幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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180話 天への飛翔②(その2の42の途中まで)

そして“二人”は、声を揃(そろ)える。

「「これがボクらの“自律/自立”!」」

 

地獄の底から響くかのような声が、それに応じる。

 

「ならば、その“自立”とやら、どこまで持つか確かめてらろう!

真に自立した存在である、このラクルラールがな!」

 

女教師は、そう言うが早いか有言実行に出た。

こちらも六王の要素を再現したドレスを身に纏ったのだ。

しかも、

 

「こ、これは元から用意していたものじゃない!?」

 

「“織り上げて”いるんだ!

たった今、この場で!」

 

と言う、相変わらずの超絶技量である。

 

「言ったはずだ!

その程度なら私にも容易だと!」

 

そして、数『秒』もかからずに、見事なドレスが完成した。

その恐ろしい有様に、思わず地下アイドル“たち”も反応せざるを得ない。

 

「全身に六王の顔が…!」

「しかも、残らず虐殺している…!?」

 

そう、それは歴史に対応し、常に他者の血と涙を流し続ける呪われた装束であった。

その等級(クラス)は、恐らく『鉄』

 

だが、それから感じられる圧力は、あるいは再生者の王子の『黄金』に匹敵するかとも思えるほどのものであった。

アイドルドレスの持つ呪力(ミーム)は、単純な品質(スペック)だけで測(はか)れるものではない。

それは、“場”の状況、着用者との相性、そしてその舞台の内容とのマッチングといったTPOによって、いくらでも上下し得る変動性の魅力(パワー)なのだ。

今回の場合は、歴史知識や惨劇・恐怖(ホラー)演出、敵対者との“合わせ”の成立などがそれに当たる。

 

しかも、こちらの義手も特製であった。

それは、十二本の腕や前脚が交互に入れ替わる幻想仕様。 

常に痙攣(けいれん)するかのように震えるその指からは、念写の要領で絶(た)え間なく文字が流れ出している。

その機巧(ギミック)の正体は、恐らく印字装置(タイプライター)

この震えは、霊感にうなされる芸術家のように、呪的な文字を無限に書き出す『自動書記』を可能とする、独特なメカニズムなのだ。

そして打ち出す文字は、定型にして無意味なる例の一文。

 

『言理の妖精語りて曰く、』

 

なぜか緑インクで印字されるその文字列は、何行も女教師がなびかせる漆黒のマントの上を流れ、しかも同時に何行も打ち出される。

 

その有り様は、まるで闇夜を照らすイルミネーション。

それは、数の力で無理矢理“把握不可能な幻想”を創り上げ、それにて力業で押し切る、言わば“物量呪文”であった!

 

だが、“二人”にも“手”は残されている。

それはもちろん、元々眠っていた“潜在能力”などではなく。

 

〈受け取りなさい!〉

〈〈がんばれー!〉〉

 

アイドルたちからの支援。

外付けの義手(よりょく)であった。

 

次の瞬間、視界の全てを光が切り裂いた。

夢の世界で、白が舞う。

それはまるで、散り広がる花びらの嵐。

紙吹雪のように、無数の紙片が飛び交っていた。

 

それについて、“陸”の『ラリスキャニア』が、すかさず解説を加える。

 

「このたくさんの“手紙”が見えますか?

これは、ボクたち元ラクルラール学園の生徒から、貴女へと贈る卒業証書。

離別の宣言と、感謝の伝言(メッセージ)です。」

 

「感謝?

感謝だと!」

 

「ええ、そうです。

確かに、あの学園生活は酷(ひど)かった。

強制された矯正、老若男女を問わない監禁と共生労働、そして特定文化と習俗の押し付け…アレは、洗脳的な教育というかまさに洗脳でした。

いかなる同化政策も、あそこまでは徹底してなかったでしょう。

“魂の虐殺”と呼ぶヒトさえいるほどです」

 

それはまさに、歴史的な蛮行であった。

だが、話はそれで終わらない。

 

更に、“海”の『ラリスキャニア』が、その深海の底を思わせる暗黒の姿を以(も)って、説明を補足する。

影の地下アイドルは、その指によって“表”の理屈以外のものを示唆(しさ)していた。

理屈や“正義”以外のものも、この世界には確かにあるのだ、と言わんばかりに。

その指の差す先には、弾け飛び、降り積もっていくたくさんの小さな青い光がある。

その輝きは、あらゆる地下アイドルとそのファンたち――第五階層の全てのヒトビトが、女教師の呪縛から解放されていく、その確かな証(あかし)であった。

それは、例の『ラクルラール事変』がどれだけ多くのヒトビトを捕えていたか、そして今や乗り越えていっているか、ということを沈黙のまま、雄弁に示していた。

 

「貴女から学べたこともたくさんあって、学園生活だって、楽しいこともいっぱいあった」

 

第五階層に集ったヒトビトは、一度、その全てがラクルラールによって洗脳・監禁され、学生としていいように扱われた。

しかし同時に、それら全てが、同じ学園で共に机を並べ、競い合い、仲を深めてもいた。

皆、学友となったのだ。

それが、いかなる深謀遠慮に基づいていたのか、超越者たちの野望が関わっていたのかなどは、今はまだ分からない。

 

けれど、確かなことが一つだけある。

それは…

 

「どんな最悪の経験からでも、学べることは常にあります!」

「貴女の教えの多くは間違っていたかもしれません。

それは結局、みんなが前へ進むためには、否定されてしなければならない過去(つみ)なのかもしれません。

けれど…」

 

「「みんなきっと学園のことは忘れません!

貴女のことだって!

その記憶に、恨みと憎しみだけしか無いわけじゃありません!

そこには、ちゃんと感謝や愛情だってあるのです」」

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