幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

151 / 272
第151話(その2の19の途中まで)

ラクルラールが創り上げた“音の壁”は、物質的実体を持たない、一種のエネルギー障壁である。

 

その強度は、女教師の使用呪力と演奏技術そして音量に比例し、その破壊は、同等以上のエネルギーを用いなければ、絶対に不可能。

【静謐】で除去するにしても、それなりの呪具や呪文技術などが必要となる、高度な呪的防御なのだ。

 

けれど、その条件はほぼ偶然のうちに、満たされていた。

それは、ラリスキャニアが、地下アイドルオタクが肌身離さず持ち歩いていたもの。

そしてつい先程まで、彼女が愛用していたもの。

すなわち、この練習ライブの“興行主”が投擲(とうてき)したのは、アイドル情報を記録した円盤、その欠片(かけら)である。

 

「だ、だがそんなもの!」

 

そのような攻撃に対しても、対策は、当然行われていた――はずだった。

 

逆位相の波長による、音波の相殺。

丁度、どこかで誰かがやったように、それは音響系呪術に対する特効策であった。

 

ラリスキャニアが投げた円盤にいかなる力があろうと、

その楽曲を特定さえすれば、呪力の力量差(ちからおし)を以(も)って、効果を打ち消すことなど容易(たやす)いこと。

 

そのはずだったのだ。

 

だから、女教師は、勝利の事実を宣言した。

するはずだった。

だが…

 

「貴様の使用楽曲程度残らず覚えられない私だと思ったか!」

「もちろん思っていませんよ!

ほら!」

 

その時、不思議なことが起こった。

 

それまで障壁は、限界まで水を入れたコップのような、力に満ちた状態を示していた。

その力場は、未(いま)だに空気中を漂(ただよう)巨人の残骸どころか、その塵(ちり)一粒(ひとつぶ)すら、寄せ付けない。

かえって退(しりぞ)けた塵で、ドームを形作る始末だった。

 

だが、そこに。

チャポン、と。

 

浮かぶ波紋。

 

更に、水を注いだ氷のような、亀裂の音が走る!

それこそ、防壁に、硬貨のような物体が、いくつか入り込んだその証(あかし)。

そう、本来なら容易(たやす)く防がれるはずの円盤が、あっさりと防壁を貫通していったのだ…!

 

「こ、これは!

お前の円盤ではないのか!?」

「はい、違いますよ先生!

これは、ボクの同盟者(なかまたち)から託(たく)されたものです!」

 

そう、それはラリスキャニアに反撃を託した、仲間たちの円盤であった。

先程の通信は、その攻撃への使用許可の確認であったのだ。

とは言え、

 

「だからどうしたっ!

その程度で勝ったつもりか?」

 

そう、本来ならこの程度は、なんでもない。

このような強大な防壁を完全に無効化するには、どうしてもその防御力を超えるほどの威力…呪力なり破壊力なりが、必要とされるからだ。

多少防壁を抜いた程度では、あまり意味がないのである。

 

必要とされるのは、高価な攻撃呪具、高度な呪術戦(ハッキング)能力、そして強力な呪術。

そんなものを、一介(いっかい)の地下アイドルが、持ち合わせているわけがない。

少なくとも、ラリスキャニアにとっては、どれも縁がないはずであった。

彼女には破壊力などほぼ皆無だし、高度な呪術を教えてくれるアテも同じく皆無だった。

 

――ただ一つの例外、いや一対の教師たちを除いては。

 

そう、たった一つだけ地下アイドルが目撃し、自ら体得…その身を以(も)って覚えることが出来た呪術も、存在したのだ。

それは、他でもない、目の前の“恩師”が教えてくれた手段であり……

 

その名も、

 

「11回転!予言されし終端(ブレイスヴァ)の魔弾!」

 

そして、地下アイドルは、出し抜けに自らの眼窩(がんか)に指を突っ込んだ。

 

もちろん、ただの演技だ。

いかに、粘土のような身体(ボディ)を誇る『青い鳥』(ペリュトン)といっても、そう容易(たやす)く、自分を破壊したがるわけがない。

 

目的は、再演。

予言王の力を模倣した、魔弾の発射である。

 

その威力は、折り紙付きであった。

なにしろ、まさに眼前の“恩師”が愛用していたのだ。

強度についても、超越者ニ柱の激闘(ラリー)に耐えるほどのもの。

 

ならばこそ、この決戦に用いるのに、これ以上相応(ふさわ)しい業(ワザ)は、そうはあるまい。

 

当然、その発動には大量の呪力が必要とされるが…ラリスキャニアは、“前世の克服”という伏せ札を用いて、これを解決。

 

彼女は、前世を、その悪名と罪業を受け入れる。

受け入れて、超えていく。

それは文脈となり、やがて勝利へと至るための布石(フラグ)となって地下アイドルに力を与える。

 

これにて、本来の力量を超える絶技も、発動可能となったわけだ。

ラリスキャニアが、とりだしたその偽(いつわ)りの“眼球”を投擲(とうてき)すれば、それは十字の光を放ち、魔弾となって飛翔する。

 

そして、何か絶大で恐ろしい気配を放ちながら、あらゆるものを消し去る魔弾として、目の前の相手に襲い掛かるのだ!

 

とはいえ、これは本来、ラクルラールが考案した業(ワザ)である。

だから当然、

 

「もう一度繰り返そう勝ったと思ったか?こんな業(ワザ)容易に対処可能だ!」

 

そう叫ぶや否や、女教師は相手と全く同じ業(ワザ)を放った!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。