幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
だから、“興行主”は残る全ての力を振り絞ってあがき続けた。
「いっけええええー!」
「まさか…まだ続けられるのか!?」
けれど、それにもやはり、限界がある。
現(げん)に、今もじりじりと押し返されているのが分かる。
このままでは、押し負けてしまうことだろう。
まだ、足りないのだ。
いくらラリスキャニアが、地下アイドルで最(もっとも)といっても…積み重ねたモノ、年季の長さや努力の量では、不死の魔女に敵(かな)うべくもない。
その女神としての“格”に、敵(かな)うはずもない。
もっともっと、演技に呪力(きもち)を込めなければ…!
「自分(ボク)たちの未熟さくらい、当然熟知しています!
だから!」
だからこそ、地下アイドルは、全力で模倣する。
英雄の気持ちに、成り切るのだ…!
想起せよ、英雄アズーリアが、故郷を大魔将に焼かれ、奪われた妹を奪い返すために旅立ったことを、その気持ちを。
想起せよ、確実な全滅が待つ前線から転進し、仲間と共に恐るべき魔将エスフェイルに立ち向かったことを、その思いを。
一人一人仲間を失い、シナモリアキラと共に決戦に挑んだ、その絶望と心細さと、傍(かたわら)に戦友を持つ心強さを。
理不尽な疑いをかけられて投獄されるも、大都会エルネトモランで仲間と再会し、最推しの歌姫の弟子兼付き人として再出発。
テロリストの死霊使いガルズ、彼が率いる復活した魔将たちと戦い、同時に、遠く離れたシナモリアキラともコラボで戦っていたことを…
そして、チョコのことを。
仲間とのささいなすれ違いからチョコアズーリアと化して、世界にチョコ平和をもたらそうとしたことを。
チョコの気持ちを。
そのように、必死に想念を高める地下アイドルだったが、女教師はそれをまた嘲(あざ)笑う。
「複合観念で無理矢理苦手を補うだと!?
何を無様(ぶざま)な真似事(マネ)を!
そのような統一した解釈無き業(ワザ)では私は敗れぬ!」
無理は、先刻承知だった。
だからもちろん、地下アイドルは、無理矢理にでも観念を統一していたのだ。
それは容易だった。
なぜなら、ラリスキャニアが見定めた英雄の統一的解釈、その人格の中核は……
「歌姫spear最高!妹大好き!」
単推しガチ恋強火担当(妹は別腹)だったからだ。
地下アイドルにとって、これ以上に身近な人格(キャラクター)は存在しない。
もちろん、数ある解釈の中からこの選択を選んだことには、それ以上の理由もある。
それが、蕩尽(とうじん)――太陽の本質に、最も近いからだ。
過剰な消費、競争的な購入、必要以上の贈与と献身こそ、有り余る呪力(エネルギー)を無尽蔵に放出する太陽の姿。
強火担ガチオタと共通する“幸福をもたらす力”である。
想い人の幸福を祈り、己の全て以上のモノを、過剰に消費しながら生きていく、その姿勢(スタンス)
すなわち、“興行主”が解釈するアズーリアとは、見境の無い愛の英雄である。
太陽と人間(ロマンカインド)
極大と極小の違いこそあれ、その性質に違いはない。
それこそが、この業(ワザ)に命を賭けるラリスキャニアの信念であった。
彼女は、それを言葉にする。
続けて、叫んだ。
「そう、英雄アズーリアは、“あの”シナモリアキラの戦友なのだから!」
ならば、彼女が誰か一人を選ばなかったりしても、全くおかしなことではない。
誰かのために戦うついでに、多くの人々に幸福をもたらしたりすることも。
妹だけでもなく、歌姫だけでもなく、上も下も関係なく無差別に愛を降り注がせる、専任にして溢れ出す強い愛情の獣。
彼女こそ、影太陽の英雄!
既成概念を覆(くつがえ)し、第二世界槍消滅後の『夜の民』の希望と成った『青い鳥』(ペリュトン)!
『上』の枠組みをも軽々(かるがる)とその翼で超えていく、最新の九槍なのだ!
そしてラリスキャニアには、見出(みいだ)したこの解釈を貫き続けよう、という信念があった。
彼女にとってアズーリアは、まさに希望、理想の英雄だったからだ。
だから、たとえこれが失敗で歪(ゆが)んだ過(あやま)ちであり、後で炎上必至だったとしても…!
「たとえ間違いや侮辱(ぶじょく)だとしても、ボクはせめてこの戦いの最後までは、この解釈を貫いてみせ…あれ?」
しかしふと気づけば、女教師の氷結波動は、すっかり遠ざかっていた。
なんだか、予想以上に上手くいっている。
実は、本当にわりと良い解釈だった…のか?
ラリスキャニアの影太陽は、かなりの速度で相手の波動を、あっさりと押し返していく。
落ち着いてからよく観察してみると…この逆転には、他の理由も見受けられた。
ラクルラールの業(ワザ)が、いつになく精彩を欠いている。
なんというか、やる気がないのだ。
いや、これはむしろ…
(なんだか、嫌な人物の真似をイヤイヤやっているような…?)
あるいはまさか、博愛や姉妹愛などが、弱点だったりするだろうか?
『キュトスの姉妹』は、実は仲が悪いとか?
あの女教師なら、十分に納得がいく話ではあるが…