幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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186話 天への飛翔⑧(その2の45~46の途中まで)

それは、完全に隙を突いた一撃だった。

素早く伸びたそれは、これまでと同じく"髪の毛"

もちろんそれに、鋏(ハサミ)で容易(たやす)く切られたり、枝毛や白髪(しらが)になるような弱々しさは、全く無い。

むしろそれは、豪雨の中の激流のよう。

人工着色料のような毒々しい青を誇るその流動は、音よりも速く音もなく、目指す対象へと突き刺さった…!

 

「危ない!」

 

とはいえ、その攻撃もやはり防御(ガード)されはした。

影のように背後に付き従っていた“陰”の『ラリスキャニア』が、前にいた“陽”の方を身を挺(てい)して庇(かば)ったのだ。

だがそれでも、

 

「勝った…!」

 

女教師には、必勝を確信するに足る理由があった。

そんな彼女は、いつの間にかサングラスを装着している。

それは、本来邪視防御のための装具(アクセ)の一つ。

けれど、緑の縦線が走るそれは、明らかに攻撃のための"視界の加工"を目的としていた。

その暗黒のまなざしに映るのは、元生徒の慌てふためく姿。

“一人”が倒れ、もう“一人”がそれを気遣(きづか)うそれは、まるで双子の姉妹のようだ。

 

それは、突然の衝撃と悲しみ。

しかも、それだけでは終わらない。

なぜなら…

 

「ぐっ…これは…!」

 

相方を心配していた“陽”の地下アイドルに、突然襲いかかる者が現れたからだ。

なんとそれは、

 

「もう一人の『ボク』!

どうして…!」

 

さっき攻撃を受けたばかりの、もう“一人”の『ラリスキャニア』だった。

 

ラクルラールの暗黒の視界には、姉妹のような相手に喉(のど)を絞(し)め上げられ殺されそうになっている地獄絵図が、はっきりと映し出されていた。

言うまでもなく、影の『ラリスキャニア』を操ってそれを作り出したのは彼女である。

そして当然、この女教師の攻撃がそれだけで終わるわけもない。

 

彼女は、自ら作り出した"地獄"の前に進み出て、朗々とこう謳(うた)ったのだ。

 

「さあ、お前が生き残るには、もう片方を倒すしかない!」

 

そして更にその右手に、

 

「さもなければ、この槍で両方とも貫いてくれよう!

廃棄処分にされたくなければ、さっさと"偽物"を壊すのだ!」

 

と、髪を束ねた青く長い"髪の槍"を作り出し、ラクルラールは、今にも突き刺さんばかりに身構えていた。

 

それに対し、

 

〈待ってなさい!

今、助け…!〉

同僚アイドルの代表が、干渉しようとするも…

 

〈そんな!

打つ手がことごとく上回られる!〉

 

それも尽(ことごと)く、弾かれてしまう。

 

「ぐ…」

 

もちろん、『陽』の『ラリスキャニア』もあがきはしたが…

 

「今回は本気だ!お前に抵抗の術(すべ)は無い!」

 

厳重に拘束されてしまい、全く抜け出せないでいる。

操った『陰』を通じて女教師の呪力が注ぎ込まれ、束縛をより強固にしているのだ。

 

そこへラクルラールは更に煽(あお)りを入れてきた。

 

「さあ選べ!

どちらが『本物』になるのかをな!

『偽物』を殺し、最後の“一人”になった方こそ真の『本物』!

本当の『ラリスキャニア』だ!

さあ、第五階層にあるべき価値を高らかに称揚しろ!

支配者のあるべき理想を!

自己同一性(アイデンティティ)とは、固定された単一のものであるべきなのだと!

狂王子のように“純化”を目指せ!

粗雑な雑音(ノイズ)などは、さっさと遮断するのだ!」

 

それを聞かされた『陽』は、うめく。

 

「そんな…こと…出来る…わけ…」

 

「ならばお前が滅びるだけだ。

私としては、それでも一向に構わんがな!」

 

嘲笑する女教師。

情勢は完全に決着したかに思われた。

 

だが、そこで変事が起きる。

それは、『陰』の『ラリスキャニア』から発生した。

なんと彼女は、いきなり触手の向きを変え、ラクルラールに絡みついたのだ!

 

そして曰く、

 

「ボクごとやるんだ!」

 

同時に、鏡が割れるような音が鳴り響き、ぼろぼろと『ラリスキャニア』の姿が崩れ出す。

それは、たった今、女教師に全身でしがみついたばかりの『陰』…だけではなかった。

その"崩壊"の範囲には、なぜか今まで襲われていたはずの『陽』までも含まれている。

"二人"に対して効果を発揮していた幻影の呪符が、たった今剥(は)がれたのだ。

 

いや、それはもはや呪符で行使出来る練度(レベル)を超えた呪術だった。

推察するなら、おそらく配信窓という『鏡』を、配信(ストリーム)という流れにおいた入れ替わりの術。

どこかで見たような『神話』の引喩。

神との闘争を再現した、強敵を翻弄(ほんろう)可能な再演の儀式。

その本質は、"二つ"の対象の『入れ替え』

すなわち、

 

「これで、先生の操り呪術は今度こそ完全に無効化されました!

その“青い髪の毛”は、まず間違いなく対象との肉体的同一性を仮構することで成立するもの…ならば、その対象が狙った相手と“別人”なら、そもそもの前提が覆(くつがえ)されて術も失敗してしまうはず!

それが、当然の道理(ロジック)です!」

「そんな、そんな馬鹿な!

同じ個人の分体なのに“別人”としての個我を持たせるだと!

それら自滅の道だ!」

 

なぜか妙(みょう)なポイントで動揺するラクルラール。

 

 

 

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