幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
まあ、今回の場合は比較的安価な製品であるため、夢から覚めれば元のままであろう。
とは言え、そもそも右腕切断は夢での傷。
それを完全にリカバリーし、後遺症さえ残さないのは、かなり貴重かつ強力な技術ではあるのだが。
何もかもが曖昧(あいまい)で、どんなダメージにも取り返しがつく。
それこそが、夢。
しかし同時に、負ければその痛みと“死”は紛(まぎ)れもなく本物でもある。
それこそが、アイドルの舞台(ステージ)なのだから。
※幻痛による反動(フィードバック)も恐れずに、ほいほい腕を斬ったり再生したり出来るのは、機械女王のバックアップとラリスキャニアちゃん個人の変身能力あってのことです。
良い子は真似(まね)しないでね!
話を戻そう。
コーデの進化。
『ラリスキャニア』“たち”は、新しいドレスをまとう。
それは、第五階層十四番目の始祖吸血鬼を自称する彼女の悪徳、“邪悪なカルト教団の教祖”という前世をアレンジして着こなしたドレス。
前世と今世、教祖(アイドル)と偶像(カリスマ)
『ラリスキャニア』の二つの姿を、そのまま同形二着の衣装(ドレス)に変換したもの。
光と闇の交換可能性を象徴する、二種一揃(にしゅひとそろ)いの換装。
提携ブランドに許可を取るのに手間取ったため、着装が遅れはしたが…それは確かに彼女“たち”の新しい衣装(スタイル)だった。
生の欲動(リビドー)と死の欲動(デストルドー)
対を成す姿、双子の欲動(パッション)の揃い踏みである!
しかも、それにはまだ幾(いく)つもの“仕掛け”があった。
まずは、
「竜の意匠(デザイン)…アルト王の引喩か」
それは、偉大なる古代の理想郷(げんそう)
『竜王国ガロアンディアン』の再演。
すなわち、この第五階層(シナモリアキラ)への帰属と尊重(リスペクト)の表明。
そして、先述したように双の地下アイドルたちの切断されたはずの右腕は、ドレスが変形した擬似触手――義触手によって補われていた。
これぞ、『鎧の腕』――最も高みを自負し目指し続ける六王パーンの再演。
さらに双のアイドルが互いへの『愛情』を表現することで、ラフディ王マラードとルバーブを兼務(カバー)。
高く跳躍し、交互に愛犬を演じることで狂王子ヴァージルをも兼ねる。
そんなアイドル“たち”の瞳には、既に星座のような十字の輝きがあって、オルヴァ王と隠者の交代をこなしていた。
そしてもちろん、重大テロ誘拐犯として有名な『ラリスキャニア』には、マロゾロンドを奉(ほう)じるカルト教祖としての悪名――カーティスに通じる性質が、備わっている。
その前世についての詳細こそ未(いま)だ不明であるが、これも問題無い。
もはや今のアイドルの“二人”は、その印象(レッテル)を上書きしていくことに決めたのだから。
いかなる前科も悪名も、夢へと突き進む偶像坂(アイドルロード)の敵ではないのだ。
かくして六つの輝きが、双の共演によって華々しく舞台に表現される。
そう、『ラリスキャニア』“たち”は、六王を象徴する要素を持ったドレスによって、六つの伝統ある呪力を身に纏(まと)おうとしているのだ。
そのため当然、恐ろしいまでの呪力が吹き荒れ、六種に分裂して散ろうとするが、なあに、その問題も解決済みである。
最後に一瞬、藍色の光が“二人”のドレスを包み、六の統合を実現する。
これぞ、今回の換装最大の仕込み――謎のスペシャリストによる、最後の仕上げである。
実のところ、どうしてアイドル空間の近所で藍の色号の達人(匿名希望)をアルバイターとして雇うことが出来たのか…?
そう言った裏事情までは『ラリスキャニア』には不明である。
不明であるが、とりあえず手元不如意な凄腕呪術師と縁を作ることは出来た。
それだけは、れっきとした事実。
何やら政治目的や、猫だか竜だかのゲームとやらには決して使わないように念を押され、強力な呪術契約も結んだが…まあ、元よりそんなつもりは全く無い。
地下アイドルとしては、アイドル活動に使えればそれで良い。
舞台上でぶっ放されたミサイルやレーザーに対応したり、殺陣(タテ)を演じられるに足るだけの機能さえあれば、それで十分なのだから。
ともかく、その謎達人の天主級とも思える超絶呪術によって、本来なら不可能とも思えた新衣装は、こうして見事に完成を遂げた。
藍色の光――これまで『ラリスキャニア』が愛用していたドレスの魂(OS)と思い出(モーションデータ)の継承(ダウンロード)によって、六つの呪力(ミーム)は見事に束(たば)ねられたのだ!
しかし、あまりの唐突な切り札の出現に、女教師はすかさず抗議した。
「これが“アイドル王権”とでも言うつもりか!」
すかさず“二人”は言い返す。
「次は貴女を説得してみせます!
今度こそ、ボク"たち"のファンにしてみせる!」
「『ラリスキャニア』は、プロデューサーを必要としません。
ですが、マネージャーや宣伝サポーターならいつでも大歓迎です!
さぁ、共に更なる輝きを目指しましょう!」
それが、次なる論戦(じゅもんばとる)の始まりだった。
「馬鹿な!
思い上がるのもいい加減にしろ!」