幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第140話(その2の10~11)

すなわち、地下アイドルによる地下経済である。

 

そして、大量の札(チケット)は、その手元から噴水のように打ち上げられ、滝のように流れ落ち、津波のように周囲へと打ち寄せていく。

 

いくら夢の中とはいえ、これだけ大盤振る舞いすればすぐに尽きてしまいそうだが、その心配は無い。

 

なぜなら……

 

「この札(チケット)は、絶対に無くなりません!

なぜならこれは、地下アイドル迷宮の共通規格、全アイドルが互いに贈り合い、使い合う地域通貨(ローカルマネー)!

つまりは、複数のアイドルを応援するファン『複推し』の存在を推奨し、その交流と情報交換を加速させるアイドル呪力(ミーム)増幅通貨なのですから!」

 

その決め台詞(ゼリフ)とともに、地下アイドルは、指を鳴らした。

それに合わせ、その腕のアクセーー漆黒の勾玉がしゃらりと涼やかな音を奏で…そして弾けた!

 

それらは、そのまま四方の映像窓に飛び込んでいく。

その先には、もちろんそれらの札を、切符(チケット)を使える場所がある。

 

それは、たくさんの、アイドルたちの舞台(ステージ)

 

そして、それらの情報を伝える――

 

「メディア運営だと!

そんな機材や資金がどこに!?

まさか!?」

 

「そう、そのまさかです!

学園衛星の放送部を片付けたのは、このラリスキャニアですからね!

先生の学園のがらくたは、残らず有効活用(リサイクル)させていただきました!」

 

「きっ、貴様――!」

 

ラリスキャニア・アイドルラジオ局、ラリスキャニア・アイドル通信社、ラリスキャニア出版、博物館、動画・配信サイト、呪術通信アプリ【ラクルライン】を前身とする【トリシューライン】、その他諸々(もろもろ)……

 

そこには、アイドル情報を発信し、整理し、ファンやアイドルの交流や宣伝を助ける、あらゆる施設と設備があった。

 

「もちろん、出資や運営には他のアイドルの方々にも参加してもらっていて、お給料もちゃんと支払っています!

というか、それも目的(メイン)です!」

 

もともと、この地下アイドル迷宮において、専業でアイドルに専念出来る者は、ごく少ない。

 

ダンス教室を経営するオルプネのように、あるいは分身を用いて複数のアルバイトを兼業するラリスキャニアのように、副業(サイドビジネス)を持つアイドルや、経営者や会社員としての顔を持つアイドルが、大半だ。

 

アイドル関連産業の経営も普段の延長でこなす、どこかの聖姫やクロウサーのご令嬢や、すでに人生(いきざま)が、妹たちの兼業マネージャー(おせわやく)になりつつある某錬金術師などは、実はわりと珍しい例なのである。

 

そこで、それを問題解決に活かそうというのが、この案だ。

アイドルの推し活が、オタクを消耗するというのなら、それを補うシステムと雇用を創れば良い。

アイドル産業自体を拡張し、ドルオタを、そして資金難にあえぐアイドルたちをも雇う。

 

それが、ラリスキャニアによるオタク貧困化への対策であった。

 

それこそは、アイドルによるドルオタのための、ドルオタによる、アイドルのための経済。

孤児院から養老院まで、いや、ゆりかごから転生まで。

 

ありとあらゆる需要(ニーズ)とお世話(ケア)を網羅(カバー)した、無限に持続可能なアイドル活動(リ・サイクル)の念写(イメージ)映像だった。

その活動は、無限の円環、終わることのない循環(リ・サイクル)を志向していた。

 

一言で言うと――アイドルによる、雇用の地産地消である!

 

動画窓の向こうでは、あらゆる理由をつけて、色とりどりの札(チケット)が飛び交い、多くの呪力が行き交っていた。

その恵みを受け、木乃伊(ミイラ)か骨だけ再生者と見まごうほどに痩(や)せ細っていた豚たちも、見る間に太りだす。

 

それを助けるのは、二正面作戦の最中(さなか)いつの間にか姿を消していた残りの分身ラリスキャニアたち。

 

彼女たちは、専用の印刷工場で、あるいは手作業で時に呪符のような情報体の、ときに実体という付加呪的価値(プレミアム)のある札(チケット)を大量に刷(す)り上げ次々と手渡していく。

 

そして、それらを広めるのは、あらゆる業態・全ての形態の広告(CM)と無限にタイアップし、利益を生み出し続ける広告塔ラリスキャニアである。

 

そこには、完成した一つの小宇宙があった。

 

その展開においては、『SNA333』(トライスリー)、すなわち三百人を超えるシナモリアキラアイドルたちの協力が、早期に得られたのも幸いした。

 

なにしろ、彼女たちの中にはあらゆる経歴と特技の持ち主たちがいる。

一次、二次、三次、そして呪力(ミーム)操作の四次と夢界干渉の五次。

全種の産業に関わるアイドルが揃えば、それはもはやアイドル経済の成立に他ならなかった。

 

もはや、アイドルが広告や添え物をするのではなく、経済(ビジネス)がアイドルの添え物になる構造である。

 

 

 

 

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