幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第162話 表裏一体、光闇の『浄界』その⑥(その2の27~28の途中まで)

つまりは、確かに倒されたはずの『本体』が、“実は分身だった”ということになって、事後的に入れ替わりを成立させるという呪術。

 

人狼最後の魔将に、ミヒトネッセ、ラフディ王主従に、亜竜王の兄弟。

今や懐かしき学友たちとその他諸々(もろもろ)を参照し、舞台の継続が願われる流れを作ったうえで、“芸”の形、枠組みに頼る。

そこまでやって、更に第五階層のなんでもありな空気に支えられて、ぎりぎりようやく成立する。

これは、そうした綱渡り的な“業”(ワザ)であった。

 

そしてもちろん、これはただ回避と復活を可能にする防御策ではない。

二人の相互上昇には、理由がある。

 

それは、追放され、そこから逆襲して追放し返すたびに、分身(カゲ)だったはずのラリスキャニアが、“本物”を演じるラリスキャニアの頭上まで、飛翔しているからだ。

彼女たちは、交互に「本来持っているはずの“本物”の潜在能力」や「逆境を乗り越えて成長した技術」でもって、以前を上回る高さへと上昇を重ねていく。

 

それは、逆転に次ぐ逆転の演出。

 

第五階層ではもはや常識である"優劣の逆転"

そうした現象を利用した、自己強化(パワーアップ)であった。

二人のラリスキャニアの瞳は、それを祝福するかのように、同調する律動(リズム)をもって、十字の瞬(またた)きを明滅させていたのだ……

 

もちろん、ラクルラールがその上昇を放っておくわけがない。

彼女は、常に頂点を自任しているのだから。

 

「馬鹿め!

刺激だけを追い求める演劇は、やがてその刺激に観客が疲れ果て、単なる惰性(だせい)へと堕ちる!

貴様のソレは、墜落を前提とした“曲芸”に過ぎん!

すぐに飽きられて消えるだけだ!」

 

だが、互いを追放し合う二人のラリスキャニアは、口々に反論を叫ぶ。

 

「これは単なる目新しさや逆張りだけの『芸』ではありません!

ボクと世界が、共に救われるために演じられる“業”(ワザ)です!」

「そこに意味があれば、そこに関係と物語(ぶんみゃく)があれば、芸術は何度でも再評価されます!

刺激なんて、意味の共有を駆動させるための、片輪(かたりん)でしかありません!」

 

その言葉を聞いた女教師は、再度せせら笑った。

 

「そんな“曲芸”のどこに物語性や文脈がある!

貴様のような奇矯な出自の変人の表現など誰が真剣に汲(く)み取ると言うのだ!

そんなものは単なる狂人の戯言!

誰にも理解されない喚(わめ)き声の異言として無視され迫害されるだけだ!」

 

「それはもちろん!」

 

そこで、二人はまた声を合わせる。

 

「今いる、過去から支えてくれた、そして未(いま)だ本人もそれを知らない――」

 

「「ファンとの間で!」」

 

表明された決意は光となって弾け、上昇する地下アイドルの螺旋を後押しする。

 

無数の動画窓は、数えきれないヒトビトの反応を伝え、炸裂する情動と情報が、万色の言霊や贈物(ギフト)となって乱舞する。

 

勝つために必要なのは、ただ一手。

逆転を、演出する。

それしかない。

 

そのためには高度が必要だ。

落差が、それに速度も。

 

だからこそ、地下アイドルは飛翔し続けた。

遥(はる)か上空、星(スター)の高度を目指して。

 

「ちいっ!」

痺(しび)れを切らした女教師は、また攻撃を再開した。

 

目にも止まらぬ、高速の連撃。

 

だが……

 

それても“ラリスキャニアたち”は、相(あい)も変わらず回転と上昇を繰り返す。

 

そこでラクルラールは、

 

「ならばやり方を変えるまで!」

 

今度は遅く、異様(いよう)なまでにゆっくりと、攻撃を仕掛けてきた。

 

とはいえ、これも決して容易(たやす)い業(ワザ)ではない。

高度な技法によって繰り出された斬撃は、スローモーションのような遅さでありながら、対象のあらゆる抵抗を無視して確実な破壊を実現する。

もたらされるのは、まるで予(あらかじ)め決め事(ブック)があるかのような、綺麗な切断。

その見事さは、まるで実はこれまでは仮にくっつけていただけであって、切断された状態が本来の姿であるかのようだ。

 

しかも恐るべきことに、この動作には、呪術の作用がほとんど見られなかった。

女教師は、ほぼ純粋な肉体言語呪文だけで、次々と抵抗する相手を切り伏せているのだ。

 

だが、それもやはり無意味である。

いくら地下アイドルを斬ったところで、それは即座に低再現度の分身(ダミー)人形に代わり続ける。

 

ラクルラールはすぐに気づいた。

破壊された方のラリスキャニアの背に、念写画像(メッセージ)が貼り付けられているのを。

簡素な文面、だがそれは彼女にとって大きな障害となる内容だった。

それこそは、“追放宣告”の投影。

もう一人の地下アイドルが端末から早撃ちで投げかけた画像が、一種の呪符となって、損耗(そんもう)を最低限に抑える『空蝉』(うつせみ)呪術として機能していたのだ。

そう、それはそうした窮余の策(エスケープ)であった。

 

それだけではない。

同時に、ラリスキャニア“たち”は、女教師の攻撃すら利用し始めたのだ!

 

「『本体』を踏み台…いや、あちらも協力しているだと…!?」

 

女教師は、驚愕した。

その声に乗るのは,驚きに加え、激しい怒り。

 

 

 

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