幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「止(や)めろ!
私の経済活動(ビジネス)を、二度と『遊戯(ゲーム)』と呼ぶな!
違う、違う、違う!
私は、違う!
あいつではない!
ゲームなど経済や市場の付属品、下位の卑小なカテゴリに過ぎんのだ!
私こそが本物!
このラクルラールは唯一絶対!
自律し自立した不動にして確固たる存在なのだ!」
ラクルラールの口調はどんどん早口になり、その言葉も、段々と支離滅裂になっていく。
「させるか!
もう二度と私は負けん!
最後の最後で肥大化した貧乏神(アンフォーチュン・スピリット)を押し付けられたりせっかく同色揃(そろ)えた土地や宇宙鉄道女王の座を奪われたりなどもうしない!
開拓地からの逆転帰還も許さない!
同じ過(あやま)ちは二度と繰り返させぬ!」
そしてトドメに、元学園長は、とびきり意味不明な宣言を叫んだ。
「アキラくんもプリンも全部全部、私のものなんだから!」
「えっ?
プリン?
シナモリアキラが?
痛風?
新手の吸血鬼?」
謎の発言を耳にした地下アイドルは、戸惑(とまど)うしかない。
理解出来ない。
相手の依(よ)って立つ文脈が、まるで分からない。
しかも、相手が耳を貸さないせいで、その言葉はどうしても一方的になってしまう。
密(ひそ)かに歯噛みするが、今更どうにもなりはしない。
ここまで来たら止まることは出来ないし、戻ることは尚更出来ないのだ。
もはや、ラリスキャニアは、ただ進むしかない。
地下アイドルには、恩師を説得するに足るだけの弁舌が、『呪文』の力が不足していた。
だって彼女は、あの慰霊祭を救った歌姫なんかでは、決して無いのだから。
だが、せっかく固めたその覚悟を眼前からの唸(うな)り声が断ち切る。
「それを否定する者はーー」
それに続いて、くるみを割るような音が聞こえた。
もちろん、こんな夢の端で、そんなものを食べる者がいるわけもない。
その真相は、女教師の口元からこぼれ落ちた、あの白色が静謐(せいひつ)に物語っていた。
どんな広告にも載っていないほどの、曇(くも)りなき純白。
伝え聞くところによれば、上流階級は、ジョギング、ジム、そしてその部位の研磨によって、己の価値を誇示(こじ)すると言われている。
骨に似て更に輝き、雲や雪にも勝(まさ)る輝きを放つ、誰もが見慣れたその物体。
その正体は、歯だ。
女教師は、誇るべき自らの一部(パーツ)を、噛み砕いていた。
ラクルラールは、激怒していたのだ。
おそらくは、ガラクテンこずえとの戦いとは、比較にならないほど。
更に、転がり落ちた廃品(がらくた)に続き、願(のろ)いをかけるように、怒声が追いかける。
「この私が打ち砕く!
たとえ何者であろうとな…!」
そして、教師と生徒は、声を揃(そろ)えた。
「「マジカル・アピールだ!」です!」
そう、今度こそ最後の決戦が始まるのだ!
激怒した魔女と、地下アイドルの戦いが!
両者の間で闘争心が空気を熱し、可視化出来るほど強大になったアイドル闘気(オーラ)の風がぶつかり合う…!
その時、“興行主”は、己のシステムに対する強大な圧力を感じ取った。
何者か――と言うかまず間違いなく目の前の“恩師”が――が、強引に介入を図(はか)っている。
「これは…!
何かが『知識』の断章に干渉している!?
ラクルラール先生には、王権の資格があるということなのか…!?」
驚愕(きょうがく)する地下アイドル。
だが、誰もそんな彼女の反応(リアクション)を待ってはくれない。
待ってくれる、わけがない。
今こそ、時をもを置き去りにする勢いで…女教師は一気に攻め立てて来る!
ラリスキャニアには、何も分からない。
それでも、たった一つだけ確かなことは、
「燃え尽きろマッチ売り!
夢見人は、現実にすり潰される時間だぞ!」
もはやここから先は、完全に容赦(ようしゃ)無用。
「そして当然こうなる貴様の甘ったるい計画などしょせんは画餅(がべい)に過ぎんのだ!」
一切の呪文(ことば)が通じない戦いが始まる、ということだ!
まず、絡みつくのは、青い糸。
元学園長の手先から髪から、それは霧雨のように放(はな)たれる。
空中を走る無数の動きが描くのは、輪郭(りんかく)だけで表現された社会の縮図だ。
効率の追求、目的と手段の逆転。
利益を追求するあまり、過酷(ブラック)企業化する砂糖農場(プランテーション)
ラクルラール農場が、栄華を誇る。
けれど、その成功には影が差す。
それに楯突く、不純物(ノイズ)もまた現れているのだ。
それは、約束された破滅、歪(いびつ)な統治によって準備された反乱(クーデター)
反乱を起こす再生者(ゾンビ)・労働者(プロレタリア)抵抗軍(レジスタンス)の出現である。
敵味方に分かれ、槍や原始的な杖を構えて殺し合う二つの勢力。
そして良く見れば、そこには更なる異常があった。
上司と部下は、共に青い糸で吊られて動いていたのだ。
それぞれ自らの意志と利害で対立しているはずの両陣営は、その実(じつ)、どこの誰とも知らぬ超越者たちの手駒として扱われていた。