幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第143話(その2の13の途中まで)

そして元生徒は、“恩師”に向かって言い切った。

 

「ラクルラール先生!

貴方は、自己利益ばかり追求している!

ボクらは確かに、貴女より『知識』や技量、そして呪術の腕で多少劣っているかもしれませんが――それが公益目的経営なら、貴女にも、それに機械女王とシナモリアキラにだって負けませんよ!」

 

「そう上手くいくものか!」

 

女教師は、叛逆(はんぎゃく)生徒の長台詞にも、ひるまず対抗する。

たっぷりと浮かべたその皮肉げな笑みは、ただそれだけで、互いの力関係を明示するほどの印象を、与えるものだった。

 

「そんな秩序の侵犯を機械女王が放っておくはずがない。

王権を持たぬ雑魚がいくら集まったところであの盗賊王よりみじめたらしく敗走するのが関の山!

よりによってわた、彼女と財貨で競い合おうなど敗北するに決まっている!」

 

「競い合いません!

共存し、共生します!」

「何を言う!

そんな『下』特有の建前(ぎぜん)が何になる!」

 

「これらのアイドル札(チケット)は、決して、第五階層の制式通貨の座を狙っているわけではありません!

制式通貨のような希少性は、むしろ不用です!」

「馬鹿げたことを!」

 

声を荒(あら)げるラクルラール。

それに負けじと、ラリスキャニアもまた声を張り上げる。

 

「馬鹿げてはいません!

ちょっと、手持ちの制式通貨(グレンデルヒ)が足りないときの“割引券”として、あるいは、感謝の証、互いの助け合いを促(うなが)すための“口実”として!

これらの地域通貨(ローカルチケット)は、お金を払うまでではなくても何か対価を渡したい、というささやかな渇望(ニーズ)を、埋めてくれるんですよ!

この札(チケット)は、“中和剤”です!

冷たい市場(マーケット)と温かい人間関係(コミュニティ)、対立するはずの両極をつなぐ、水と油を混ぜる石鹸(せっけん)なのです!」

 

「そんなことは不可能だ!

対立している二極の仲介なんて、それが出来るのは…出来たのはただ一人、“彼”だけだった!

そんな真似(マネ)は、お前には不可能!

そして“彼”にも、もはや二度とそんな徒労は、愚行は犯させない!

“彼”の全ては、私が独占するからだ!」

 

ラクルラールは、なぜかよく分からない比較(マウント)に持ち込んできた。

再演の失敗(バグ)か?

やはり、ラリスキャニア程度がいくら触手(えんぎ)に力を入れたところで、再現度の壁は超えられないのだろうか?

 

だがそれでも、ここで舞台が破綻(はたん)するのは不味い。

 

“興行主”は、なんとかその意味不明な台詞(セリフ)を迎撃することで、対話(ラリー)を持ち直そうと試みらる。

 

「誰だか存じませんが、やけにお知り合いにこだわられますね!

まるで、あの元女神様(ディスペータ)のようです。

どうです?

そんなにこだわりがあるのなら…先生、貴女も一緒にやりませんか?」

 

「何!?」

「何事も、大勢で一緒にやった方が、楽しいですよ!

たった一人だけだと、自分が何者なのかを自覚することすら出来ません。

一人だけでは独(ひと)りにすらなれないのです!」

 

「何を訳の分からないことを…!

私が落ち目と観て勧誘とは実に傲慢(ごうまん)だな!

上から目線は楽しいか?楽しいだろうな!

どうだこのラクルラールを見下ろす気分は!」

 

立場の差を利用し、現在得ている【弱者性】すら使いこなす、怒りの反撃。

 

それでも、元学園長は、それまではある意味平静を保っていた。

そう、地下アイドルがある言葉を発するまでは。

 

「ボクらのシステムは、確かにまだまだ発展途上。

ですがそれでも、貴女のような宿敵(ライバル)が一人や二人参加したところでゆらぎはしません!

ゲームと同じですよ。

先生がこれまでやってきた稼業(ビジネス)と同じです。

楽しさを探し続け、余暇(よか)を堪能(たんのう)する。

常に余裕や無駄が…『遊び』が無ければ満足出来ない、更には生きていくことすら出来ない。

それは、どこでも変わらない、普遍的(ぜオータイル)なヒトの業です。

そしてもちろん、遊びには勝敗や優劣も付き物。

先生が得意とする古典的な芸能知識や技術(メソッド)だって、新しい遊戯(ゲーム)と両立出来るし、むしろ、それらをしっかりしたものにするには、かえって不可欠です。

『上』も『下』も、それが遊びの中ならきっと共存出来るし、楽しく共に生きていけるのです!

どうですか?

ボクらと一緒に、遊びませんか?」

 

その時、女教師に異変が生じた。

まさに、“異変”としか言いようがないほど、急激な変化。

突然、その態度が急変したのだ。

 

現れたのは、まるで感情が抜け落ちたような、無表情。

 

そして、そこから猛烈な怒声が、間欠泉(かんけつせん)のように、一気に噴(ふ)き出したのだ。

それは、ちょうど誘いの体勢にあった地下アイドルを、直撃する。

 

 

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