幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第152話(その2の20の途中まで)影の太陽、栄光を追うもの

二つ目の魔弾が、迎撃のために宙を飛ぶ。

いや、よく見なくても、その二発目は全く同じではなかった。

 

より大きく、より力強く、そしてより美しい輝きをそれは放っていた。

その原因は、考えるまでもなく師弟の技量の差に、由来している。

しかも、

 

「最後の講義だ傾聴せよ!

これが『倍返し』だ!」

 

そこに加え、こんな展開が待ち構えているのも、また道理であった。

 

思い上がった生徒に対し、同時に二つもの魔弾が、懲罰(ちょうばつ)として撃ち返される!

“ラリスキャニアの眼球”を模倣しているせいか、それ以上は放っては来ないが、二倍の数はそれだけで大いなる脅威である。

 

しかも、これらは――前述したように――“興行主”が放ったものに比べ、格段に完成度が高い。

ゆえに、再演媒体としてもこちらの方が、圧倒的な優先度を誇るのだ。

 

そしてそれは、引喩と参照、すなわち類感の呪術を行ううえで、決定的な格差の存在を意味していた!

 

だがその時、空間に残る動画窓たちは、目撃した。

 

「予測済みです!」

 

そう、もちろん、それも予測済みだった。

既知の手段を以(も)って攻撃すれば,同じく既知の応手によって迎撃されるのは、理の当然。

ゆえに、反撃の必然性は、おぼろげな前世の記憶よりも遥かに明確だった。

 

何より、“恩師”の手強さを、その生徒が知らないわけがない。

よって当然、急拵(ごしら)えとは言え、対策は全力を以(も)って用意されていたのだ。

 

実のところ、この魔弾は単なる囮(おとり)

相手を驚かせ、その対処に集中力(リソース)を割かせることが、本来の目的である。

要は、次のより強力な業(アピール)を放つための隙さえ作れれば、それで良い。

 

本命は、その次。

 

だが、それは困難な挑戦でもあった。

放つためには、相当な集中力が必要とされるのだ。

 

数多くの業(ワザ)を模倣してきたラリスキャニアと言えど、こればかりは、失敗の可能性がかなり高い。

 

なにしろこれは、古代ヒュールサスから伝わる神話級の演技なのだ。

 

その名もーー

 

「12回転!世界破滅(ほろぼ)す火竜の吐息!」

 

未だ起こらざる世界の滅亡を、再演する業(ワザ)なのである。

そこで地下アイドルは、両手を振り払うような、独特の演技を放った!

 

それを見て、女教師はせせら笑う。

 

「馬鹿な!

『夜の民』に炎の業(ワザ)など使えるわけがない!」

 

だが、ラリスキャニアは、それに一歩も退(ひ)かずに言い返す。

 

「いいえ、それはもはや間違いです!

ボクらは既に、新しい神話の時代に生きているのですから!」

 

その言葉と同時に、異変が生じた。

空気中に漂っていた塵や飛散した破片が、まるで何かに飲み込まれるように、ぽっかりと消えていくのだ。

 

だが、何も見えない。

ブレイスヴァのような、強大な気配も感じられない。

とっさに下を確認したラクルラールは、異変の正体に即座に気づく。

探していたものは、そこにあった。

それは、見えざる影を落とす、巨大なる暗黒の太陽。

 

つまり――

 

「影の炎だと!?

その業(ワザ)は!」

 

「そう、これはかの『守護の九槍』の新たな第九位の再演でもあります!

英雄アズーリアの力なら、貴女の強引な教育暴力なんて、一切寄せ付けません!

英雄はみんな、古びた教え、先入観なんてあっさり超えていく!

ボクは、貴女という神話を超えるアイドルに!

闇の太陽になってやります!」

 

それは、『夜の民』では本来成し得ない謎の古代演技“世界滅亡の炎”(せかいえんじょうおち)を、再演するための苦肉の策にして、逆転の一手。

 

なんと地下アイドルは、アストラル界を主体とする炎を放っていたのだ。

『夜の民』もそうでない者も入り混じるこの夢世界においては、半(なか)ば実体として表現される、漆黒(しっこく)の炎を。

それは、まだ市井の人々が、誰も見たことがないアストラルの奇跡。

『夜の民』にも操作可能な、『炎』の具現化。

英雄アズーリアが成し遂げたという、前代未聞の偉業。

 

ラリスキャニアの持つ強い意志、英雄に追いつき、自らもまた舞台の英雄たらんとするその志こそが、見事、この業(ワザ)を成立させたのだ!

 

もちろん、再演に必要な情報は、その多くが不足していた。

 

確かに、アズーリアは新進気鋭の英雄である。

そのメディアへの露出は多い(シナモリアキラ的な意味ではなく)

 

とは言え、その戦術や特技となると、それはもはや軍事機密の領域なのだ。

彼女の師匠が上級言語魔術師であることもあり、その詳細は、クロウサーの邸宅のように雲に包まれている。

 

けれど実質的には、あまり問題は無かった。

なにしろ、言ってみれば舞台でのお遊戯(プレイ)である。

 

それに古来より、演劇それも英雄劇ともなれば誇張や捏造(ねつぞう)は、むしろ当たり前。

 

そこに描かれる英雄像が、九流念写写真週刊誌より更に不正確であることすら、ざらである。

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