幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第160話 表裏一体、光闇の『浄界』その④(その2の26の途中まで)

服装以外に見分けがつかない両者を、ラクルラールが叱(しか)りつける。

 

「なんの開き直りだ!」

 

「開き直りにしか聞こえないかもしれない。

けど!」

「開き直りの大家みたいな先生には、言われたくありませんね!」

 

舌戦は続く、回転も続く。

二人の地下アイドルは、共にその元教師との対話を試(こころ)みる。

そして、二人のラリスキャニアが対話を繰(く)り返すたびに、その中間点がきらきらと光り、金色の輝きを溜め込んでいく。

だんだんと形を成していくそれは、不可思議に揺れる不思議な振り子のように見えた。

果たしてそれは何なのか。

答えは出ぬまま、回転は続く。

 

回る廻る、地下アイドルが周(まわ)る。

ルーレットの玉のように、落ちゆくビリヤードの球のように。

議論を踊らせ、世界に目を回しながら逆にその回転に全てを巻き込もうと、渦を巻き起こしながら踊り続ける。

 

その横の回転は、軸を少しずつ移しながら混沌(ランダム)性を増していき、またそれは上昇の…『上』で聖なるものとされる『槍』を象徴する動きともなっていた。

混沌と秩序、対話と天への侵攻が、一対が演じる一つの動きによって、同時に表現されていく。

螺旋の渦が、形成されていく。

 

だか、ラクルラールがそれを黙って見過ごすわけがない。

彼女はどう見ても、自分が舞台の中心に立たないと気が済まない気性の持ち主。

にも関わらずその目前(もくぜん)には、己を無視して対話劇を繰り広げ、観客の視線を二人占めにする己の元生徒たちが、立ちはだかる。

あの女教師のような自己愛偏執者(エゴイスト)が、これに怒らないわけがない。

そんな予測に違(たが)わず、彼女は怒り狂い、踊りかかった。

 

「これで終わりだっ!」

 

そして瞬(またた)く間に、白刃が地下アイドルたちを斬(き)り裂いた…!

 

最終カウントを刃が告げる。

最後の力ある分身と『本体』が、一瞬のうちに破壊された。

 

「1!」

 

女教師は、そう吐き捨てるように言い、すぐにそれを訂正した。

 

「いや、0か。

馬鹿なことを…」

 

果たして、その形容の対象はどちらだったのか。

ともかくその瞬間、最後のラリスキャニアは確かに死んだ。

 

たとえ夢であろうとも、死は死、敗北は敗北である。

しかも、この舞台は呪術的な制約(ルール)に縛られている。

たとえ演技であろうと、それが呪術的な儀式だったり神に奉納する儀礼であれば、当然その結果は真実となる。

そこでの応報(フィードバック)は、演者(じゅつしゃ)に対して、そのまま『現実』となって降りかかるのだ。

仮想(れんしゅう)はこれにて現実(ほんばん)となり、ラリスキャニアはついにその命を儚(はかな)く散らした。

そのはずだった。

 

地下アイドルは、理想(りそう)に届かず、墜死(ついし)した。

今度こそは、一巻の終わり。

 

確かに、そのように見えた。

そうとしか、思えなかった。

 

だが…

 

「なぜだ!

なぜまだ分身がある!

ついに小鬼へと堕ちたか!」

 

そう、ラクルラールの手によって完全に打ち砕かれたはずの地下アイドルは、なぜか再び出現していた。

確かに斬られたはずなのに、二人揃(そろ)って、そこに居た。

 

しかも、

 

「「さて、先生はどちらが本物かお分かりになりますか?」」

 

彼女の前には、同時に二人もラリスキャニアが浮かんでおり、そんなふざけた台詞(セリフ)を投げかけて来ていたのだった…

 

 

ラリスキャニアは詩を詠(うた)う。

地下アイドルは、詠唱(えいしょう)する。

その“一人”がではなく、“二人一緒”でもなく、その間。

狭間(はざま)に音声(ことば)が生成され、虚空を伝わり、響き渡る

それは、新しい業(ワザ)の発動を告げる、宣言(MC)だった

 

言理の妖精語りて曰く、

――全ての始まりは、言葉(MC)である。

 

アイドルは、コピーでもオリジナルでもない。

あえて言うなら再帰幻想発生(ハイパーリアル)だ。

 

その生態は、自然発生に近い。

目標(モデル)はいる。

 

『青い鳥』(ペリュトン)が皆そうであるように、模倣先もある。

 

けれど、それは本体の引き写しではない。

誰も、ただの分身なんかじゃない。

 

配信で、動画で、円盤で、そしてありとあらゆるグッズで。

 

ボクらはいつも、そして何度でもアイドルをやる。

それが偶像(イコン)であり、偶像(アイドル)だからだ。

 

人々をユメと救済の世界へとつなげる門、キャラクター商品にも似た、その在(あ)り方。

人気と名声こそがボクらの生命(ライフ)であり、炎上と失墜、そして卒業こそがボクらの死(デス)だ。

 

星の瞬(またた)きにも似た、生命と死(ライフ&デス)

 

たとえ双子や沼女であろうと、全く同じ場所に立って厳密に同じ光景を観ることが出来ないように。

その全ての幻想に、それぞれ異なる生と死がある。

 

あまりにも平凡で普遍的(ゼオータイル)な生命の運航。

それこそが、あらゆる無個性が唯一共有する、個性(ライフ)の発露(はつろ)

 

それをどこまでも繰り返して、ボクらはここにいる。

ここにいるんだ。

 

アイドルは全て死(おわり)瀕(ひん)しながら、瞬(またた)きの生(せい)を生きている。

羽ばたかなければ墜落する蝶のように、瞬間瞬間を必死に生きて、輝いている。

 

だからどんな暗黒の中にあっても、いつも真っ直ぐに飛翔(すすみ)続けるんだ!

 

言葉(MC)は、廻(めぐ)る呪文(ことば)の群れとなって弾(はじ)け、煌(きら)めきとなって、相似形のアイドルたちに降りかかる……

 

そして、その輝きの消失と共に、二人の片方が、口を開いた。

 

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