幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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183話 天への飛翔⑤(その2の43~44の途中まで)

そこへ、蜘蛛の糸が垂れてきた。

拡張現実映像伝言(メッセージ)

その内容は、おなじみの広告(PR)

あまりの場違いな障害の発生に、地下アイドルは苛立(いらだ)ちを隠せない。

 

だがそれも、今回ばかりは無視することが出来ない内容だった。

なぜならそれは……

この窮地を脱出出来るかもしれない、可能性だったから。

 

それは打診。

内容は、シナモリアキラになるかどうか。

すなわち、SNA333(グループ)加入の誘い。

付記された短い説明には、このまま間接的にサイバーカラテ道場を利用した場合の勝率が記(しる)されていた。

その数値、ほとんどゼロ。

外部ツール的な情報支援は、本来想定されていない仕様外(イリーガル)に過ぎない。

サイバーカラテが得意とする臨機応変な呪術戦がしたいなら、直接サイバーカラテそのものを使うべき。

それは、極めて論理的な正論であった。

 

けれど、問題が一つ。

サイバーカラテを使うとは、自己同一性(アイデンティティ)の変容をもたらす行為である、と言うこと。

ともすれば、それはすなわち自己放棄という別種の敗北を意味しかねない。

人生路線の変更・自己の変革は、芸能的な"存在の死"に成りかねないのだ。

 

とはいえ、現状がピンチであることにも変わりはない。

尊厳(プライド)を捨ててシナモリアキラとなりピンチを打ち破るか、それともこのまま触手をこまねいて消滅の道を選ぶか。

『ラリスキャニア』に、決断の時が迫っていた。

 

 

「「うわぁぁぁい!」」

 

そして、選択は即答で対処された。

選ばれた答えは、第三の選択肢。

 

"手持ちの材料で出来るだけ頑張る(ブリコラージュ)"である。

 

「右腕の管理権だけを、他のアイドルに託しました!」

 

呪的発剄、あるいは化剄(かけい)

"二人"が奇声を発したのと同時に、義手となった『ラリスキャニア』の右腕だけが、独(ひと)りでに動いて、巨大な鉄腕を逸(そ)らしていた。

 

巨大な質量と一緒に、アイドルとして大事なキャラや可愛げまで投げ捨ててしまった気もしなくもないが…ともかく、当座の防御は大成功だ。

間接的に発揮されることで支援の動きが弱体化するのなら、直接に限りなく近い形になるよう補助をすれば良い。

それは、呪術的な護身(セキュリティ)原則を無視した掟破りの防御策であった。

発想そのものは、きわめて単純。

だが、肉体そのものを他者に操作させるというのは、この場合実に効率的な解決策だった。

なにしろサイバーカラテというのは、元からして補助的な人工知能(たしゃ)に肉体を委(ゆだ)ねる武術。

そもそもこうした事態を前提として、開発されている技術だからである。

効果的に機能するのも、当然の話であった。

 

もちろん、そこへ更なる追い打ちが来る。

ラクルラールの髪が急激に伸び、幾筋(いくすじ)かに収束。

そしてその先に、まるで蠍(サソリ)の尾のような毒針を、これみよがしに生やしてみせたのだ。

 

しかし、その状況に合わせ、新たな変化が起きる。

地下アイドルたちに、配信窓から不可思議な光が差した。

ここへ来て、『ラリスキャニア』に支援者たちからの通信が来たのだ。

発信元は、取りまとめを買って出た、地下アイドル空間の代表者。

多忙な彼女は、この局面に対し全力を注ぐことは到底出来ない。

だがそれでも、少人数での戦闘やパフォーマンス、すなわち情報関係の統括ぐらいならば、その多忙さの片手間でも充分に可能だったのだ。

 

その発言に、曰く。

 

〈私の支配領域でマラードか。

流石の挑発ね……

良いわ、乗ってやろうじゃない〉

「え?」

 

その時、『ラリスキャニア』は、頭部に謎の引きつりを感じて、周辺視野に注目した。

すると、髪に違和感がある。

どうやら、勝手に伸びて蜘蛛脚あるいはイソギンチャクのように展開しているようだ。

まるで、眼の前の女教師の鏡写しである。

嫌な予感が、地下アイドルの脳裏をよぎった。

 

「これはまさか…」

 

予感的中。

"毛根"の意思を無視し、蜘蛛脚は勝手に迎撃の構えを取る。

 

次の瞬間、

 

「うわ!うわ!うわ!うわわわー!」

 

髪の毛は高速で迎撃を行っていった。

だが、再び問題発生。

 

〈しまった、間接的な操作だと能力値(スペック)差で追いつけない!

これじゃ、迎撃が間に合わない!

当たる!

避けて!〉

 

え、あの速度を?

地下アイドルの脳裏をにあるのは、ただ疑問と困惑だけ。

だが、そんな彼女"たち"を誰も待ってはくれない。

全てを音の彼方に置き去りにして、再び攻撃が迫る!

 

今度こそ当た…

 

「どっせーい!」

 

る、寸前でまたなんとか急場しのぎ(リカバー)

自力で髪の毛を操ることで、再び化剄に成功する。

 

「そうか、これも触手だと思えば充分動かせるんだ…」

 

触手ダンスと疑似餌変身を得意とする『ラリスキャニア』ならではの応用であった。

再びの窮地からの脱出。

だが、その代償は大きかった。

深刻な損傷(ダメージ)が残ってしまったのだ。

 

「キュ、キューティクルが…

ボクの毛先が…」

 

当然のことだが、一般的な生物にとって髪は戦闘のための器官ではない。

酷使すれば反動で傷ついてしまうことは、避けられなかったのだ。

動揺する地下アイドル。

 

にも関わらず、サポート担当さんが送ってくるのは、シビアなメッセージばかり。

 

〈遺髪にならなくて良かったわね〉

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