幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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189話 天への飛翔⑪(その2の48の途中まで)

それは意識の中、夢の狭間で、独り言のような、意識のさざめきが織りなす幻想(バーチャル)の対話(チャット)

 

そう、『ラリスキャニア』は、首を絞められ死に瀕(ひん)する意識を利用して、精神交感(トランス)状態に入っていた。

これは高位の霊媒のみに可能な特技なのだが…今の地下アイドルには、そんなことは関係ない。

現状の彼女はただ、ひたすら繰り返される死と敗北のイメージに苦しめられていた。

 

ただそれでも、何も打つ手が無かったと言うわけでもない。

確かにラクルラールは、幻想を介して無数の分身の首を絞めてくる恐るべき呪力を誇る。

だが同時に、『ラリスキャニア』もそれを受け流し、力の分散を行って対話を維持する程度の抵抗(くふう)ぐらいは、当然のように行っていたのだ。

そうでもなければ、流石の彼女も、とっくに息絶えていたことであろう。

実は他にも、密(ひそ)かに配信を通じて首絞め好きアイドルや絞首刑シナモリアキラアイドルなどの他の強力者に要請し、いくらか損害(ダメージ)を外部に分散させてもいるのだが…やはり、目前の超高位呪術師(ラクルラール)に見つからない範囲でそれを行うのは難しい。

それでも『ラリスキャニア』の心身には、着実に損傷(ダメージ)が蓄積しつつあった。

だから、この思考時間(モラトリアム)も、そう長くは持たないだろう。

 

いくら地下アイドルが、実は学園内での“内職”の達人であったとしても、教師の目を盗んで出来ることには限界がある。

ましてやラクルラールは、肉体系『杖』の達人、いやむしろ“魔人”とでも呼ぶべき練達者だ。

現在のその有り合わせ(ブリコラージュ)のボディーには大した感覚器(センサー)の類(たぐ)いこそ見当たらないが…それでも彼女であれば、ちょっとした筋肉の緊張や肉体付近の呪力流の乱れから、こちらの動きや意図を読み切ってしまわないとも限らない。

そんな女教師を欺(あざむ)き続けるのは、まさに至難の業である。

 

今回『ラリスキャニア』が採(と)った偽装(ミスディレクション)は、女教師の価値観を利用しその盲点を突く地下アイドルの“自信策”

すなわち“相手なら絶対にやらないことをあえてやる”と言う演技。

対象の思考が合理と効率、そして高い自尊心(こだわり)に雁字搦(がんじがら)めになっているほど効果的な策戦である。

これは、かつて一度あの機械女王を見事に騙(だま)し通した演技戦術(プラン)の流用ではあるが…しかし果たして、弟子に通じたからと言ってその師にも通じるものだろうか?

 

まあ今回は少なくとも、安心材料はある。

 

今のラクルラールの傍(かたわ)らには、機械女王の融通無限(フリーダム)なその配下(シナモリアキラ)に相当するような、余裕ある参謀(アドバイザー)は存在しないのだ。

だから、補助役(アース)を持たない対象の思考は凝(こ)り固まり、異なる視点から状況を再判断することは困難になっているはず。

効果を見込める隙(セキュリティホール)も、十分に存在するとは思われるのだが…

 

とは言え、これまでと違って今回の騙し合いはまさに命懸(いのちが)け。

お局さん(うずまきばねくるみ)に後ろから消しゴムをぶつけられている同級生(がらくてんこずえ)を念写盗撮するような内職(バイト)とは、訳が違う。

だから、時間節約のため、話は端的なまとめから始まった。

 

「“未来が(=)過去”なのが、ラクルラールの動きの秘密なんだ。

彼女はおそらく、無数の予測演算…相手と自分の“応手”

つまり互いの戦闘の応酬を完全に読み切ったうえで、この戦いに臨(のぞ)んでいる。

時折不可解な動きをするのも、その予測からくる“予測誤差(ズレ)”なんだと思う。

アレは、完全にこちらの未来像に対策した結果、その対策自体が起こす反動(カオス)や、そこから新たに分岐した“実際に実現した未来(ボク)の振る舞い(アクション)”に対し、逆に効果的な対応が取れなくなった結果なんだよ。

アクションゲームや格闘ゲームで一度失敗(ワンミス)した箇所に対し、過剰反応してしまって逆に別の技や罠に撃墜されてしまうような…そんな話だね」

 

そのように、『陽』の『ラリスキャニア』は推測をまとめた。

この行為は一種の脳内対話ではあるが、思考の整理には適している。

人格すなわち思考パターンの分割は、狂気に陥らないための予防策、混沌と化した環境(エントロピー)に対しての抵抗(せいりせいとん)を意味しているのだ。

『夜の民』の中には、これを応用して機械以上の高速思考と演算を可能にする者もいる、と言うほどだ。

 

しかも今回の情報整理には、予言王オルヴァの予見眼による予測(アナライズ)も含まれている。

確かに、先程の情景からも明らかなように、彼に見えるのは破滅の未来、つまり失敗の仮想(シミュレート)に限定される。

だが、それでも未来は未来。

言い換えれば、四次元的に幅のある情報流(データストリーム)である。

数多ある破滅の幻視にしても、それらを見事まとめ上げることが出来れば…こうして、彼我に対して高精度な分析を行うことも出来るのだ。

そして元より、『ラリスキャニア』は高度な擬似餌再演を可能とするほどの分析力を持つ地下アイドル。

このような解析は、お手のものであった。

 

 

 

 

 

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