幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「ボクは、苦痛(きず)を讃えるために演技(ひょうげん)するんじゃあない」
ラリスキャニアは、まず問題の中心に切り込むことにした。
元々自分は【呪文】が苦手な方だ。
相手を煙に巻くだけならともかく、心からの感情を表現するなら、【呪文】(ことば)よりも【肉体言語魔術】(おどり)の法が良い。
「では、なんのために?」
だから、放つ【呪文】(ことば)には、技巧など無い。
「忘れないために」
「忘れないため?」
ただひたすらに、率直に、選びこそすれ、飾りなく。
「栄光や成功を手に入れるためには、時には苦痛に向き合わねばならないことを。どんな悲惨な境遇からも、抜け出してきたという誰かの栄光を記憶にとどめ、これからに活かすために」
「そして、ボクは、今と今から続く明日のために、過去の悲惨を語るんだ」
ラリスキャニアは、語るのだ。
だが、それでも悪魔(アキラ)触手は、渋い顔をしたままだった
「どうだろうな。そうやって苦痛を自分から求めたがるようなヤツこそ、誰かを知らないうちに傷つけたり踏みつけにしたりしているかもしれないぞ」
その言葉も、まだまだ冷たい(クール)なままだ。
「まるで、そんなヤツに恨みでもあるようだな」
ボクに喧嘩を売ってるなら、いつでも買いつけるぞ、と言わんばかりのラリスキャニアの視線を右手で受け流し、悪魔(アキラ)触手は、ぬるりと返した。
「……ただの一般論だ。他意はない」
「そうか、一般論ね」
「ああ、そうだよ…」
険悪になる場の空気。
と、そこへ
「ちょっ、ちょっと待ってくださぁい、す、すこしおちつき、うあ、ませんか?」
なんと、再び介入する者が現れた。
"彼"は、頭上から声をかける。
「この議論、こうして舞台裏で話し合っていても、埒が明かないと思うんです。どうでしょう?舞台を再開して、実際に適切かどうか判断した方が、うあ、悪魔(アキラ)触手さんも納得しやすいのではないかと思うんです。いかがでしょうか?うわ、の、のびるぅぅ」
「ああ、異存はないが…」
「どうしてそんな格好に?」
首をかしげる"二人"の前…もとい頭上に現れたのは最後の登場人物、天使(レオ)触手である。
第五階層の有名人、『公社』のトップを模して創られたはずの彼は…なぜか彼女たちの頭上にいた。
しかも、その身体はなんかすごい勢いで伸びている。
「こ、これはですね、なんだかさっきから急に…うわどんどんのびーる!世界が、世界が回って見えます!」
「落ち着け、今助けるから」
悪魔(アキラ)触手が、つる草のように螺旋を描き始めた天使(レオ)触手を助けているあいだに、ラリスキャニアは、現状を見守り、冷静に分析しようと試みていた。
「話を引き伸ばしすぎたかなぁ……」
とはいえ、ロクな結論は出なかったのだが。