幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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187話 天への飛翔⑨(その2の46~47の途中まで)

それに対し、『陰』(カゲ)を騙(かた)っていた『陽』…実体を持つ"本体"であるはずの地下アイドルは、堂々と答えた。

 

「最後に、アイドル『ラリスキャニア』が残るなら、それでも良いです。

と言うか、構わないので何でも言って下さい。

さあ言い放題ですよ、お好きにどうぞ!」

 

それは、矜持と呼ぶにはあまりにおぞましい覚悟(スタンス)

悪の巣窟として知られる第五階層の住人、その証のような覚悟だった。

 

彼女は、続けて宣言する。

 

「シナモリアキラは、意識の連続性を否定して第五階層の真の住人(メインキャスト)となった…なら“ボクら”は、人格(キャラクター)の連続性を否定して、第五階層の…いいえ、この世界(ぜオーティア)の主役(スター)を目指しましょう。

まあ、『ボク』は、紀人でもなんでもないですが…!」

 

その言葉と共に、『陽』は、拘束をさらにキツくした。

その着用する『陸』のドレスは緑の触手。

だから当然、植物の性質を持っていた。

それは、『ラリスキャニア』"たち"が戦いながら上昇したことで、近づいた夢世界の太陽光に力を得る。

力を得て成長し、女教師をますます固く縛っていく。

たまらず、ラクルラールはあがくも…その繁茂(はんも)からは、到底抜け出せない。

 

「馬鹿な!

実体がある方が『本物』だ!

『本物』でなければならないのだ!」

「そんな訳分からない理屈には、付いて行けません!」

 

相互の不理解、断絶が空間に軋みを上げさせる。

そして、拘束中の地下アイドルは、相方に告げた。

 

「さあ、『ボク』ごと先生を葬るんだ!

今ならやれる!

『キュトスの姉妹』は不死身だけれど、追放されたり封印された事例ならいくらでもあるんだから!」

 

「けど、そんなことしたら"キミ"は、その個我や魂は…!」

「封印に巻き込まれ、下手したら永久に失われてしまうかもしれない。

けど、他に方法はない!

ラクルラール先生はあまりに強すぎる!

『ボク』"たち"が彼女に勝つには、もうこれしか無いんだ!

勝ってくれ!

そして『ボク』のぶんまで頑張(がんば)って、『ラリスキャニア』を真の星(スター)に!」

 

 

つまりは、自身を用いた蜥蜴(トカゲ)の尻尾切り作戦である。

『陽』は、我が身を犠牲にして師の打倒に乗り出したのだ。

全ては、地下アイドル・『ラリスキャニア』を残すため。

それは、己の『本物』としての尊厳と価値を投げ捨てた、決死の作戦であった。

 

けれど…その計画には思わぬ誤算があった。

『陰』が、血を吐くように叫んだのだ。

 

「そんなこと、出来るわけがないだろ!?」

「えっ!?」

 

それは、悲しいまでのすれ違いであった。

 

もちろん、それを見逃すラクルラールではない。

彼女は、一気に拘束を振りほどき…

 

「終演だ!」

 

女教師は、止めの一撃を放つ。

一息に、そして全力で振るわれる、髪槍の突き!

 

意志の不一致で混乱していた『ラリスキャニア』"たち"に、それを避けられるはずもない。

 

“二人”は、串焼きのように諸共(もろとも)に貫かれてしまう!

 

「勝ったぞ!」

 

そして、ラクルラールは、勝利の勝鬨(かちどき)を挙(あ)げたのだ。

 

一瞬の静寂。

 

だが、それはすぐに破られる。

ここまで盛り上がった観客が、そして因縁の相手の決着(はいぼく)を待ち望む住民(ひとびと)が、こんな終わり方を認めるわけがない。

 

「アンコール!アンコール!」

 

何より、ここはあの六王騒乱を潜(くぐ)り抜けた第五階層。

再生と転生を経て、歴史の中から甦(よみがえ)りを果たした偉人たちの戦場(あそびば)跡だ。

つまりは、

 

「ここでは、転生は常識(あたりまえ)だ。

だから誰もが、それを望む」

 

観衆の叫びを文字通り背景音楽(BGM)と成し、女教師は場の文脈を解説する。

 

それと同時に、アンコールの求めに応(こた)え、いつの間にか走る影が現れていた。

最初はただの画像の散(ち)らつき、ノイズに過ぎなかったはずのソレは、配信窓からその隣の配信窓へと渡るうちに…段々とその形をはっきりとさせ、色濃く確かな存在へと具象化されていく。

いくつもの配信画面を通し、まるでパラパラ漫画のように受け渡されていくその映像は…どうやら一人の少女のようであった。

その姿は、無彩色。

漆黒の闇が形を成す、それは影絵。

黒(モノクロ)の少女は、ただひたすらに舞台へ駆け上がらんとしている。

 

付言(ふげん)するなら、リレーのバトンのように、ファン同士の間を受け渡されていくその幻像(イメージ)の在(あ)り方は、アイドルやライブの文脈において行われる、あるファンサービスに酷似(こくじ)していた。

アイドルや歌手は、ときに握手や写真会での密着撮影などでその実在性やファンとの距離の近さなどを喧伝(アピール)するもの。

しかし、通常のそれらとは、比較にならない近接と委任を示す行為(アクション)もまた、アイドルの世界には存在する。

それこそが、衆上運搬(クラウド・サーフ)

客席またはフロアに向けて、その身を投身(ダイブ)した演者が、観客たちによって彼女たちの頭上を運搬される表現(パフォーマンス)である。

 

言うならば、人間大玉転がし。

 

 

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