幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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176話 その夢の世界を広げていく(その2の38の途中まで)

ラクルラールは、失笑と呼ぶにはあまりに大きな哄笑(こうしょう)と共に、その信念を言い放った。

 

「この世界に必要なのは、断じてお前のような頭の緩(ゆる)い阿呆(アホウ)などではない!

求められるのは、仰ぎ見られる唯一の星!

敵対者を徹底的に打ちのめし、支配し、奪い尽くし!

己が優越性を嫌、と言うほど知らしめし!

氷のような眼差しで、全てを睥睨(へいげい)するそんな勝者!

ファッションリーダーこそが頂点に君臨し、全てを支配するのだ!」

 

「仰がれたいなら、ボクからいくらでも仰いであげますよ、師匠(せんせい)!

そして、乗り越えていきます!」

 

「ほざけ!

そんな台詞(セリフ)は、全てを上回り唯一絶対の価値を証明した者だけに発言権がある!

ランキング最下位付近をうろちょろしている無価値な貴様などに、語る資格は微塵(みじん)も無い!」

 

女教師の呪文(ことば)は、批判の域を超えて個人口撃へと変わっていく。

だが、それでもなお『ラリスキャニア』“たち”は退(ひ)きはしなかった。

 

明暗の二人(デュオ)は、揃(そろ)いの衣装を輝かせ、対手の呪詛を弾きながら突っ込んでいく。

 

「量的な変化なんていくら積み上げても、質的な差異にはなりませんよ!」

「本当の価値は…魅力は心で決めるものです!」

 

「そんなもの、社会心理学(アカデミズム)や市場調査(マーケティング)に疎(うと)い者の戯言(タテマエ)だ!

需要は、権威と模倣で決まる!

有力(にんき)な呪力(ミーム)こそが、最大の勢力であり価値であることは、呪術的にも常識!

本来全てのものは、砂のように無価値ながらくたに過ぎん!

だがそれも、頂点なら話は違う!

無価値の積み重ねが、その足元にどれだけの無価値を踏みしだいているかが、その価値を決める!

一位こそが尊い!

頂点だけが正しく!そして価値があるのだ!」

 

「違います!

価値とは承認、認め合い、受け入れ、工夫し合い、共に作り出しながら支え合って生きることです!

それはあらゆる知性体の、いいえ、あらゆる生き物の自然(じねん)の姿!

依存と庇護の必要、そしてその裏面(りめん)である、養育(ケア)と言う在(あ)り方なのです!需要の多い少ないは、価値の本質ではないのです!」

 

「ローカルでも細く長く愛され続けているコンテンツなんて、いくらでもあります!

真に物事の価値を決めるのは、“数”や“量(PV)”ではありません!

どれだけ人の記憶に…心に残っているかどうかです!」

 

「綺麗事だ!

この世は誰も彼も、考えているのは自分のことばかり!

web漫画や小説を書くものは数あれど、わざわざそれらを読もうという読者はその半分もいない!

他のメディアに過処分時間を奪われるものを加えれば、比率はせいぜい、数パーセントといったところだ!

どれだけ細々と描いて承認を求めようと、利益や名声を生まなければ、最高の座を勝ち得る者に成れなければそれは無価値!

二位では駄目に決まっているだろうが!」

 

「一位になったものは、ただ順位が上と言うだけでなく、それ独自の価値があります!

そうでなければ、そこまで愛されるわけがありません!

他の作品だってそれは同じです!」

「オンリーワンとはナンバーワンになれなかった者の戯言に過ぎん!

長期連載は必ず途切れる!

ユニークを評価された漫画も長編小説も、読者は誰も読まないし、作者だって必ずそんな作品は見捨てるはずだ!

全ては無個性に流れる」

 

言い合いは、ひたすらの平行線を続けた。

しかし、それは次のやり取りで急に途切れる。

それは、

 

「だから踏みつける!

無価値を押し除け、『頂点』と言う唯一無二の価値を手に入れる!」

 

「けれど、ボク“ら”は違います!

それ以外の価値をたくさん持っています!

いいえ――」

「――抱えきれないほど、受け取ってきました!」

 

その言葉によって、女教師が気づきを得たからだ。

 

「そうか!

その呪力(ちから)の源は――!」

 

そこでラクルラールは、何もないように見える地下アイドルの周囲を薙(な)ぎ払った。

宙を走る糸が、たちどころに謎を暴き出す。

一度追い詰められ、消耗しきったはずの『ラリスキャニア』"たち"が、どうして今も反撃出来ているのか。

彼女"たち"を支えていたファンたちとのつながりは、確かに一度はラクルラールの手によって断ち切られていたはずなのに。

その謎の答えが、白日の元に晒(さら)される。

 

結果、宙空に浮かび上がったのは、いくつもの"祭壇"だった。

『日本語』で言うところの『仏壇』や『神棚』を思わせる呪術家具の一種である。

しかし、そこに祀られているのは仏でも神でもない。

そう、これが地下アイドル"たち"の反撃を支えていた水面下の支援。

出所不明、不可解な呪力源。

その答えこそが、これだった。

 

"二人"のアイドルは、誇らしげにその正体を答えた。

 

「ええ、これがボク"たち"の仲間との絆(キズナ)のカタチ!」

「"推し壇"支援です!」

 

「密かに他の地下アイドルとの接続を復帰させていたとはな!」

 

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