幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第170話 始まりの舞台(ステージ)たるその場所だから、(その2の33~34の途中まで)

動揺する女教師に、ラリスキャニアはまた静かに語りかける。

 

「これはもっと単純な話ですよ、先生。

だってこれは、ボクらが生まれ育った故郷なのですから」

 

「故郷だと!?」

「そう、故郷を夢に見るのは、当たり前(ゼオータイル)なことでしょう?」

 

そう、その通り。

 

その情景こそは、アイドル迷宮。の当たり前(ゼオータイル)

彼女“たち”地下アイドルの“故郷”そのものであった。

 

思えば、説得の最中『ラリスキャニア』の影にあまり動きが無かったのは奇妙なことだった。

これまでの流れからして、それもまた彼女の分身の一つに違いない。

ならば、やろうと思えばその数を増やしたり、もっと能動的に動くことはいくらでも出来たはずだ。

『実体』があれだけ熱心だったのに、こちらがそれに追随し唱和するだけだったのは、実におかしいことであった。

 

その裏事情こそが、この『浄界』の改変(アレンジ)である。

『実体』が言葉を重ねる裏で、『影』は足取り(ステップ)と言う肉体言語呪文によって『浄界』に手を加える下準備をしていたのだ。

それを、強化形態、進化、あるいは単に“成長”と呼ぶべきなのか。

 

そもそも『ラリスキャニア』は、未熟な『浄界』使いである。

彼女の用いているソレは、決して真の『浄界』とは呼べはしない。

 

たが、今回は逆に、その未熟さこそが功を奏した。

彼女は、『未熟』だったからこそ、『成長』することが出来たのだ。

未完成だったその『浄界』は、それだからこそ、こうして新しい定義(イメージ)を後付け出来た。

そして、新たな姿を以(も)って強敵を迎え撃つことが可能となったのである。

それは、劣っている者、『敗北者』こそが持つ、可能性の一つ。

 

そう、奇(く)しくもそれこそは、今さっきラクルラールが全否定した希望(ベクトル)そのものであったのだ…!

 

それに対しても、女教師はなお反射的に否定の呪文を投げつけ、その破壊を試みた。

 

「だが、そんなことをしたところで何になる!」

 

しかし、それは

 

「意味なんてありませんよ!

ただ、楽しいからです!

さあ、踊ろうよ!」

 

見事に、無効化されてしまう。

 

そうして、誘いの言葉を放つや否や、『ラリスキャニア』“たち”は、軽やかな足取り(ステップ)で歩み始めていった。

 

とは言え、そう簡単には物事は進まない。

なにしろ、肝心の黒ブタアバターはと言えば…足元に打ち寄せる迷宮の機構(システム)、虹の波に対応することも出来ず、ただただ佇(たたず)んでいるだけなのだから。

 

「なにを偉(えら)そうに!

そんなやり方で、どこまで自己同一性(アイデンティティ)を保てる!心の質(クオリア)を保持出来るというのだ!」

 

だから、その隙を好機と見て、博識なるラクルラールは更に指摘を以(も)って追撃を加えた。

 

「加えて、そんなやり方では同時に“二人”でい続けることも出来まい!

皆のイメージを集約する以上、再演されるのはあくまで“一人”だけ!

さあ、敗北を認めろ!

跪(ひざまず)き、私に許しを乞(こ)うが良い!」

 

けれどそれも、即座に反論によって迎撃される。

 

「まず、その“一人”の定義が間違っています!

アイドルは多様性!

複数の顔(ペルソナ)を持つアイドルなんて、それこそありふれて(ゼオータイル)です!」

 

「リズムが同じなら、『ラリスキャニア』の範囲は無限大です!

子豚ちゃん(ファン)たちが囲み、踊るその中心こそが『ラリスキャニア』!

分身アイドルに、多少の人数のブレなんて関係ありません!」

 

“二人”の瞳には十字の輝きが宿り、ラクルラールの呪文と青糸を跳(は)ね返す。

 

そしてそのまま『ラリスキャニア』たちは、それぞれ軽妙なステップを踏みながら、黒ブタに対し、再度の説得(カウンセリング)に取り掛かったのだ。

 

まず、その呼びかけはこう始まる。

 

「キミは、誰かに訴(うった)えることで自分を印象付けたかったんだよね、分かるよ」

 

と、そう『ラリスキャニア』は、無神経にも思える"共感"を示す。

そこへもう一人が捕捉する。

 

「つまりは認知を求めている――ボク"たち"とおんなじだ。」

 

当然、そんな姿勢は手厳しい批判を免(まぬが)れない。

 

「くだらん!

アンチの懐柔(かいじゅう)など何になる!

この徒労(アクション)を経て、ようく分かったろう?

完全支配こそが唯一の平和、確かな承認と『王国』(いばしょ)の獲得方法だ。

それ以外に道はない!

他に幸福な未来へと続く選択肢など皆無なのだ!」

「いいえ!」

「それは違います!」

 

"二人"は否定する。

 

「どんな地下アイドルも、いつか集団(ハコ)に入り、運営の方針に従うことがあるかもしれない。

資本家(スポンサー)の指示や広告(イメージ)を演じなければならないときも来るかもしれない。

けど!」

「それでもボクらはアイドルを貫きます!

だってアイドルは"表現"そのもの!

舞台上の『夢』そのものなんですから!」

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