幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第166話 表裏一体、光闇の『浄界』その⑩(その2の31の途中まで)

そして彼女は、惨状を背景に振り返って曰く、

 

「さてまさかそれを転生や『復活』だとでも言うつもりなのか?

あの信者(ファン)の稚拙(ちせつ)な動きを使った再演ごときで一体何を蘇(よみがえ)らせたと?」

 

「ぐっ…」

 

見れば、一対のラリスキャニアたちは、まるで何かに抑(おさ)えつけられたかのように、動けずにいる。

 

「流動の支配や制御に加え民意の調整も行おうとは片腹痛い。

無限にして無の処理とはそれは要するに『空』(シューニャ)の制御ではないか。

紀神でも手を焼く難行だぞ。

万全にこなせるのはシャーネスぐらいのものだろうよ。

そして“完全支配は停滞でしかない”だと?

見下して偉くなったつもりになるだけなら容易(たやす)いだろう。

だが暴走しかしない民意に対応出来るものなど、ごく限られる。

ましてや表空(アーカーシャ)の片鱗(へんりん)にすら辿(たど)り着けないお前如(ごと)きではな。

突然変異的な異物(かいぶつ)にしか出来ないような『自由』に挑(いど)むというのら勇敢(ゆうかん)ではなく『愚行』というのだ。

肝に銘(めい)じておけ。

表現者(われわれ)には『支配』と『恐怖による隷属(れいぞく)』しか有り得ないということをな!」

 

よく分からないが、何やら諦(あきら)めを説(と)いていることだけは分かる演説。

更にそれに加え、追撃が放たれる。

 

「その程度なら、今の私でも余裕で上回ることが出来る。

こんなふうにな!」

 

そう叫ぶと、女教師は指を鳴らした。

同時に、世界に衝撃が走る。

辺り一面の情景に、透明な波のような波紋が走ったのだ。

その時、全ての配信窓に変化が起こった。

 

そのあり様に怯(おび)えた地下アイドルは、震えながら叫んだ。

彼女は、その変化を言葉に出さずにはいられなかった。

あまりの動揺のため、『解説』という形で処理しなければ、目の前の『現実』を受け入れられなかったのだ。

 

「みんなが…変わっていく!

乗っ取られているんだ!」

 

見渡す限りの窓に、女教師の影が生じていた。

そこに確かに映っていたはずのラリスキャニアのファンたちが、次々と青い糸に絡(から)め取られ、支配されていっている。

 

「そしてこれだ!」

 

更に、続けざまにラクルラールが指を鳴らす。

一面の窓、その全てから音が響き、地下アイドルに極めて細く青い閃光が放たれた。

360度全方向から撃ち込まれ、収束したそれは…糸の矢、硬化させた青い髪による、集中砲撃であった。

その結果、顕(あら)われ出たものを観て、女教師は、呟(つぶや)く。

 

「そうか、そこにいたのか」

 

それは、境(さかい)に潜(ひそ)んでいた。

二人の『ラリスキャニア』の丁度中央。

 

一対明暗の『浄界』を二つに分け、また繋いでいるその“境界線”

そこに、いないはずだった存在がいた。

ドレス姿でも鎧姿でもない簡素な練習着。

男のようでもあり女のようでもある曖昧(あいまい)な印象。

 

暴(あば)き出された“彼女”は、ゆっくりと身を起こす。

二人の地下アイドルを形成し、“運営”していた『本体』

“ほんとうのラリスキャニア”は、最初からそこに隠れていたのだ……

 

 

 

 

そして、現れた地下アイドルは、その目を大きく見開いた。

 

確かに、あの青糸には一度は第五階層を陥落させた実績がある。

だが、今感じられるこの呪力量は…?

いつか見たアレは、あんなに細く、弱々しかったか?

拭(ぬぐ)いきれない違和感から、ラリスキャニアは、眼前に広がるおぞましき情景の正体を見抜く。

 

「それほど弱い呪力で、こうも急速に支配を行き届かせられるのは、既に支配していたからだ!

そう、ボクらの子豚ちゃんを雁字搦(がんじがら)めにしているのは、予(あらかじ)め染(し)み渡らせていた支配――強制的な教育という支配の記憶に他ならない!」

 

そして、素人アイドル探偵は、その推理を断言する。

 

「ラクルラール先生、今の貴女の正体は、この第五階層のヒトビトの深層意識に染みついた暴力の記憶(トラウマ)!

貴女は、第五階層の悪夢そのものなんだ!」

 

「それがなんだと言うのだ?」

 

だが、その弾劾(だんがい)は一顧(いっこ)だにされなかった。

一面の悪夢が、声を揃(そろ)えてせせら笑う。

 

「そして、お前の手品の種もだいたい分かった」

 

女教師、解説するに曰く、

 

「自らを『浄界』中央の“境界線”に置き、『浄』『不浄』の概念を切り分け直すことで、二つの擬似『浄界』…いや、“子浄界”と呼ぶべきサブシステムを機能させる。

まさか、そのものズバリ、箒の並列機関(ハイブリッドはいだん)の機構(システム)を応用していたとはな。

かのビルメーヤの『空落とし』でも、目指していたつもりか?

やれやれ、蝋(ロウ)の翼で太陽を目指した異界の『杖』使いも驚くほどの無謀さだな」

 

その指は、円を描くように世界を、見渡す限りに広がって自己の像、支配下に置かれた情景を指し示し、

 

「まあ、劣等生にしては良くやったよ。

だが見ろ、この通りだ。

力の差は、覆せん。

お前の一見無限に見える“復活”を支えていたのは、この大量の配信窓による再演。

仮装遊戯(コスチューム・プレイ)を使わせた支援体制に他ならん。

単純な類感による再生か。

地下アイドル風情(ふぜい)が『祭り』による復活を行うとは神にでもなったつもりか?

まあそれもこうして崩してしまえば、その破壊は容易(たやす)い。

どんなに強い『絆(きずな)』とやらを謳(うた)ったところで、人間関係など所詮(しょせん)はこんなものだ。

どんな感情も好印象も後から悪いイメージでいくらて上書き出来る。

いくら足掻(あが)いたところで無駄だ。

結局全ての関係性は私に集約し!私が支配するのだからな!」

 

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