幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第146話(その2の15~16の途中まで)

実を言うと、このグループは解散後それぞれサイバーカラテに加入し、別々に音楽活動を行っている。

今回も形だけは合奏してはいるものの、その実態は、四グループによる対バンに近い。

 

そんな滅茶苦茶な状況を成り立たせているのは、多様な価値を媒介するラリスキャニアのアイドル地域通貨(ローカルチケット)の存在、そして、言わずとしれたサイバーカラテの力であった。

 

旧『Frozen/Torch』メンバーは皆、お互いの顔すら見ていないが、代わりにそれぞれに対応するちびシューラとは良くコミュニケーションをとっていたのだ。

 

とりわけ、白骨女性が忙しい。

彼女は、複数のちびシューラに取り囲まれ、何やら慰(なぐさ)めを受けているようだ。

ちびたちの服装が皆似通っているところをみると、一種のグループカウンセリングの再演だろうか。

キーボード奏者は、複数の鏡や画面に囲まれて、それぞれ別の姿やSNSに、同時に関わっているようだ。

 

例(たと)えば、その一例として。

白骨女性は、鏡の中で、もはや出すことが出来ないはずの涙を、盛大に流していた。

また別の鏡では、漫画やエッセイを書き綴(つづ)り、そこに、贖罪や己が傷を癒す物語を見い出そうとしている。

 

深く悩み苦しみ、泣き崩れる彼女が本当なのか。

それとも、悲惨な体験とそこからの立ち直りを売りにして、SNSや動画サイトで序列を競っているのが本物なのか…おそらく、その問いは無意味だろう。

 

そのどちらもが、彼女なのだから。

哀れさも、それをも利用せんとするグロテスクな商業主義も、どちらも同じコインの裏表でしかない。

 

いずれにせよ、人心という猫箱(ブラックボックス)の外側では、数値と人気が全てを決定する。

同情、炎上、賞賛、批判。

それら全ては,再生回数や評価となり、視聴人数は急激に上昇していく。

 

そして、人間(ロマンカインド)、景気が良いときは多少の問題は気にしなくなるものだ。

再結成したバンドは、加熱する評価を前に、往時の輝きを取り戻しつつあった。

そこにラリスキャニアが主張した『絆』は全く無い。

だがそれでも、そこには調和と…独特の協力関係が生じていた。

 

そこへ、炎刺青(ファイアペイント)と火炎放射器から、暗黒の炎が放たれて青い糸を焼き尽くし、天に舞う三人組の少女たちが、降り注ぐ喜びの歌で、悲惨な状況を解体していく。

 

そして、本来あり得ない共演(コラボ)にそれぞれのファンたちが熱狂し、応援団たちやオタ芸人たちも、アイドルに負けじと互いに張り合いながら、その業(パフォーマンス)の質を高めていった。

 

また、普段は対立し競い合ってていたはずのアイドルたちの共闘は、それぞれのアイドル世界観の侵食、融合、それに相互強化をもたらす。

 

それらの空気(ムード)は、擬似的な『浄界』となって、ラクルラールが織り出した“過酷な社会”をどんどんと押し返していく。

 

もちろん、中には対立を止めないアイドルたちも存在した。

普段からサイバーカラテを常用する『SNA333』と、逆にサイバーカラテを避けがちな『アマランサス・サナトロジー』である。

一度は吸収され、今も実質的には子グループである後者と前者は、万人が認めるライバル関係にある。

その衝突や摩擦(まさつ)は、日常茶飯事。

そんな彼女たちには、今更、サイバーカラテによって大きな変化は起こり得ない。

 

だが、それはそれでやりようはある。

生粋(きっすい)のドルオタである“興行主”は、当然彼女たちの性質と関係性を、システムに組み込んでいたのだ。

 

ほら、観るが良い。

 

二つのグループは、互いに信号弾を撃ち合っていたはずが、その弾丸も、いつしか応援(エール)に変わっている。

それぞれが、ライバルグループへの威圧(アピール)に熱中したことで、必然的に、その外部であるラクルラール世界からの攻撃が、邪魔になっていたのだ。

そのため、“まず邪魔者を片付ける”ということで、二つのグループは結果的に共闘を果たしたのである。

 

ある二人は、背中合わせになって回転しながら光弾を撃ち合い、また別の二人は、相方がマイクスタンドから打ち出す砲撃呪術を、光の鎌で敵陣に打ち込んでいる。

 

当然、ラクルラールは巨人で受ける。

それは強大なる力の証明。

 

いかにアイドルたちの放つ圧力(パフォーマンス)が多様で強力であろうと、そんなものは五月雨(シャワー)に、等しい。

 

山脈の如(ごと)き威容は、びくともしない。

太古より積み重ねた歴史、極めた技能(スキル)の顕(あらわ)れは、とうの昔に神域に達している。

青銅級程度のアイドルの表現(アピール)など、どれだけ合わさっても、どれほどのものでもない。

 

そのはずだった。

 

だが、

 

「なんだこの重みは…!

単なる疑似餌(ぎじえ)分身ではないのか!?」

 

それらのアイドルたちの総力(きょうえん)は、確かに巨人を軋(きし)ませていたのだ…!

 

そして女教師の言う通り、それらの分身は、決してただの模倣ではない。

なぜなら、それらは……

 

「許可を取っていますからね!

公認仮装(コスプレ)、シナモリアキラふうに言えば、本人の意志と呪力が乗った、遠隔呪的発勁です!」

 

と、いう絡繰(からくり)であるからだ。

 

 

 

 

 

 

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