幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
よって今回は、とりあえず近そうな例を参考にイメージを補完して、役作りをすることにした。
幸いにもラリスキャニアには、炎や太陽に縁があり、更に『青い鳥』(ペリュトン)にもある程度近い身近な例に、心当たりがあった。
アイドル迷宮の元二位、ヒュドラボルテージである。
”鳥と鶏、夜と朝。
やや無理がある準(なぞら)えではあったが、その類似性はなんとか機能した。
その結果こそが、この暗黒の太陽であった。
誰も見たことが無いのに、なぜか“有名人っぽい印象を与えるイメージ。
これぞ、彼女の決意と覚悟の顕(あらわ)れたる表現(アピール)
言わば、未知の再演という矛盾である!
誰もが心のどこかで待ち望み、しかし実際の目撃者はほぼ皆無だった、この炎。
それは運良く、斬新で魅力的な表現(アピール)として世間に受容されていた。
対戦するアイドルたちを取り囲む動画窓が、それぞれ過敏な反応を示して、それを褒め称える。
無数の声援に囲まれ、影炎の太陽はますますその威力を増し、ラクルラールを焼き尽くさんと、突き進んでいく…!
しかし、まだ足りない。
「やっぱりそう来ますか…!」
ラリスキャニアは、予測していた。
この業(ワザ)を以(もっ)てしても、相手を圧倒することは不可能である、と。
果たして、予測は的中した。
目前の女教師も、また彼女と同じような構えをとっていたのだ。
「よりによって、この私にその業(ワザ)を使うとはな…!」
そしてすぐさま、広がりゆく熱波が動きを止める。
それは、停止。
原典に心当たりが無い者でも、一目で分かるその劇的な効果。
それ即(すなわ)ち、全てを凍(い)てつかせる封印の演技に違いない!
「まさか『氷血呪』!?
そんな希少呪術(レアスキル)の再演が可能だなんて!」
そもそも、誰もそんな現象を知らなかった。
まさか、影太陽を『氷血呪』の封印によって、制圧することが可能だとは。
確かに、『氷結のコルセスカ』は第五階層に限らず世界中で人気の役ではある。
それが、世界を滅ぼす火竜の封印者である以上…その特技の再演によって、古代の文脈がよく分からない破滅(オチ)に余裕で対抗出来たとしても、全くおかしいことではないのかもしれない。
確かなことは、ただ一つ。
眼前の『守護の九姉』は、そんな手段でラリスキャニア必殺の演技をじりじりと、しかし、確実に押し返しつつあった…!
「この私に、あいつの真似(マネ)を強制させた罪…万死に値するぞ!」
しかも、相手はまた何やら、よく分からない理由で激昂(げっこう)している。
けれど、
「ボクにだって多少の『知識』くらいはあります!」
「『知識』だと?そんな半可通(はんかつう)の生兵法(なまびょうほう)、何になる!」
だが、それでも地下アイドルは、懸命に研究してきたのだ。
通常のラリスキャニアは、アイドル以外の物事には、全く興味を持たない。
だが、アイドル関係者については、その例外。
熱心に研究している。
『空組』や機械女王こと、瓦楽天(がらくてん)コズエのことを考えれば、そうした人々が後からアイドルデビューする可能性も、決して否定出来ないからだ。
だから、当然…
「あの英雄のことも、しっかりアイドル研究しています!」
「巫山戯(ふざけ)るな!
何が出来る!貴様程度の解釈力で!
そんな破れかぶれ、いつまでも保(も)つわけがなかろう!
見ろ!
早速、身体が崩れ出しているぞ!」
あざ笑う女教師。
それに対して元生徒は、決意を込めて叫び返した。
「…その程度のこと、先刻承知!
だったら一刻も早く、貴女方を打ち倒すまでのことです!」
「出来るものか!」
「いいえ、やってみせます!
ボクの、いや、ボクたちのマジカルアピールで!」
もはや猶予(ゆうよ)は無い。
限界を迎える前に、対戦相手を撃破しなければ…!
けれどその時、地下アイドルの身体が大きくよろめいた。
呪力の過剰消費…だけではない。
彼女は、ついに生物としての限界、アマチュア呪術師としての限界に、到達してしまったのだ。
これまでの演技の限界を超え、人生の絶頂に達したラリスキャニアの業(ワザ)は、その身体に多大な負荷をかけていた。
『猫の国』(いせかい)の言業(コトワザ)に曰く、『亢竜悔いあり』
頂点まで昇りつめた者は、必ず衰え、後悔すると言う。
地下アイドルは、いまやその言業を体現する運命(さだめ)にあった。
だが、それで良いわけがない。
問いかけは、まだ続いているからだ。
舞台が、問いかけている。
踊り(ダンス)の動き(パターン)が、そして観客が。
ラリスキャニアを見つめている。
それがお前の限界か、と。
諦めていいのか、と。
そんなわけがない。
だから、抗え、どこまでも。
小さな竜巻のように。
世界に嵐を起こす、異界の蝶のように。