幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
突如として現れた強大な構造、地下アイドルを支援する外部との繋(つな)がり。
だがもちろん、そんなものに怯(ひる)む女教師ではない。
彼女は、猛然と捲(まく)し立てる。
「素人がそんな大規模な商業システムを組んだところで、上手くいくはずがない!
担保はどうする?私の学園の富をいくらか掠(かす)め取った程度でお前の運営能力が認められるとでも?
運営に信用が無く信頼されないシステムが成立するはずもない増してお前などが何をやったところで無駄無駄なのだそもそも変身と謀略(ぼうりゃく)に明け暮れるお前を誰が信じるというのか?だから…」
無限に続くかのように思われる呪文。
【話題そらし】【人格攻撃】そして【長口舌による圧倒(DDOSじゅもん)】は、【詭弁】系呪文戦術の基本である。
この定型(パターン)は、多少の実力差があっても、使用者の権威の誇示(こじ)や相手の動揺を誘うことで逆転へと繋げやすい業(ワザ)だ。
更にこれは、扱い易(やす)い上に、低労力(ローコスト)で使用可能という、極めてお得な呪文戦型(スタイル)でもあった。
だが、それは勢いよく迎え撃たれる。
「問題ありません!
だってボクは最初から、全アイドルのファンですから。
ファンクラブの会員証だってありますよ。
全部一桁(ひとけた)ナンバーです」
「な、なんだと!?」
なんと、ラリスキャニアは、全地下アイドルのファンクラブに加入していた。
ライバルである他のアイドルたちの情報を入手するためなのだろうし、彼女であれば、疑似餌触手の変身&分身を駆使さえすれば、それぐらいは可能なのだろうが……
ラクルラールが叫ぶ。
「そ、そんな無駄遣(むだづか)いを!
お前本当に勝つ気があるのか!?」
そう、それはあまりにも高費用(ハイコスト)な戦法であった。
一つ一つのファンクラブ会費は知れていても、それが全ての地下アイドルとなると…それにかかる費用は、アイドルコーデを百回新調しても、なお余りあるほどになるであろう。
「もちろんありますよ!
だって、アイドルを知るにはそのアイドルのファンになるのが一番でしょう?
もちろん、今回の件でボクの正体は明かして、会員証も作り直してもらってます!
報告と同時に謝罪と、あとそれぞれの弱所とボクが考える強化プランを報告(レポート)したら、なんだか少額の違約金だけで済んじゃいましたよ」
「な、な、な…!?
せっかくの優位性を!
貴様、天稟(ギフト)を溝(ドブ)に捨てる気か!?」
それは、我欲を前提としてニンゲンを判断するラクルラールにとって、あまりにも理解不能な生物だった。
良く知っていたはずの生徒が、突然奇怪な振る舞いを始めている。
その衝撃のあまり、ラクルラールは、まるで猫か新手のシナモリアキラでも見るかのような眼差(まなざ)しを投げかけるしかなかった。
呆然(ぼうぜん)としているとも言う。
それを尻目に、新企画の提案者は怒濤(どとう)のように言い放った!
「ボクは、ボクらはこの地下迷宮に、アイドル仲間経済(チャム・エコノミー)を確立してみせます!
お互いにアイドルチケットを売り歩き、支え合ったり批評(レビュー)しあって、互いの価値をどこまでだって高めていくんです!
最近着なくなってしまった衣装(コーデ)も、贈与(ギフト)に!そしてお直し(リ・フォーム)!お色直し(リ・メイク)!再利用(リ・サイクル)!
オリジナルブランドだって、それぞれの契約ブランドに許可もらって検証(テスト)出来ます!
なんなら、古びたキャラだって、売りに出せば良い!
吸血鬼、売ります!
世は再循環(リ・サイクル)と共有(シェア)の時代です!
みんなアイドル、みんな朋友(ともだち)!」
長台詞(ゼリフ)をまくしたてる地下アイドルを、女教師は冷ややかな視線で迎え撃つ。
「企画広報演出舞台(ハコ)抑え…全てこの私が教えたことばかりではないか!
そんな猿真似(サルマネ)をこの私に売り込もうとは…気でも狂ったか!?」
ラリスキャニアは、そこでニヤリと笑った。
「まさか。
それじゃ、『キャラ被り』になってしまいます」
そして続ける。
「狂気は、リールエルバや、その代役を務めたミヒトネッセの役(キャラ)
ボクが、本役(メイン)で演じるべきものではないでしょう?」
更に、“興行主”は、手に持った万色(カラフル)な紙幣を示して曰く、
「財の価値を決めるのは、それを信じる人々の信頼…信仰です!
呪的貨幣に限らず、株や証券そして土地も!
更には、どこかの四英雄の結婚式関連財物(ブライダルしょうひん)や、この第五階層から得られるであろう富、そしてその破滅でさえ!
それら全ては、すでに取らぬ狸の皮(サキモノ)として、高額で取り引きされていると聞いています!
それが人々に認められてさえいれば、海中深く没した巨石の貨幣ですら、大切な交易(とりひき)で自在に用い、その価値を交易相手との間で保証することが出来る――それが貨幣の力、境界を超えて人を繋ぐ絆(バインド)の力なのです!」