幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「時代は変わる、どんなものどんな理想郷も、変わってきたしこれからも変わり続けるでしょう!
だから、アイドルも変化と進化を止めなければ、その変化した新しい理想の世界に受け入れられることだって、きっと出来ます!
進化を忘れないアイドルなら、どんな未来だってやっていけるはずです!」
「第五階層の破滅はどうする!
それがお前の恐怖だったはず!」
その叫びと共に、ラクルラールは眼下を指差した。
遥(はる)か下、夢世界の学園跡地では、今も『ラリスキャニア』 の悪夢が蠢(うごめ)いている。
それが表(あらわ)すのは、戦争によって焼けだされ苦しみの中で滅びていく未来(かのうせい)に対する恐怖。
それはまさに、ラクルラールが指摘した“すり潰される”ことの象徴のような情景であった。
だが、その恐怖そのものでしかないイメージを前にしても、“二人”は決して退(ひ)かない。
立ち止まることもない。
「政治のことは分からないしやる気もないので、政治専門のヒトに委託(アウトソーシング)します!
アイドルカツドウから離れてまでやってるんですから、きっとそれぐらいの自信と実力ぐらいはあるのでしょう!
本当にダメだったら流石に逃げますが、まあそれまでは、せいぜい期待しないでお任せしますよ!」
「ボク"たち"はボク"たち"に出来ることを!
アイドルにしか出来ないことをするのです!」
「それが、ボク"たち"の"平和政策"!
未来を受け止める生存戦略です!」
恐怖を感じないわけではい。
今も、震えがある。
だが、手を握ることが出来る。
ファンもいる、同僚もいる
何より、ずっと影(パートナー)が居てくれる。
誰よりも馴染みで、何より親しい“友達”が。
お互い手を握り合えば、震えを抑えていける。
たとえそれが、幻想でしかないとしても。
それに――
「アイドル愛があれば、きっと分かり合えます!」
「アイドルは承認欲求に飢えています。
常に飢餓状態(ハングリー)
けれどだから、だからこそ!
救い手(セイヴァー)たる資格がある!」
「だって救われたい観客(みんな)だって、それと全く同じなんだから!
なにしろ、この世界には、絶対的に不足しています!
承認と養護(ケア)が!」
“彼女たち”には、支えがある。
たくさんの、支えが。
そこへ、再度の指摘、いやもはや『糾弾』と言って良いほどの叫びがぶつけられる。
「さっき言ったことをもう忘れたか!
『承認』も『価値』も結局は数量だ!
多様性や“個性の尊さ”など所詮は弱者の戯言に過ぎん!」
「それは違います!
お金は第二の価値基準、次善に必要な“必要チケット”であって、人の望みを充分に満たす“充分チケット”ではありません!
多少補完は出来るにしても、真の取り引きには使えないのです!」
「充分チケット?真の取り引き?
お前は一体何を言っているんだ?」
師の批判(ツッコミ)に、その元弟子は自信を持って応えた。
「愛です!
推しへの愛こそが、アイドルファンとしてそしてアイドルとして最低限の、そして最も必要な通貨(チケット)なのです!」
少なくとも、理想としてはそうでなければならない。
「アイドルの価値は、そしてアイドルファンみんなの価値だって、そんな単純な数量(スカラー)なんかに還元出来るわけがありません!
貴女は、砂漠で札束を積み上げれば、水より『価値』があるとおっしゃるのですか!
一つの古代の粘土版があれば、たくさんの漫画は必要がないと、本当にそうお考えですか!」
「それに、アイドル一人ひとりの需要(ニーズ)は異なるもの!
共通点こそあれど、交換可能性など誰にもありません!
みんながみんな、唯一無二(オンリーワン)なのです!」
“二人”は、共にありったけの熱量を込めて反論に努(つと)める。
「アイドルにとっては、ファンのみんなが義触手(てあし)も同然!
みんながボクの、そしてボクがみんなの『三本足』です!」
「アイドル(ボクら)は、認められ、価値を得るためにファン(みんな)を必要とし、そしてファン(みんな)もアイドル(ボクら)を必要とする!」
「アイドルと承認欲求、それがボク“たち”なりの!」
そこで、また“二人”は、声を合わせる。
「「『絶対言語』です!」」
「だから、政治のことは、人一倍承認欲求がありそうな女王様にお任せしまちゃいます!」
「なんかすごいロボらしいので、きっと大丈夫ですよ。
ロボなので!」
そこで地下アイドル“たち”は自分たちの政治的無力さと無知を口実(イイワケ)にして、【避呪】系の呪文を放った。
『杖』が苦手なものの一部が持つ“精密機械に対する盲信的な信仰”を利用し、言説の強化を図(はか)るという寸法である。
それは、トリシューラ個人への信頼は特に持たないと言う表明であり…同時に、これ以上無いほどの支持の表明であった。
政治に対する無関心=全面依存を明言すると言うスタンスである。
まあ、これはこれで一つの責任の取り方であることも、また事実ではあった。
言ってみれば、これは証券会社や投資家に資産運用を委任するようなもの、機械女王への一点賭けなのだから。
もちろん、それは政治への参加や干渉を当然とするような者たちから見れば、眉を顰(ひそ)めるような怠惰さではあったが…これはこれで政治に対する姿勢(スタンス)ではある。
しかも、今回のその意見表明の対象は、よりによって“あの”第五階層。
『上』の傀儡国家との呼び声も高いこの地において、果たして真面目な政治参加がどれだけの意味を持つのかは…意見が、大(おお)いに分かれるところであろう。
だが、それでもそれはれっきとした政治表明であり、“彼女たち”自身が定めた立ち位置(ポジション)であった。