幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第148話(その2の16~17の途中まで)

それは、呪いだった

恩讐、愛憎、無関心と執着、乖離 信仰と離脱

親密と離人、すべての関係性、信念、思想、それらを表現し、つねにすでに再加工し続ける『呪文』(ことば)

、それらの根源たる認識と、基盤たる身体。

 

そのすべては、善であると同時に悪であり、どうしようもなく正しく、また整えようがないほど間違っていた。

 

それは、あらゆる関係性、あらゆる束縛、全てのものが互いに干渉し合い、痛みと傷,そして悲しみや喜びを交換し合う心の市場。

 

けれど、だからこそ世界は――どこまでも呪いに満ちて美しかったのだ。

 

しかし、その呪いの輪に加われなかった、加わろうとしなかったアイドル教師も、ここにいたりする。

 

「理解できん!

狂っているのか!」  

 

言わずと知れたラクルラールである。

 

そして、

 

「させるかぁー!」

 

ここへ来て、ついに女教師が更なる攻勢に出た。

 

それまで彼女が、手の中で弄(もてあそ)んでいた網状の糸が、たった一挙動で、塔か槍のような形に変わる。

 

それに応じ、宙空に無数の線が走った。

そして重なる。

ケーキにチョコレートで網をかけるように、縦横(じゅうおう)に走る糸は、重なる刃の篩(ふるい)となり、敵対者を、挽肉(ミンチ)にしようと押し寄せていく…!

 

其(そ)を名付けて、【線の嵐・圧斬】

 

天才(もてるもの)のみが可能な、応用強化(アレンジ)攻撃呪術が迫る!

 

だが、その対象たる地下アイドルは、両手が黒糸で塞(ふさ)がっていた。

その黒糸は数多(あまた)の方角へと延びていく、巨大な網(ネットワーク)と接続されている。

 

10回転目のマジカルアピール『再演共演の絆』は、ヒトとヒトとを、変形させた触手を以(も)って繋(つな)ぐ業(ワザ)である。

つまり、攻撃や切断と、非常に相性が悪い。

 

しかも、このシステムの運用者は、その運営のために全力を注がねばならない。

一流の呪術師ならいざ知らず、単なる地下アイドルの処理能力では、こんな巨大なシステムを運用することは、極めて困難だからだ。

 

思いつきで、壮大な構想を練ってはみたものの、このシステムの“興行主”は、ネット小説にしか出てこないような全能神や、その霊媒などでは決してないのである。

 

余力も能力も、不足して当然。

 

結果として、自力での防御も回避も困難になるのも、また必然であった。

 

無防備な地下アイドルに、強烈な攻撃が降りかかる!

ラリスキャニア、危うし!

 

だが、それは寸前で防がれる。

それをなしたのは、新たなる腕。

 

しかし、そうは問屋が卸(おろ)さない。

ラクルラールは許さない。

 

間髪(かんぱつ)入れず、次の連撃が放たれる。

地下アイドル目掛け、新たなる網の刃が殺到。

 

今度こそ、あっという間に、腕は細かく切り裂かれた…と思いきや、それはめん(スパゲティ)のようにバラけ、無数の触手となる。

 

放つ業(ワザ)は、こちらも同じく【線の嵐】

空中を切り刻む無数の青い糸に対し、こちらも同じく無数の黒ーー限りなく細く研ぎ澄まされた漆黒の触手の群れが迎え撃つ。

 

業(ワザ)自体、その単発の威力ではラクルラールに劣っている。

けれど問題無い。

 

その腕は、一本や二本ではないからだ。

何本もの腕が唐突に現れ、次々と糸状の細い触手にバラけ、迎撃に加わっていく。

 

そして、激突。

 

音速を超えた糸の斬撃が大気を弾き、風船でも割ったかのような、軽い音を響かせる。

 

パァン、と。

 

打撃の音が、宙空を渡る。

相殺の成功を、知らしめている。

 

迎撃、成功。

 

ただ、それに用(もち)いられた腕は、ラリスキャニアの身体からは生えていなかった。

分身の身体からも、生えていない。

 

それが出現、いや“生成”されたのは……

 

「なんだこれは!

誰の仕業だ!」

 

女教師の怒声が響く。

その声に応(こた)えて無数の動画窓が明滅し、辺(あた)り一面に張り巡らされた黒い網が、生物のように脈動する。

 

それは、地域通貨網(ローカル・チケット・ネット)それ自体からの、反撃だった。

 

迎撃しているのは、システムに参加している全アイドルなのだ。

 

魔将エスフェイルの反射防御の応用。

『青い鳥』(ペリュトン)の擬似細胞を使った、生きた機構(システム)である。

 

グレンデルヒ戦やラクルラール戦、死の女王島で活躍したシナモリアキラロボがそうだったように、第五階層では、このような協力呪術儀式は、わりかし普通(ポピュラー)なのだ。

 

但(ただ)し、それを成立させること、機構を演じる者の負担が軽いなどとは…誰も言っていない。

 

こういった高度な呪的システムには、普通は端末、あるいは仮想使い魔やレゴンなどの使い魔を使うものである。

 

それをなぜ、触手による人力再演にこだわっているかというと…

 

(これでも入出力の感度は、通常のせいぜい一千倍。

今や、第五階層そのものと化したシナモリアキラなら、おそらくこの三倍以上の刺激を常時受け取っているはず――負けるわけにはいかない!)

 

ラリスキャニアが抱く、宿敵(ライバル)としての自負、対抗心。

そういった、情念(じじょう)であった。

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