幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第149話(その2の17~18の途中まで)

パァン!

パァン!

 

破砕音は連続する。

 

青い糸が、回避を阻害し威力を高めるため弧を描いて接近し、黒い糸もそれに対抗するため同様の軌道で相殺を図(はか)る。

攻撃と迎撃は連続し、対となったそれらは疾風(かぜ)として夢空間を覆い尽くす。

 

いつしか、嵐が巻き起こっていた。

 

振り下ろされる無数の線の斬撃、蝶の羽ばたきにも似た二人の攻防は、中心に相殺の空白という『嵐の目』を持った巨大な旋風を形作っていたのである。

 

永久に続きそうにも思える、高速の連撃。

相殺の乾いた打撃音は連続し、拍手となって響き続ける。

そしてそれは,瞬(またた)く間に喝采の嵐となって、空間全体を塗り替えていく。

 

嵐は、吹き荒れ、ただひたすらに続いていった。

 

もはや、それは我慢比べ。

どちらが先に呪力が尽きるか、あるいは、相殺に失敗して破滅するか。

 

互いに限界を競い合う、耐久戦。

互いの全力を尽くした、技芸の綱渡りである。

 

この場合、失敗(ワンミス)は、死を意味していた。

 

だが、その終わりは、意外とあっけなく訪れる。

ラクルラールもラリスキャニアも、そのどちらもまだ限界を迎えてはいない。

 

にも関わらず、この演目は唐突に終わってしまった。

 

師弟二人の変形的な対決に、耐えられないものもあったのだ。

ラクルラールが従えていた、校舎の巨人である。

 

いくら超一流の呪術師、絶大な呪力と技術を誇る紀人が創ったといっても、巨人の材料はありあわせの瓦楽多(がらくた)である。

 

そんな素材で、こんな猛攻を耐えきれるわけがない。

だから、それは不意に巻き起こる土砂崩れのように。

 

ある瞬間、巨人はあっさりと砕け散った。

 

罅(ヒビ)が入り、亀裂が走り、割れ目が大きくなり…そして、くす玉のように弾け飛ぶ。

まるで、誰かを、あるいはこの場を共有する全ての人びとを、残らず祝っているかのように。

 

巨人の消滅。

それは、女教師の保有戦力が大幅に低下したことを意味する。

だが、それで終わるわけも無い。

 

 

 

 

その時、何かが空間を震わせた。

 

最初に異変に気づいたのは、ウサギたちーー月の民のアイドルたちだった。

 

彼女たちは、その鋭敏な聴覚が幸(さいわ)いして、いち早くそれに気づくことが出来たのだ。

 

いや、この場合“災(わざわ)いして”と、言うべきだろうか。

ウサギたちは、残らず倒れ伏し、白目を剥(む)いている。

 

当然、即座にイメージ借用契約が発動、アイドルイメージを崩しかねない肢体(したい)は、適当なぬいぐるみに置換されたが…それはそれとして、異常事態が発生していることには変わりない。

 

警報!(アラート!)警報!(アラート!)警報!(アラート!)

 

攻撃を受けている。

それも、全くの不可視の干渉を。

 

ただ、ウサギたちのおかげで、脅威の正体だけは即座に判明していた。

 

音だ。

強大な音波。

 

それも、そうした攻撃への対策を万全にしているはずのウサギの防壁すら、容易に突破するほどの威力。

規格外の攻撃呪術。

 

同時刻、“興行主”は、感知していた。

せっかく張り巡らせた黒網(ネットワーク)のあちこちが、次々と断線していくのを。

 

音とはすなわち、万物を伝達する衝撃の波。

むき出しの黒糸を破壊するには、最適な破壊手段である。

 

これは間違いなく、追い詰められたラクルラールの反撃であった。

 

問題なのは、そんな音を一体どうやって発生させているのか、ということ。

今回のケース、たとえ解析を専門とする呪術師であっても、一見しただけでは、真相に気づくのは不可能だったかもしれない。

ただそれは、その人物が、第五階層以外の住人であったなら、の話だ。

 

現在、当の女教師はと言えば、上体をのげぞらせ、宙空に手を広げて蠢(うごめ)かせている。

まるで服毒したかのような、掻(か)きむしりのポーズ。

 

だが、そんなわけがない。

あれは、ラクルラールなのだ。

 

いかに劣化した再演体(シミュレート)であったとしても、アレが、たかが生徒たちに追い詰められた程度で、自害を試(こころ)みるわけがない。

その自尊心(プライド)と傲慢(ごうまん)さは、天井知らず。

元生徒たちの間では、世界槍でさえその高さには到底敵(かな)わないと評される、不遜(ふそん)極まる魔女。

 

それが、何か怪(あや)しげな動きをしているとなれば、十中十九の割合でこちらへの呪いに違いない。

 

その件については、全ての第五階層住民(かのじょのもとせいと)が同意見だったろう。

それは、今更意見を確かめ合うまでもない、不朽(ふきゅう)の真実であった。

 

ゆえに、分析は対象の再視認と同時に、即座に実行されていた。

もっとも、今回の仕掛け(トリック)については、わざわざ調べるまでもなかったのだが。

 

もちろん、伝達網(ネットワーク)が寸断されつつあるなかでも、サイバーカラテ(シナモリアキラ)系アイドルたちの分析報告(レポート)が、続々と届いてはいる。

 

だが、これならば、ラリスキャニアでも一目で分かる。

 

なぜならそれは、芸能関係者(アイドル)にとって、ひどく馴染(なじ)みのある原理だったからだ。

 

 

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