幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
そしてダメージから立ち直る間もなく、文字通り間髪を入れず次なる相対が始まる。
対峙する両者の瞳が、十字に輝いた。
相互の未来予測が、高度なフェイントの掛け合いと苛烈な応酬を実現しているのだ。
地下アイドル側でそうしたやり合いを支えているのは、主にSNA333のサイバーカラテ道場システム。
だが、最終的にその戦術を決定しているのは、そのリーダーである。
多少の小国をも上回るとされた軍事力を率いていたその実績は、ここでも十全に発揮されているのだ。
ちなみに、ご覧のようにそんな戦術は一般地下アイドルである『ラリスキャニア』では全くついていけない領域であった。
しかし、何度も言うが相手はそんなことはおかまいなし。
そうこうしているうちに、何やら不可視の強大な気配がこちらへ放たれる!
「な、なんだアレ!
いや…どこかで?」
もちろん、戸惑(とまど)う彼女にはこちらも全く対応出来ない。
けれど、問題ない。
〈止まりなさい!〉
「な、なんか目から出たー!」
気づけば、凄まじい速さで装具(アクセ)が変形していた。
衣装に合わせて多少形が変わっていた勾玉が、更に大きく展開。
片眼鏡(モノクル)となってそれぞれの右目に装着されたのだ。
それは、義眼の原理を応用した、『邪視』の媒介。
簡易的な『氷鏡』であった。
そして、迎撃は、そこから放たれる。
唐突に、片眼鏡(モノクル)から巨大な竜の爪を思わせる幻影が出現。
一瞬だが、相手をひるませた。
竜爪眼の先打ちで、ラクルラールに一撃食らわせることに成功したのだ。
予想外に効果を発揮した会心の一撃。
しかし、助力者はそれに慢心せず、冷静に状況分析を行った。
〈どうやら、相手の右目の武装になにかトラブルでもあったみたい。
アルト関連となると、冷凍ビーム砲?
機能的トラブルなのか、それとも何かしらの精神的不調(トラウマ)か。
…なんとなく、相手の苦手意識が見えてきた気がするわね〉
「に、苦手というか…とりあえず、なんでまだボク"たち"がこの激戦で死んでないのか不思議なんですが…」
〈黙りなさい。
ほら、すぐ次が来るわよ!〉
「わわわわわー!」
「ひいい、なんかまたヤバいー!」
慌(あわ)てふためく『ラリスキャニア』 たちは、それでもなんとか仮想使い魔の群れや三頭犬の仮想きぐるみ、演出のオルガンローデもどきなどで、女教師の追撃を耐え忍ぶ。
ここで、それらをサポートした同僚の地下アイドル代表から、心強い一言。
〈誤謬(バグ)が多すぎて修正(デバッグ)に苦労したわ。
次からは、もっと呪術の再演にも気を配って欲しいわね〉
それに対し、パーティーグッズ用のオルガンローデおもちゃ巻物(スクロール)を投擲(はいき)しながら、演者(メインキャスト)から、それぞれ返答の一言。
「か、仮想使い魔なんて作るの初めてで…」
「ボク“たち”、呪術なんて、『学園』でしか習った記憶しかないのですが…それも、アイドル用なのか一般兵士用なのかよく分からない一式(レシピ)だけで…」
だが、弁護や抗議の声は届かない。
なぜなら…
〈ほら次!
分身ラクルラールの大群から九秒後、上五時の方向からブレイスヴァ拳!
対応しないと死ぬわよ!〉
「「ひぃぃぃー!」」
状況はこの通り、まだまだ予断を許さないからだ。
※
どれだけ時間が経ったのか、“戦況”は膠着(こうちゃく)状況にあった。
『ラリスキャニア』“たち”は、どちらも疲労困憊(ひろうこんぱい)
冷や汗が流れすぎて、せっかくの"六王仕様コスメ"が落ちてしまいそうだ。
だが、それでも…
「今の第五階層には、それを照らし出せる星(きぼう)が足りない!
その役割を果たせるのは、私と私の学園のアイドルだけだ!」
その言葉は、聞き逃せなかった。
『ラリスキャニア』“たち”は、最後の気力を振り絞り、元学園長に対する抗弁に、打って出る。
「星なら、もうあります!」
「それは、この学園の残した昼(やみ)を照らし出すサイリウムの輝き(かげ)!
そして、その承認を受ける全てのアイドルたちです!」
「「ボクが、ボクたちがアイドルという銀河そのものなのです!」」
その宣言と共に、“二人”とその周囲の配信窓が力強く瞬(またたき)き、多様に異なる万色の輝きを以(も)って応援の意志を示した。
それこそが、一見して明らかな、彼女"たち"の信念の実証であったのだ。
しかし、やはりそれぐらいでは、まだまだ女教師は怯(ひる)まない。
"陰"の力を借りるラリスキャニアに対抗するように、ラクルラールも、九つの闇を背負ってここに立ちはだかる。