幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第159話表裏一体、光闇の『浄界』その③(その2の25~26の途中まで)

最も身近な観客、最初の批評家にして原初のファン。

 

いつだって向き合うべき相手は、己自身(かのじょ)ただ一人。

最初から、これはそういう話だったのだ。

 

 

そして、急造『浄界』を挟んで正対し互いに向き合う二人は、まるで攪拌機(ミキサー)の中のように、距離を保(たも)ちながらも、ぐるぐると回転を始めた。

仮想の中心点を軸に、大きく横回転を繰り返す。

 

それはまるで回転木馬(メリー・ゴー・ラウンド)のように、あるいは、古代ラフディ式の公園遊具(鉄籠の球体。現代では再生者や岩肌種など頑強な種族専用)のように。

 

枝角と髪飾り、鎧とドレス。

男性姿の陽と女性姿の陰。

 

お茶に混ざり合うミルクのように、一度分かれた両者の対照的な呪力は、その明暗の性質を保ちつつも、渦を成して一つの形を作り始めていた。

 

『ワルツ』と業名(ワザナ)を宣名したものの、それを踊るのはまだお預けだ。

 

まずは、この対話を済(す)ませなければ。

そう心に決めて、“興行主”は、演目を選ぶ。

 

そうでなければ…きっと『ラリスキャニア』は、どこにも行けない。

 

彼女は、そんな気がしていたのだ。

 

「ラリスキャニア、結局キミは、自分のことにしか興味がないんだね。

最後に選んだ手が、自分をアピールする分身だなんて。

触手の技量で挑むのでなく、アイドル迷宮のみんなとの接続を再開させるのでもなく、キミは、ひたすら自分の幻像(ファントム)と踊って自己像を強調(アピール)する道を選んだんだ。

それは、他者に対する無関心。

己の価値を貶(おとし)める行為じゃないか。

それは、分かるかい?」

 

まずは、正面。

女性用のドレスに身を包んだ『ラリスキャニア』が、こちらに問いかける。

初手から厳しい質問。

 

だが、もう一人の『ラリスキャニア』は、それにも気負(きお)いなく答えた。

 

「そうだよ。

ボクは自分が大好きだ。

だけど、アイドルはみんなそうだ。

いや、そうあるべきなんだよ。

だって、自分が嫌いなら、どうして他の人に好きになってもらえるんだ。

やっぱりまずは、自分を愛し自信が持てるようにするのが、一番大事なんだよ」

 

「受け売りか。

でも、そうじゃない方法もある」

「シナモリアキラか」

 

「そう、足りないぶんは、いつも違う何かで補(おぎな)えば良い。

シナモリアキラのように。」

 

「でも、それはダメだよ」

「そうだね、シナモリアキラと同じだしね」

 

"二人"が、問いを返答(ラリー)し合っているうちに、少しずつその回転は速くなっていく。

まるで、それらの『呪文』(ことば)こそが、この回転を、そして回転が包む夢空間全体を、加速させていっているようだ。

 

そしていつの間にか、入れ替わっている。

男の姿と女の姿が、答えを発するたびに切り替わっているのだ。

それは、特に意味を見出せない変身のように見えた。

対話と変身は、異質と同質を同居させながら、キャッチボールのように続いていく。

 

永遠に続くかのような対話。

意味と無意味が、硬貨(コイン)の裏表のようにひっくり返り続けるような、会話。

 

それは、終わることがないように思えた……

 

 

 

 

けれどその対話も、唐突に一瞬途切れる。

二人の姿が、それぞれ二つに切り裂かれたのだ。

 

「8!」

 

どうやら、ラクルラールが痺(しび)れを切らしたようだ。

ただ、それもすぐに再生される。

回転は、また再開される。

そこへ、

 

「6!そらそらどうした!あと二回きりだぞ!」

 

女教師の叫びが響き、

 

「…4!

私は手加減などせんぞ!」

 

攻撃は、恐ろしい速度で重ねられていった。

 

「2。

強情(ごうじょう)もいい加減にしろ!

自殺する気か!?

次が本当にお前の最後になるのだぞ!

いかに練習でも、ここまで大々的に宣伝すれば本番と同じだ!

その薄っぺらい名声は地に落ちる!

アイドルとしてもお前は破滅する!

嘲笑(ちょうしょう)され『真の死』を迎えるのだ!

転生しようが、今の名声と自己像(アイデンティティ)は、もう二度と戻ってこないぞ!」

 

それは、女教師の降伏勧告だった。

彼女は、元生徒"たち"に己が世界観(おしえ)を突きつける。

 

「戦え!唯一の存在となれ!あらゆるものを踏みしだけ!

テロリストに戻りたいのか?

誰も彼も美しくなるため余分と不要を切り捨てている!

それをしなければ皆破滅するだけだ!」

 

だが、ラリスキャニアはそれに抗(あらが)った。

 

「そんなことは問題じゃありません!

失敗を気にしながら踊って、成功出来るわけがないじゃないですか!」

 

地下アイドルは、教師に更に叫び返す。

 

まずは、ドレス姿が、

 

「ボクは、いいえ、ボクらは、誰よりも相手の潜在能力を信じ、誰よりも自分を信じる。

自分の第一の信仰者(ファン)で在(あ)り続ける!」

ボクらは何度でも幻想に帰る!」

 

そして次に、

 

「今のボクはカルト教団で王女誘拐犯のラリスキャニアじゃない。

全くの別人だ。

だけど!

同時に、ボクは間違いなく、"彼女"と同じ“ラリスキャニア”なんだ!」

 

と、今度は男性姿の『ラリスキャニア』が応じる。

“彼”は、その振る舞いにおいても呪力においても、“もう一人”と全く違いは見られない。

どうみても、どちらも『本物』だ。

 

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