幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
そして彼女は、惨状を背景に振り返って曰く、
「さてまさかそれを転生や『復活』だとでも言うつもりなのか?
あの信者(ファン)の稚拙(ちせつ)な動きを使った再演ごときで一体何を蘇(よみがえ)らせたと?」
「ぐっ…」
見れば、一対のラリスキャニアたちは、まるで何かに抑(おさ)えつけられたかのように、動けずにいる。
「流動の支配や制御に加え民意の調整も行おうとは片腹痛い。
無限にして無の処理とはそれは要するに『空』(シューニャ)の制御ではないか。
紀神でも手を焼く難行だぞ。
万全にこなせるのはシャーネスぐらいのものだろうよ。
そして“完全支配は停滞でしかない”だと?
見下して偉くなったつもりになるだけなら容易(たやす)いだろう。
だが暴走しかしない民意に対応出来るものなど、ごく限られる。
ましてや表空(アーカーシャ)の片鱗(へんりん)にすら辿(たど)り着けないお前如(ごと)きではな。
突然変異的な異物(かいぶつ)にしか出来ないような『自由』に挑(いど)むというのら勇敢(ゆうかん)ではなく『愚行』というのだ。
肝に銘(めい)じておけ。
表現者(われわれ)には『支配』と『恐怖による隷属(れいぞく)』しか有り得ないということをな!」
よく分からないが、何やら諦(あきら)めを説(と)いていることだけは分かる演説。
更にそれに加え、追撃が放たれる。
「その程度なら、今の私でも余裕で上回ることが出来る。
こんなふうにな!」
そう叫ぶと、女教師は指を鳴らした。
同時に、世界に衝撃が走る。
辺り一面の情景に、透明な波のような波紋が走ったのだ。
その時、全ての配信窓に変化が起こった。
そのあり様に怯(おび)えた地下アイドルは、震えながら叫んだ。
彼女は、その変化を言葉に出さずにはいられなかった。
あまりの動揺のため、『解説』という形で処理しなければ、目の前の『現実』を受け入れられなかったのだ。
「みんなが…変わっていく!
乗っ取られているんだ!」
見渡す限りの窓に、女教師の影が生じていた。
そこに確かに映っていたはずのラリスキャニアのファンたちが、次々と青い糸に絡(から)め取られ、支配されていっている。
「そしてこれだ!」
更に、続けざまにラクルラールが指を鳴らす。
一面の窓、その全てから音が響き、地下アイドルに極めて細く青い閃光が放たれた。
360度全方向から撃ち込まれ、収束したそれは…糸の矢、硬化させた青い髪による、集中砲撃であった。
その結果、顕(あら)われ出たものを観て、女教師は、呟(つぶや)く。
「そうか、そこにいたのか」
それは、境(さかい)に潜(ひそ)んでいた。
二人の『ラリスキャニア』の丁度中央。
一対明暗の『浄界』を二つに分け、また繋いでいるその“境界線”
そこに、いないはずだった存在がいた。
ドレス姿でも鎧姿でもない簡素な練習着。
男のようでもあり女のようでもある曖昧(あいまい)な印象。
暴(あば)き出された“彼女”は、ゆっくりと身を起こす。
二人の地下アイドルを形成し、“運営”していた『本体』
“ほんとうのラリスキャニア”は、最初からそこに隠れていたのだ……
※
そして、現れた地下アイドルは、その目を大きく見開いた。
確かに、あの青糸には一度は第五階層を陥落させた実績がある。
だが、今感じられるこの呪力量は…?
いつか見たアレは、あんなに細く、弱々しかったか?
拭(ぬぐ)いきれない違和感から、ラリスキャニアは、眼前に広がるおぞましき情景の正体を見抜く。
「それほど弱い呪力で、こうも急速に支配を行き届かせられるのは、既に支配していたからだ!
そう、ボクらの子豚ちゃんを雁字搦(がんじがら)めにしているのは、予(あらかじ)め染(し)み渡らせていた支配――強制的な教育という支配の記憶に他ならない!」
そして、素人アイドル探偵は、その推理を断言する。
「ラクルラール先生、今の貴女の正体は、この第五階層のヒトビトの深層意識に染みついた暴力の記憶(トラウマ)!
貴女は、第五階層の悪夢そのものなんだ!」
「それがなんだと言うのだ?」
だが、その弾劾(だんがい)は一顧(いっこ)だにされなかった。
一面の悪夢が、声を揃(そろ)えてせせら笑う。
「そして、お前の手品の種もだいたい分かった」
女教師、解説するに曰く、
「自らを『浄界』中央の“境界線”に置き、『浄』『不浄』の概念を切り分け直すことで、二つの擬似『浄界』…いや、“子浄界”と呼ぶべきサブシステムを機能させる。
まさか、そのものズバリ、箒の並列機関(ハイブリッドはいだん)の機構(システム)を応用していたとはな。
かのビルメーヤの『空落とし』でも、目指していたつもりか?
やれやれ、蝋(ロウ)の翼で太陽を目指した異界の『杖』使いも驚くほどの無謀さだな」
その指は、円を描くように世界を、見渡す限りに広がって自己の像、支配下に置かれた情景を指し示し、
「まあ、劣等生にしては良くやったよ。
だが見ろ、この通りだ。
力の差は、覆せん。
お前の一見無限に見える“復活”を支えていたのは、この大量の配信窓による再演。
仮装遊戯(コスチューム・プレイ)を使わせた支援体制に他ならん。
単純な類感による再生か。
地下アイドル風情(ふぜい)が『祭り』による復活を行うとは神にでもなったつもりか?
まあそれもこうして崩してしまえば、その破壊は容易(たやす)い。
どんなに強い『絆(きずな)』とやらを謳(うた)ったところで、人間関係など所詮(しょせん)はこんなものだ。
どんな感情も好印象も後から悪いイメージでいくらて上書き出来る。
いくら足掻(あが)いたところで無駄だ。
結局全ての関係性は私に集約し!私が支配するのだからな!」