幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第154話(その2の21~22の途中まで)

だから、“興行主”は残る全ての力を振り絞ってあがき続けた。

 

「いっけええええー!」

 

「まさか…まだ続けられるのか!?」

 

けれど、それにもやはり、限界がある。

 

現(げん)に、今もじりじりと押し返されているのが分かる。

このままでは、押し負けてしまうことだろう。

まだ、足りないのだ。

 

いくらラリスキャニアが、地下アイドルで最(もっとも)といっても…積み重ねたモノ、年季の長さや努力の量では、不死の魔女に敵(かな)うべくもない。

その女神としての“格”に、敵(かな)うはずもない。

もっともっと、演技に呪力(きもち)を込めなければ…!

 

「自分(ボク)たちの未熟さくらい、当然熟知しています!

だから!」

 

だからこそ、地下アイドルは、全力で模倣する。

英雄の気持ちに、成り切るのだ…!

 

想起せよ、英雄アズーリアが、故郷を大魔将に焼かれ、奪われた妹を奪い返すために旅立ったことを、その気持ちを。

 

想起せよ、確実な全滅が待つ前線から転進し、仲間と共に恐るべき魔将エスフェイルに立ち向かったことを、その思いを。

 

一人一人仲間を失い、シナモリアキラと共に決戦に挑んだ、その絶望と心細さと、傍(かたわら)に戦友を持つ心強さを。

 

理不尽な疑いをかけられて投獄されるも、大都会エルネトモランで仲間と再会し、最推しの歌姫の弟子兼付き人として再出発。

 

テロリストの死霊使いガルズ、彼が率いる復活した魔将たちと戦い、同時に、遠く離れたシナモリアキラともコラボで戦っていたことを…

 

そして、チョコのことを。

仲間とのささいなすれ違いからチョコアズーリアと化して、世界にチョコ平和をもたらそうとしたことを。

チョコの気持ちを。

 

そのように、必死に想念を高める地下アイドルだったが、女教師はそれをまた嘲(あざ)笑う。

 

「複合観念で無理矢理苦手を補うだと!?

何を無様(ぶざま)な真似事(マネ)を!

そのような統一した解釈無き業(ワザ)では私は敗れぬ!」

 

無理は、先刻承知だった。

 

だからもちろん、地下アイドルは、無理矢理にでも観念を統一していたのだ。

 

それは容易だった。

なぜなら、ラリスキャニアが見定めた英雄の統一的解釈、その人格の中核は……

 

「歌姫spear最高!妹大好き!」

 

単推しガチ恋強火担当(妹は別腹)だったからだ。

地下アイドルにとって、これ以上に身近な人格(キャラクター)は存在しない。

 

もちろん、数ある解釈の中からこの選択を選んだことには、それ以上の理由もある。

それが、蕩尽(とうじん)――太陽の本質に、最も近いからだ。

 

過剰な消費、競争的な購入、必要以上の贈与と献身こそ、有り余る呪力(エネルギー)を無尽蔵に放出する太陽の姿。

強火担ガチオタと共通する“幸福をもたらす力”である。

 

想い人の幸福を祈り、己の全て以上のモノを、過剰に消費しながら生きていく、その姿勢(スタンス)

すなわち、“興行主”が解釈するアズーリアとは、見境の無い愛の英雄である。

太陽と人間(ロマンカインド)

極大と極小の違いこそあれ、その性質に違いはない。

 

それこそが、この業(ワザ)に命を賭けるラリスキャニアの信念であった。

彼女は、それを言葉にする。

続けて、叫んだ。

 

「そう、英雄アズーリアは、“あの”シナモリアキラの戦友なのだから!」

 

ならば、彼女が誰か一人を選ばなかったりしても、全くおかしなことではない。

誰かのために戦うついでに、多くの人々に幸福をもたらしたりすることも。

妹だけでもなく、歌姫だけでもなく、上も下も関係なく無差別に愛を降り注がせる、専任にして溢れ出す強い愛情の獣。

 

彼女こそ、影太陽の英雄!

既成概念を覆(くつがえ)し、第二世界槍消滅後の『夜の民』の希望と成った『青い鳥』(ペリュトン)!

 

『上』の枠組みをも軽々(かるがる)とその翼で超えていく、最新の九槍なのだ!

 

そしてラリスキャニアには、見出(みいだ)したこの解釈を貫き続けよう、という信念があった。

彼女にとってアズーリアは、まさに希望、理想の英雄だったからだ。

だから、たとえこれが失敗で歪(ゆが)んだ過(あやま)ちであり、後で炎上必至だったとしても…!

 

「たとえ間違いや侮辱(ぶじょく)だとしても、ボクはせめてこの戦いの最後までは、この解釈を貫いてみせ…あれ?」

 

しかしふと気づけば、女教師の氷結波動は、すっかり遠ざかっていた。

なんだか、予想以上に上手くいっている。

 

実は、本当にわりと良い解釈だった…のか?

 

ラリスキャニアの影太陽は、かなりの速度で相手の波動を、あっさりと押し返していく。

 

落ち着いてからよく観察してみると…この逆転には、他の理由も見受けられた。

ラクルラールの業(ワザ)が、いつになく精彩を欠いている。

 

なんというか、やる気がないのだ。

いや、これはむしろ…

 

(なんだか、嫌な人物の真似をイヤイヤやっているような…?)

 

あるいはまさか、博愛や姉妹愛などが、弱点だったりするだろうか?

『キュトスの姉妹』は、実は仲が悪いとか?

あの女教師なら、十分に納得がいく話ではあるが…

 

 

 

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