幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
気を取り直したラリスキャニアは、説明を一気に進める。
彼女の身体からは、新たに何本もの触手が放たれ、その先にはいくつもの指人形がはまっていた。
指人形の小さな魔女たちは、洞窟マイルームの壁に映し出された画像を背景として舞い踊り、そのゆらめく軌跡が重なれば重なるほど、ラリスキャニアの説明(プレゼンテーション)は進行していくのであった。
はじめに闇があった。
そして、そこに上方から光が差し込んだ。
光はスポットライトであり、スポットライトはひとりの小さな魔女の人形を照らし出していた。
彼女が、今回のラリスキャニアの再現劇(プレゼンテーション)の主役だ。
彼女は有名人、お金持ち、雑誌の顔にもなった有力な魔女、新進気鋭のCEO
そしてなにより、大きなおうちのごしゅじんさま
そんな彼女は噂の中心
誰もが彼女の話をする
誰もが彼女に何かを求める
成功者、幸運な女、悲劇の遺児、発掘された大器、英雄の仲間、空虚なる中心、あるいは偉大なる後継者
誰もが彼女に期待をしていて、誰もが彼女に思いをかける
今回語られまするは、そんな彼女の過去(むかし)の物語り
さてさて、上手くいきますかどうか
足りない準備に拙い語り手
ありあわせの間に合わせの舞台ではありますが、なんとかこなしてみせましょう
うまく行きましたら、皆様どうか拍手ご喝采をお願いしますね
それでは、幕を上げましょう
そう、これから語られまするは、ちいさな魔女の物語
――――言理の妖精、語りて曰く
*
はじめに闇があった。
そしてそこにスポットライトが照らされ、闇は破壊された。
だが、破壊の痕跡に残るものがあった。
そこには、一人のちいさな魔女が立っていたのだ。
魔女の少女は、くるくる回る。
スポットライトで、くるくる踊る。
くるり、くるりと回るその動きは、まるで祝祭に踊るダンスのよう
くるり、くるりと少女は踊る。
けれどもそれは、楽しくなかった。
楽しい踊りでは、けっして無かった。
少女がくるりと回るたび、スポットライトに影が飛ぶ。
風を切って、飛んでくる。
風を切り飛ぶその影は、鳥か?箒か?幻霊か?
いえいえ、それはありふれた、どこにでもあるささいな凶器。
風を切って飛んできたのは、少女を狙い、投げられた石。
踊りに見えたその光景は、必死に石を避けているだけだった。
少女は回り、避けていた。
飛び交う石を、避ける動きが、少女の動きを踊りに見せていたのだ。
少女は、周囲にいじめられていた。
少女の周りの暗い闇は、みんなみんな、人の影。
彼女をいじめる、人の影。
少女は名家の生まれだった。
その名も高き、クロウサー。
生まれながらに将来決まり、家柄高貴、財産たくさん、人脈コネなどいくらでも。
クロウサーに産まれたものには、栄達名誉が約束される。
けれどもそれは、茨の道。
クロウサーには、弱者はいらぬ。
クロウサーのゾラ家の者は、翼の耳にて空を飛ぶ。
けれど少女は、丸い耳。
翼を持たぬ、ただの耳。
少女はある意味、恵まれていた。
生まれながらに期待され、未来は確かなレールの上に
誰もが尊ぶ血筋に産まれ、誰もが羨む称号を持つ
その称号が、問題だった。
少女がもらった、その称号は。
最も偉大で、最も強く、最も速きクロウサー。
最高だけに許された、その名も高き【空使い】
少女は偉大な【空使い】
優れているのが、当たり前
だけどいちばん、落ちこぼれ
なぶりものにされる少女は、まるで熊いじめの熊のよう
あるいは、つながれた犬のよう。
偉大な血筋も、ただの重荷。
鎖にしばられ囚われて、少女はひとり、舞っていた。
道化のふりに、いないふり、少女が舞うのは、避けるため。
少女が踊るは、生への闘争。
それは、ただただ、生きるため。
「あの子がなんで【空使い】?」
「誰でもアレよりできるよな」
「サイリウス様もお優しいこと、あれは競争を楽しくさせるための措置。最も勝利から遠い者でも、最初から賞品を持てば戦いに積極的になれることでしょう」
少女は問われる、つらく厳しく、激しく強く。
産まれながらに与えられた財、与えられた名誉。
お前は代わりに何を出す?
家族みんなで頑張りましょう。
力を合わせて助け合おう。
それはとっても美しい。
けれどもそれは、コインの表。
コインは、表と裏がある。
権利と義務は対となる。
助け合うみんなが家族ならば、助けてくれないのは家族じゃない。
助けられるだけでは、家族じゃない。
クロウサーの一族は、強くて偉くてお金持ち。
そんなみんなを助けられるか?
お前は家族を助けられるか?
助ける強さを持たないならば、利益も力も獲れないならば、そんなお前に価値はない。
みんなの家族でいる資格ない。
家族でないもの、ひとでなし
富奪えぬもの、ひとでなし
強くないもの、居場所無し
少女は投げられる、石を言葉をまなざしを。
たくさん家族がいるはずなのに、少女はまるでみなしごのよう。
少女は、この世にひとりぼっち。
たくさんの「家族」に囲まれて。
少女は踊る、くるくると。
少女は笑う、身を守るため。
槍に刺さった大地の上では、強くなければ生きられぬ。
強くなければ、価値がなく、役立たずにはなにもない。
ひとでなしでは、生きられない。
少女は踊る、生きるため。
少女はくるくる舞い踊る。
くるくる、くるくる、舞い踊る。
やがて少女は居場所を探す。
陸に上がった魚のように。
回り疲れた少女は逃げる。
魚が水へと跳ねるように。
踊る少女は、外へ出る。