幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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177話 だから、それは決して逃避ではなく(その2の38~39の途中まで)

その"壇"に飾られていたのは、無数の『ラリスキャニア』グッズだった。

類感呪術の基礎、似たものによる呪力の遠隔供給である。

おそらく、事前に何らかの方法で受け渡していたものを使ったのだろう。

その出来は、かなり急ごしらえではあった。

 

だが、それでも実用には足りたのだ。

そのことは、これまでの経緯から十分にうかがうことが出来る。

 

確かに、これらのシステムを構築した地下アイドル空間のアイドルたちは、(平均的には)呪術の達人というわけでは決してない。

だが、それでも彼女たちは、それなりの練度を誇る呪術の使い手であり、探索者の厄介ファンとの戦いをもこなす実践的な戦闘者でもあるのだ。

 

しかも、基本的に孤立無援な地下アイドルたちは、大道具や小道具、音響機材などを自作したり自分で調整・修理することも日常茶飯事(にちじょうさはんじ)

もちろん、配信活動などを常とする者も多い。

だから、彼女たちにとって、このような緊急時のリカバーは、手慣れたものであったのだ。

 

そして、水面下の秘密が暴かれると同時に、本格的に支援が再開された。

それぞれの地下アイドルたちの拠点との再接続(リ・コネクション)

それぞれのファンへの支援要請。

更にそこに、ラクルラールの支配から解放された、彼女のファンたちの支援も加わっていく。

プレゼント箱が、飴玉が、チョコレートが。

色付きのメッセージが、伝言を伝えるクマやウサギのぬいぐるみ使い魔が!

次々と、配信窓から投げ込まれる!

そしてそれらは百色の大瀑布、いや、万色の大潮流と成り、津波となって押し寄せる!

“二人”の『ラリスキャニア』は、そんな一面の激流を背景に踊り狂っていた。

 

だがそこへ、冷徹な指摘が再び飛んだ。

 

「手旗信号か」

「っ!?」

「その程度、この教師(わたし)に見抜けないと思ったか!

まさか、観客の反応に応じた変化の演出とはな!

この私に、準備不足の即興劇(インプロ)で挑もうというのか!」

 

そう、地下アイドルがやっていたのは、手の動きを用いた原始的な肉体通信であった。

“推し壇”を通じた呪術的交流と、協調による演技(パフォーマンス)の強化。

密(ひそ)かな相互の交信、その“伏流”こそが、『ラリスキャニア』に対する外部からの呪力(ミーム)の供給を行(おこ)なっていた。

すなわち、現時間(リアルタイム)での演技(パフォーマンス)の変化・調整と、質(クオリティ)の大幅な向上を可能としていたのだ。

他のアイドルたちとの交流(コラボ)、そして復活したファンたちとの応答(コール・アンド・レスポンス)こそが、呪力となって今の『ラリスキャニア』を支えている。

 

そこへ更に、ラクルラールから痛烈な批判が、追い撃ちで放たれる。

 

「愚かな!

カルト教祖の前世をアレンジして取り込んだり、たまたまアンチを一人引き込んだ程度でいい気になるとは、救いようのない愚かさだ。

『悪』とは、『正義』や『善』と言った概念がある限り存在するその影、何かを目指し維持することの副産物(コスト)

それとの『共生』や利用など、そうそう上手くいくわけがない!

お前がやっていることは、見栄(みば)えが良いだけの誤魔化しに過ぎん!」

 

これは、流石(さすが)に地下アイドルに衝撃(ダメージ)を与えた。

一対の『ラリスキャニア』のうち、黒い海底触手のドレスを身に纏(まと)った“陰(かげ)”の方が、少しよろめく。

 

だがそれも、事なきを得た。

 

もう一人の方、陸の植物触手で身を包んだ“陽(ひかり)”が、すかさずその体勢を支えたからだ。

その勢いのまま、彼女はこう言った。

 

「…誰もが罪を犯し、誰もが過去に追われ押し潰されている!

けど大丈夫!

それをボクが、ボク“たち”が否定する!

前世がテロリストのこの『ラリスキャニア』が!

みんなみんな、生まれ変わることが出来るって、やり直すことが出来るって証明してみせるんだ!」

 

「ハッ、アルマの…四英雄コルセスカの使い魔のことを見落としているな!

アレがラフディボールで袋叩きに遭(あ)い、その反撃でディリビナ人を大量殺戮したことを!

操作された?

どうしようもない前世の業(ゴウ)?

そんなものは言い訳に過ぎん!

あれこそは、槍神教の血塗られた教義と縁が切れていないことの何よりの証(あかし)!

未(いま)だにズブズブ関係だということの、何よりの証拠ではないか!

まだまだあるぞ!

かつて赦されて、機械女王にかしづいていたはずの元公社トップのロドウィは今どこにいる?

イアテムを引き込んだ言語魔術師は、もう二度と裏切らないのか?

グレンデルヒや六王と言った元敵対者は、本当に味方として制御出来ているのか?

増殖し、各勢力や暴走する化石魔女に利用され続けるシナモリアキラは、無視出来ない獅子身中の虫ではないのか?

次々と流入する住民たちは、忘れられない歴史(トラウマ)を自己同一性(アイデンティティ)として保持し続け、対立と分断を引きずり続けてはいないのか?

第五階層は火種ばかり、炸裂寸前の火薬庫だ。

そんな場所で、『更生』や『融和』を説いて何になる!

人は、過去を乗り越えられない!

虐待を受けて育った子供のように、永遠にその傷を抱え続け、蹲(うずくま)り続けるだけだ!」

 

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