幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
彼女の目前には、組体操の要領でその触手を相手の踏み台と成し、相方を跳ね上げている"ラリスキャニア"の姿があった。
地下アイドルたちは、ラクルラールが"彼女"の一人を切り捨てる一瞬の間、そのタイミングを逆にチャンスとして利用。
互いを乗り越え合い、また乗り越えさせ合うことで、より高度を稼いでいたのだ。
女教師は、それを強く非難する。
「お前ごときがオルヴァ王の自己解釈再演だと!?
自分を乗り越え(マウント)ようとする相手を押し上げ敵に塩を送るなど偽善でしかない!
誰にも高潔さをアピール出来ず名声を勝ち得ない“無償の協力”など所詮は無価値な愚行でしかない!
身を滅ぼすだけだ!」
「そんなふうに考えているのは、貴女だけではありませんか?」
余裕を感じさせる受け答え。
それは、相手の非難を受け流し、次なる反撃(はんろん)へと自然につなげる"構え"であった。
「そして、それでも構わない。
だって幻想を形にするのがアイドルなのだから!」
それに対し、ラクルラールは吼(ほ)えた。
「なぜだ!
なぜ分身を切り捨てない!
唯一無二の本物(オリジナル)となって己を誇(ほこ)ろうとは思わないのか!
私は確かにその必要性を教えたはずだ!」
「そんなものは!」
「無用です!」
「「なぜなら!」」
虚空を更なる主張(メッセージ)が渡る。
“二人”の意志、協力して放つ言葉(じゅもん)が高等呪術『心話』となり、空間に意味を響かせていく。
「ボクらは、皆、模倣品(コピー)なのだから!」
「誰もが、自分から始めたわけではない伝統を継承し、何かを見習い色んなものを借りて、そうしてなんとか自己(エゴ)を保っている!」
「不安定、けれど確かにそこにボクたちはいます。
確かに生きているのです!」
「アイドルは“卒業”という形で一つの“死”を迎え、ファンもまた“他界”していく。
ならば、アイドル活動とはそれ自体が『生』そのもの!」
「掲げる価値(みりょく)とその変転こそが、ボクたちの『生』そして『死』」
「ボクたちアイドル自身と、ファンのみんなが創り出す舞台(ステージ)こそが、そしてその終焉と再創造こそが、アイドルの夢が生きる場、人生そのもの!
そしてきっと、それは無限に『転生』(りすたーと)可能なんだ!」
ふわふわとした、まさに夢見がちな“二人”の発言。
それを、女教師は
「そんな都合の良い話が…!」
一刀両断にしようとしたようだが、なぜか急に口籠(くちごも)る。
何か、不都合でもあるのだろうか?
ともかく、“二人”のラリスキャニアの舞台は続いていく。
そして、このささやかな『浄界』は、その内部に更に境界線を持つもの。
それは、“二人”が結局は、同じ一人の人間(ロマンカインド)であるからこそ成し得る裏業(ウラワザ)であった。
通常、『浄界』の本質を規定するのはその境界、外周部の線(ライン)だけだ。
『浄界』の線はその外側を否定し、線の創造主が定義した『浄(きよ)らか』なもの以外を、醜(みにく)く不要ならもの全てを切り捨てる。
だからこそ『浄界』は、内部に一定の法則(ルール)を保った領域(エリア)であることが、出来るのである。
だが、このラリスキャニア“たち”の『浄界』は、内部で更に二つの領域に分かれている。
その有様は、まるで結合双生児(つながったふたご)のようだ。
そしてその実体も、極めてそれに近かった。
先述(せんじゅつ)したように、『浄界』とは、『不浄』の認定により『浄』を出現させるもの。
そしてそれは、その二つが『表裏一体』であることを意味している。
何が不要な『不浄』で何が必要な『浄』か、その定義は『浄界』の創造者次第なのである。
故(ゆえ)に、ある一つの『浄界』の『不浄』が、別の『浄界』の『浄』であるような状態も、当たり前(ゼオータイル)に成立し得る。
偏食の子どもたち同士が、嫌いな食材を交換し合ったり、試験前に苦手な科目を教え合うように、『不要』は『要』に、『浄』も『不浄』に転換し得る。
ならばもし、互いに相手を『不浄』と規定する二人が協力し合えたなら…?
それは、お互いの『浄』を支え合いつつ、相手の規定する『不浄』をも利用し合える仕組み(システム)の構築に、繋がらないだろうか…?
対立し合い、競争し合いながらも、互いにチカラを与え合うような、共に向上出来る共存共栄のシステムに。
その有様(ありよう)は、外部が内部を、内部が外部を相互に規定する巴の紋様。
片方を排斥するのではなく、双方を肯定するためにある環流の陣。
これはすなわち、そうした永久機関を実現するための『浄界』なのだ。
しかし、いくら派手な業(ワザ)を使ったところで、それを全く気にしない歴戦の覇者も、ここにはいる。
論敵が二人いたところで、著名なる『キュトスの姉妹』が、その程度のことに怯(ひる)むわけがない。
二人いるなら、二倍攻撃するだけだとでも言うように、彼女は、これまでに輪をかけて強い呪文(ことば)を以(もっ)て、追撃をかけてくる。