幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
ラクルラールは、失笑と呼ぶにはあまりに大きな哄笑(こうしょう)と共に、その信念を言い放った。
「この世界に必要なのは、断じてお前のような頭の緩(ゆる)い阿呆(アホウ)などではない!
求められるのは、仰ぎ見られる唯一の星!
敵対者を徹底的に打ちのめし、支配し、奪い尽くし!
己が優越性を嫌、と言うほど知らしめし!
氷のような眼差しで、全てを睥睨(へいげい)するそんな勝者!
ファッションリーダーこそが頂点に君臨し、全てを支配するのだ!」
「仰がれたいなら、ボクからいくらでも仰いであげますよ、師匠(せんせい)!
そして、乗り越えていきます!」
「ほざけ!
そんな台詞(セリフ)は、全てを上回り唯一絶対の価値を証明した者だけに発言権がある!
ランキング最下位付近をうろちょろしている無価値な貴様などに、語る資格は微塵(みじん)も無い!」
女教師の呪文(ことば)は、批判の域を超えて個人口撃へと変わっていく。
だが、それでもなお『ラリスキャニア』“たち”は退(ひ)きはしなかった。
明暗の二人(デュオ)は、揃(そろ)いの衣装を輝かせ、対手の呪詛を弾きながら突っ込んでいく。
「量的な変化なんていくら積み上げても、質的な差異にはなりませんよ!」
「本当の価値は…魅力は心で決めるものです!」
「そんなもの、社会心理学(アカデミズム)や市場調査(マーケティング)に疎(うと)い者の戯言(タテマエ)だ!
需要は、権威と模倣で決まる!
有力(にんき)な呪力(ミーム)こそが、最大の勢力であり価値であることは、呪術的にも常識!
本来全てのものは、砂のように無価値ながらくたに過ぎん!
だがそれも、頂点なら話は違う!
無価値の積み重ねが、その足元にどれだけの無価値を踏みしだいているかが、その価値を決める!
一位こそが尊い!
頂点だけが正しく!そして価値があるのだ!」
「違います!
価値とは承認、認め合い、受け入れ、工夫し合い、共に作り出しながら支え合って生きることです!
それはあらゆる知性体の、いいえ、あらゆる生き物の自然(じねん)の姿!
依存と庇護の必要、そしてその裏面(りめん)である、養育(ケア)と言う在(あ)り方なのです!需要の多い少ないは、価値の本質ではないのです!」
「ローカルでも細く長く愛され続けているコンテンツなんて、いくらでもあります!
真に物事の価値を決めるのは、“数”や“量(PV)”ではありません!
どれだけ人の記憶に…心に残っているかどうかです!」
「綺麗事だ!
この世は誰も彼も、考えているのは自分のことばかり!
web漫画や小説を書くものは数あれど、わざわざそれらを読もうという読者はその半分もいない!
他のメディアに過処分時間を奪われるものを加えれば、比率はせいぜい、数パーセントといったところだ!
どれだけ細々と描いて承認を求めようと、利益や名声を生まなければ、最高の座を勝ち得る者に成れなければそれは無価値!
二位では駄目に決まっているだろうが!」
「一位になったものは、ただ順位が上と言うだけでなく、それ独自の価値があります!
そうでなければ、そこまで愛されるわけがありません!
他の作品だってそれは同じです!」
「オンリーワンとはナンバーワンになれなかった者の戯言に過ぎん!
長期連載は必ず途切れる!
ユニークを評価された漫画も長編小説も、読者は誰も読まないし、作者だって必ずそんな作品は見捨てるはずだ!
全ては無個性に流れる」
言い合いは、ひたすらの平行線を続けた。
しかし、それは次のやり取りで急に途切れる。
それは、
「だから踏みつける!
無価値を押し除け、『頂点』と言う唯一無二の価値を手に入れる!」
「けれど、ボク“ら”は違います!
それ以外の価値をたくさん持っています!
いいえ――」
「――抱えきれないほど、受け取ってきました!」
その言葉によって、女教師が気づきを得たからだ。
「そうか!
その呪力(ちから)の源は――!」
そこでラクルラールは、何もないように見える地下アイドルの周囲を薙(な)ぎ払った。
宙を走る糸が、たちどころに謎を暴き出す。
一度追い詰められ、消耗しきったはずの『ラリスキャニア』"たち"が、どうして今も反撃出来ているのか。
彼女"たち"を支えていたファンたちとのつながりは、確かに一度はラクルラールの手によって断ち切られていたはずなのに。
その謎の答えが、白日の元に晒(さら)される。
結果、宙空に浮かび上がったのは、いくつもの"祭壇"だった。
『日本語』で言うところの『仏壇』や『神棚』を思わせる呪術家具の一種である。
しかし、そこに祀られているのは仏でも神でもない。
そう、これが地下アイドル"たち"の反撃を支えていた水面下の支援。
出所不明、不可解な呪力源。
その答えこそが、これだった。
"二人"のアイドルは、誇らしげにその正体を答えた。
「ええ、これがボク"たち"の仲間との絆(キズナ)のカタチ!」
「"推し壇"支援です!」
「密かに他の地下アイドルとの接続を復帰させていたとはな!」