幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第168話 表裏一体、光闇の『浄界』その⑫(その2の32~33の途中まで)

そこには、一人の黒豚アバターがいて…全身で一つのことを主張している。

 

“敗北”である。

 

その全身が反ラリスキャニアを訴えるメッセージで覆われているところをみると、この人物はいわゆるラリスキャニアの“アンチ”であるらしい。

 

だが、正確にはそれは“アンチだった”と過去形で語るべき事柄だった。

それがなぜかは、一目で理解することが出来る。

 

なぜなら“彼”は、その全身を青い糸で縛り上げられ、しかも同時に、血の涙を流しながら“ラクルラールさま万歳!”と書かれた大きな旗を、振り回しているからだ。

どう見ても、アンチがどうとか語れるような状態ではない。

 

「ほら、こいつは民衆がいかに移り気で愚かかを示す、良い証拠。

まさに生き証人だ。

食い詰めた探索者。

『上下』のどちらにも、落ち着くことができない厄介者。

嫉妬、自己顕示欲、傲慢さの塊(かたまり)。

そして、ティリビナ人のように己を保証してくれる伝統や歴史すら持ちはしない。

こいつの正体を知っているか?

――『虚無(からっぽ)』だ」

 

「『虚無(からっぽ)』なんて!

そんなことありません!」

 

「事実さ。

コイツには、何も無い。

己を認めさせたい承認欲求に、居場所を欲しがる所属欲求。

そのくせ、他人に認めさせるに足る何かも、居場所を勝ち得るために必要な代価も、何も持ちはしない。

それでも、再起の可能性が無かったわけではない。

だが、コイツは選択肢を誤った。

他者を貶(おとし)めて相対的に自分の地位を引き上げ、攻撃によって憂(う)さ晴(ば)らしをし、自分の欠陥(けっかん)を目に付いた相手に押し付けることで、その改善を怠(おこた)った!

そうだ、コイツは、典型的なアンチ!

どこにでもいる(ゼオータイル)衆愚の代表(サンプル)なのだ!

不備のある脳、周囲との衝突を絶えないものにしている『呪文』(ことば)の不足、『使い魔』(かんけいせい)を構築する努力の不足とそれがもたらす引っ込み思案の負の螺旋(スパイラル)!

そして、偏見に塗(まみ)れた『邪視』(まなざし)によって、辺(あた)り構わず被害をもたらす!」

 

教育の魔女は、重ねて断言する。

 

「もしコイツに少しでも才能があれば、間違いなく『小鬼』になっていたことだろうし、『下』の住人であれば絶対に『異獣』として“処理”されていたことだろう!

コイツはどこにでもいる最低人類(ボトムズ・ピープル)、たまたま生物のカタチを取っているだけの悪意生産機(ミーム・ウィルス)に過ぎん!

コイツに比べれば、botの方がまだ創造性がある!

ラリスキャニア、貴様が頼みにしている『ファン』と言うのは、所詮はこの程度の愚民でしかないのだよ!」

 

女教師は、そう言い放つと大声で笑った。

しかし、『ラリスキャニア』“たち”は、それにも揃(そろ)って言い返す。

 

「「たとえそれが本当だとしても、貴女がそれを嘲笑って良いはずがない!

そんな資格なんて誰にもありはしない!」」

 

だがそれでも、やはりラクルラールは揺るがない。

 

「いや、あるさ!何故なら、私は人類(ロマンカインド)全ての教師だからな!」

 

彼女は、そう力強く叫ぶや否や、全ての配信窓を操作した。

海のように一面に広がる枠が一斉(いっせい)に変化し、無数の動画が、モザイク画のように大きな模様を描き出す。

改めて確かめる必要はない。

それらはすべて、見慣れた映像だった。

 

もはやお馴染(なじ)み、今は亡(な)き、ラクルラール学園の広告(CM)動画。

それらは、少しずつ『ラリスキャニア』たちへの否定(ディス)のイメージを加えつつ、圧倒的な情報圧を以(も)って、反逆者たちへと襲いかかって来る!

その行使に、どんな人々の精神(アストラル)体がどれほど酷使されているのか…それはもうわざわざ記述するのが躊躇(ためら)われるほどの、惨劇であった。

 

けれど、地下アイドル“たち”は、その情景に目を向けもしない。

今、彼女“たち”が注目するのは、目前のただ一人のみ。

『ラリスキャニア』は、必死に“彼”に呼びかける。

 

「ねえ、キミ、大丈夫かい?

さあ、苦しいだけの先生の“授業”なんて抜け出して、

戻っておいでよ」

 

だが、それに応えるのは、女教師の嘲笑(ちょうしょう)のみ。

 

「馬鹿め。

こいつは文字通り『他界』した“死に体(たい)”だ。

今更貴様がいくら呼びかけたところで、全て無意味!」

 

それでも、『ラリスキャニア』"たち"は力強く呼びかけ続けた。

 

「手紙、読んだよ…!

“ブラックハム”くん、だよね?」

「キミの文章には、言葉には確かに“熱”があった。

あんなに怒りを、憎しみを抱(いだ)くことが出来るのなら、きっとキミには、大事なことがあったはずだ!

それをちょっと有名だからって、呪術師(たにん)なんかに利用させちゃいけない!」

 

けれどやはり、言葉は届かない。

とは言え、反応が全く無いわけでもない。

地下アイドル“たち”が、声をかけるたびに、黒ブタは身体の震えという形で、外界に反応をもらしている。

しかしそれは、言語表現にならない、反射的にも思える身体反応でしかなかった。

後者の呼びかけに至っては、頭をかかえて縮こまろうとするくらいだ。

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