は、長い時を生きる不死の魔女。

多くの経験を積んだ呪術戦のエキスパートなのだから。

 

だが、今回に限ってはその高度な呪術戦への慣れが、彼女の足を引っ張っていた。

 

 

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