幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第165話 表裏一体、光闇の『浄界』その⑨(その2の30の途中まで)

そうなれば、当然のように範囲攻撃の出番となる。

突然、女教師の青い髪が、急激に伸びた。

 

かと思えば、それは重なり組み合わさり、意味ある形で織られた包囲網となった。

 

それは、言葉の糸が織り成す呪文の網。

炎、稲妻、疾風、矢衾(やぶすま)剣(つるぎ)の檻(おり)に槍の天井。

 

もはや、『絵』を描く気は無いのかそれとも余裕が尽きたのか、放たれたのは、とても荒っぽい乱撃であった。

 

だが、当然その全ては『爆撃』に匹敵、あるいは上回る呪術攻撃。

その全てが、必殺。

逃れる隙間など有りはしないし、いかにあがこうが、正統な呪術師でもない芸人(しろうと)に対処出来るような威力でもない。

 

しかし…地下アイドルたちはその猛攻撃からも、何事も無かったかのように復活してみせた。

 

けれどそれは、攻撃が徒労に終わったことを意味しない。

女教師も、また再度見抜く。

 

真の不死者(キュトス)でもないいち芸人が、こうも容易(たやす)く連続復活をこなせるわけがない。

いくら、ここが転生を促進する第五階層であり、外部からの呪力供給があるにしても…本来、転生や復活をスムーズにこなすには、それ相応の術式(サポート)が必要とされるのだ。

しかし、ラクルラールの記憶が確かなら、この時点では、それはまだ配布されていないはず。

 

だからあるのだ。

その“代用品”とでも言うべき何かが。

そこで女教師は、即座に周囲を見渡す。

 

だからと言って、今更になってわざわざ原因を探し始めている、というわけではない。

現在、地下アイドルたちに力を与えている存在(もの)など、もはや考えるまでもないだろう。

 

「これは…」

 

ラクルラールは、目を見開く。

発見したものは彼女の予想通りではあったが、その“質”に関して言えば、完全にその予想を外していた。

ただし、残念ながら想像を上回っていた、というわけでもなかった。

 

ラクルラールは、そのあまりのクオリティに思わず叫(さけ)んだ。

 

「なんだ、この“お遊戯”は!」

 

そこに広がるのは、相も変わらぬ無数の配信窓。

だが、そこに流れているのは、もはや単なる観客たちの反応(リアクション)ではない。

それは…踊りだった。

跳ね回るもの、足踏みするもの、歌い騒ぎ、奇怪な吠え声を上げるもの。

そこには、無数の“踊り手”たちがいた。

 

その動き、その、あまりの“見るに耐えなさ”は…女教師を一時的に行動不能にするほどだった。

彼女はアイドル学園の元学園長。

当然、それなり以上の審美眼(びてきせんす)を持ち合わせている。

それゆえの衝撃、それゆえの憤りであった。

 

「信者(ファン)が動きを模倣(トレース)…いや、再演!?

このラクルラールの前でよくもそんな真似が出来たものだな!」

 

ラクルラールは、瞬時にこの“業”(ワザ)の本質を見抜く。

そして、

 

「ただの不出来な物真似(モノマネ)ではないか」

 

ただ一言にて、切り捨てた。

彼女は続けて、次々と冷酷な評価を下す。

 

「5点。

コスプレとは、衣装とメイクを整えればそれで済むようなものではない。

着こなしも不完全であるし、何より表情がなってない。

良く知っている相手なら楽に演じられるという、その心構えがまず失敗なのだ。

正確な観察と知識に基(もと)づく解釈無くば、身内での宴会芸にしかならん。

言っておくが採点基準は当然100点満点だ!」

 

そして女教師は、片っ端から“採点”を降(くだ)し始めた。

青い糸で瓦礫をつなぎ、モデルのように颯爽と歩き回りながら指差す姿は、まるで広大な領地を治める女王のようだ。

 

「3点」

 

「2点」

 

「1点」

 

「1点」

 

「1点」

 

ラクルラールの審美眼は、ひどく正しかった。

その審判は、『正しさ』を説得的に訴える『呪文』であったと言っても良い。

 

そもそも、信者たちは基本的にはアイドルではない。

芸能の心得など、ほぼ皆無である。

それゆえ、その技術、そのエンターテイメントとしての価値は…当然ながら大幅に低迷していた。

 

それに対し、女教師は“適正な評価(さいてん)”を与えることで一つ一つの“演技”を潰していく。

それは、敵の補給を削(そ)ぐと同時に、自らの権威と呪力を回復させていく振る舞いでもあった。

これこそが、ラクルラールなのだ。

 

最古の紀神の欠片『キュトスの姉妹』

彼女たちは、どれだけ傷つき疲れ果てたとしても、その確立された権威と権能まで失うことは、決して無い。

何故(なぜ)ならその業(テクネー)こそが、彼女たちそのものだからだ。

 

技術と教育を司(つかさど)る半神は、自分こそが真の永久機関だ、とでも言うかのように、力強くその進撃を続けていった。

 

そしてついには……

 

「いい加減にしろ!

マイナス1億点」

 

ラクルラールは叫びと共に、全く『ラリスキャニア』に見えないマイクロビキニ鹿角を、その画面ごと吹き飛ばした。

その吹き飛びの軌跡が、わずかに青く光って見えたところを見ると、これもまた、あの青い糸を使っていたようだ。

それが、最後の配信窓だった。

 

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